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発声障害

私は元々人前で話すことが苦手で、声が震えたり手が震えたり暑くもないのに急に汗が出たりするタイプの人でした。過度な「緊張しい」といったところでしょうか。
たぶん、何十人かにひとりはそういう人がいるんじゃないでしょうか。

中学生の時はくすくす笑われて、高校生の時は 泣いてるの? と心配されて、大学生のときは 何も言われなくなったけど、キモイやつとか思われてるんだろうなと被害妄想してしまって、誰の目も顔も見ることが出来ませんでした。
他学科の女の子が「あの子、発表する時泣いてるような声出すよね〜 なんなのあれ?」と笑いながら言っているのを聞いて、私に言われているのではないのに苦しくなったりしました。

私は大学1年の秋、アルバイトで接客業を始めました。人前で話すことは苦手だけれど、人と話すことは好きでした。

なぜ苦手な接客業を選んだかというと、大学から通いやすい距離であること、拘束時間が短いこと、そしていちばん大きな理由が友達がそこでアルバイトしていたからです。

アルバイトを始めて3ヶ月程たったとき、今まで普通に読めていた店内放送が吃るようになったり、いらっしゃいませの 「い」を言おうとすると喉が閉まったり、324円です の「さ」が声にならなかったりするようになりました。
お客さまにも、大丈夫? とか 風邪? と聞かれ、悲しさと喉の詰まりで返事もできず、苦笑いを返していました。

どうしたら声がスムーズに出るのか、自分なりに色々試しました。

アルバイトに行く前に大きく口を開ける練習をしたり、家でも「いらっしゃいませ」を言う練習をして、その時でさえ「い」は出なかったり。

カバンの中には常にのど飴を入れておくようになりました。
ミンティア ドライハードを2粒食べると、少しだけ声が出しやすい気がしてミンティアがないと不安にかられるようになりました。声が出しやすいと言っても、一声目だけですけど…


徐々に、アルバイトの時だけじゃなく、友達と一緒にいる時も、何かを話そうとするとぎゅっと喉が閉まって、苦しそうな声しか出なくて、喉もしんどくて、言葉を返したいのに笑ってるだけになったり、伝えたいことも諦めてしまったりしてどんどん人と一緒にいることが苦しくなりました。

もうしんどい、と思って病院に行ったのが大学3年生の頃です。

病気かどうかもわからず、誰に相談することも出来ず、「声がおかしい人」として2年間生きました。

なぜもっと早く病院に行かなかったのか。

それは、親に「声が出ない、喉が詰まる」ことをどうしても伝えることが出来なかったからです。

私の兄も(今現在は落ち着いていますが)精神的に不安定になることがあり精神科にお世話になっていました。そんな中、私のことを伝えた時の親の気持ちを考えたらどうしても言えませんでした。
そして、言って理解してもらえるかどうかも不安でした。


最初は地元の小さな内科に行き、恐らく精神の病気だろうということで大きい病院を紹介してもらいました。

精神科の先生は、耳が遠いのかよく聞き返されました。私は同じことを何度も言わされました。
あの時あの場所で、私はスムーズに話せていました。とても暖かく、包み込んでくれるような場所でした。


「過緊張性発声障害」と診断されました。

先生から、あなたはストレスを溜めやすい人みたいです、と言われてなんだかほっとしました。
親に病名は言っていません。聞いてもきません。
親はスーパーマンなので、もしかしたらどこかで聞いていたのかもしれませんが。

病名がついても、頓服をもらっても、普段の生活には何ら変化はありません。
声の出し方がわからなくて、友達と好きなことについて語ることも出来なくて、愚痴も言えなくて、好きだった歌も歌えなくなって、カラオケも嫌いになって、愛想の悪い人だと思われて、普通に、普通の声を出してる人を見てすごいなあと思う日々でした。

アルバイトは、大学を卒業するまで続けました。
同じアルバイトをしている友達に、声や喉のことを相談すると、彼女は「そうなんだ」と言ってくれました。
すんなりと事実を受け止めてくれた彼女に救われました。一緒に働けてよかった、辞めなくてよかったと思いました。

病名を店長に伝え、挨拶や店内放送などに関して配慮してもらえたことも4年間続けることが出来た要因です。


そして、就活の面接では声が出しにくいことについて言うかどうか散々迷いましたが、言わずに苦しむより言って苦しんだ方がいいと思い、まず伝えました。

就職したいと思う会社がなかったので、1社目に受けた企業(バイトが同じだった彼女が受けると知って、じゃあ私もと受けた企業)に就職する事にしました。(ちなみに、彼女も内定を貰いましたが結局別の場所へ…😢)

今の会社は、色々なことをマルチにやっていて、色々な業種が合わさったような場所です。

1年間、色々な部署を点々としてきましたが、現在はサービスの部署にいます。

「いらっしゃいませ」の「い」が出なくて苦しい毎日です。
バイトではなく社員なので、嫌でもやらなければならない事、NOと言えないことがたくさんあります。
でも、どうしても出来ないことはどうしたら良いのでしょうか。
私も綺麗な声で接客がしたい、お客様と話したいのに、出るのは潰れたような途切れ途切れの声だけです。部署の目標やリーダーの理想、それらに反してしまう自分が悔しく情けないです。

辞めたいと常に思っています。
それでも、4月になったら本配属で接客以外の部署に行けるかもしれません。

もし辞めたとしても、自分の喉とは別れることができません。
手術という手もありますが、完全に治る訳では無いそうなのでどうしても踏ん切りがつきません。

部署発表がいつなのかよく分かりませんが、
サービスに配属されたら恐らく私は退職するでしょう。





明日も私は、お店のドアが開いたと同時に絞まる、思い通りにならない喉と闘うのです。




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発声障害について私自身、皆様にお伝えできるような確実な知識がありません。発声障害にも色々ありますし。
某YouTuberさんが出している発声障害の動画がわかりやすいかもしれません。


知らないことは悪ではありません。
ですが、そういう病気がある、そういう人がいると知っているだけで変わることがあります。


最後まで読んで下さりありがとうございました。