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複雑だけど諦めないで!めちゃ面白い進撃の巨人王政編の解説

「進撃の巨人ファイナルシーズン始まったよ!」

「あー13巻あたりで訳わかんなくなってから見てないや。今どんな感じ?」

勿体無い。大いに勿体無い。勿体無さ過ぎる。


進撃の巨人王政編は原作52話〜70話までと、単行本で換算すれば4巻分に相当する長編となっております。巨人との戦いからは逸れ、人間ドラマや内戦がメインとなってくるので戦闘シーンこそあるものの今までのアクションシーンと比較してしまうとどうしても迫力が半減し、漫画的表現としては見劣りしてしまいます。

しかし誰が何と言おうが王政編は糞面白い。読み応えしかない。
何を隠そう、このエピソードを経て「進撃の巨人」という作品の核がようやく露わになり、物語の質はぐっと向上し、作品に奥行きが出てくるのです。
要約すると、「ここ抑えるとこの先くっっっっそ面白くなるぞ」ということです。

そこで今回は悔しくも脱落してしてしまった読者の方に向けて王政編の解説をしたいと思います。


【そもそも王政編ってどんな話?】


簡単に言えば調査兵団 VS 壁内最高権力者です。この両勢力が死に物狂いで争います。何故巨人という存在を差し置いて人間同士で戦うことになってしまったのか、それには深い理由があります。
元々調査兵団という組織は王政の指し示す【壁外不干渉】の方針とは真逆の理念を掲げた革新派であり、保守派の貴族達からは煙たがられる存在でした。
それでも尚、支持する民衆がいたからこそこれまで辛うじて活動出来ていました。王政からすれば「勝手に外に出て勝手に死んでくれればありがたい」と言った程度の存在だったのでそこまで脅威には感じていなかったのも存続の理由でもあります。
しかしエレンの【巨人を操る能力】発現から状況は一変します。また、ヒストリア・レイスという存在の露出によって王政が放置し切れない段階にまで調査兵団が真実に近付いてしまったのです。ヒストリアの存在を調査兵団に公言してしまったウォール教司祭、ニックの死を皮切りに物語は始まります。



【何で真実に近付いたらいけないの?】


王政府の方針は第1話でも少し触れられますがそもそもこの壁の世界の歴史には不自然な点が多く、作中でも度々疑問視されてきました。
例えば、107年前に壁の中へ逃げてくる以前の文献が全く無いこと。持ち込めなかったとしてそれを昔話として語り継ぐ人物が1人として存在しないこと。つまり、107年より前の歴史を誰も知らないということです。


幼少期にアルミンがエレンに見せた【外の世界の本】は所持しているだけで違法となる禁書として扱われていました。
これらのことを踏まえれば偶然誰も後世に伝えなかったのでは無く王政府がとことん徹底的に壁外の世界の話をタブー化しているということが分かります。

そして、かつてその核心に触れてしまったエルヴィンの父は不自然な事故死を遂げたと語られます。
また、アニメ第1期の25話では壁の下を掘り進めた坑夫とその話を耳にした友人が唐突に行方不明になるというエピソードがアイキャッチ内で公開されました

つまり、王政府は民衆に何かを隠していて、真実に近付いたものは徹底的に排除しているのです。

【王政は何が目的なの?】

王政府の目的は一貫して秘密の保持ですが、何故か巨人化能力を有しているエレンの引渡しを再三に要求してきます。そもそもトロスト区の穴を塞ぎ、人類史上初の快挙を成し遂げたはずの英雄を情状酌量の余地もなく処分するという言い分がとても頭悪い。


いくら未知数な危険分子であったとしても作戦成功実績のある人類の希望を蔑ろにするには理由があまりにも弱すぎます。
つまり、王政府がエレンの引渡しを要求する理由は殺処分目的ではなく、他の何かであったことが分かります。
そしてエレンが巨人を操る【叫び】の能力を発動させたことが王政に伝わってからはそれがより一層顕著となり、今まで使っていたパンチの弱い建前もあっさりと捨て去り強引にエレンを拉致しようとしてきます。先のニック司祭の死に関しても王政側がエレンの居場所を突き止めるために拷問を施した痕がありました。確定黒です。
また、家系が壁の秘密に関与していると判明したヒストリアも誘拐の対象となりました。

【ピックアップ登場人物】

調査兵団、王政の他に活躍する組織がたくさん登場します。

〜中央憲兵団〜


ウォールシーナの中心部である王都にて職務を行う王直属の組織です。一般的な憲兵団とは指揮系統が異なり憲兵団師団長であるナイルですら全貌を把握しておりません。また、中央憲兵を取り締まる存在がいないことからどんなことをしてもそれが明るみになることは無い、王政の闇でもあります。ニック司祭を殺害したのは勿論、基本的な揉み消しはこの組織が行っています。恐らく勘のいい餓鬼が嫌いな感じ

〜リーブス商会(ディモ・リーブス)〜

原作2巻にてトロスト区の避難を遅らせたあのお騒がせおじさんです。初登場時では悪いイメージしか残りませんでしたが本来はトロスト区を拠点に商いに勤しむ見識力と判断力に優れた腕利きの商人です。中央憲兵からの命令でエレンとヒストリアの拉致を試みますが失敗に終わり、逆にリヴァイからの交渉に応じることで調査兵団を全面支援する立場に変わります。(ここの交渉シーンがまじでめちゃくちゃ粋でお気に入りです。会長もリヴァイも言葉遊びが本当にお上手)
しかし、調査兵団へ寝返ったことを中央憲兵に見抜かれ、早々に命を落としてしまいました。

〜ケニー・アッカーマン〜

調査兵団アンチとして名高い中央憲兵対人制圧部隊の隊長であり、リヴァイに地下街での生き方を教えた恩師でもあります。かつては「切り裂きケニー」と呼ばれ、100人もの憲兵を惨殺した都の大量殺人鬼でしたが【大いなる夢】のために、自身も憲兵団となりました。リーブス商会の裏切りを即刻に見抜く勘の鋭さと相手の先を読む狡猾さ、そしてその並外れた身体能力によってリヴァイを追い詰めました。

【物語はどうやって進んでいくの?】

このエピソードのややこしい部分は視点の多さにあります。序盤では主に

・エルヴィン視点
・ハンジ視点
・リヴァイ視点

と調査兵団幹部である3人の活躍にスポットが当てられています。

それぞれが違う舞台で自分の使命に奮起する様は正直めちゃくちゃカッコイイです。流石誰よりも死線を生き抜いて来ただけあり経験値に基づいての立ち回りがプロすぎる。
ここではストーリーの概要と共にそれぞれの働きについて視点事に解説したいと思います。

〜エルヴィン視点〜
調査兵団の団長であるエルヴィンは先のエレン奪還作戦により重症を負い、部屋で安静にしていましたが王政の動きにいち早く行動を見せます。そもそも、彼は父が【事故死】するに至った王政府に対しての仮説の真偽を訓練兵時代より追い求めていましたが、エレンが見せた力を王政が欲する姿勢を見せたことによりそれが確信に変わりつつありました。そして無謀にも王政府を打倒する算段を思いつきますが駐屯兵団の司令官であるドット・ピクシスはその算段に難色を示します。


エルヴィンは王政が人類よりも個々の利益を優先していることを見抜き、エレンの受け渡しを拒否します。さらにハンジが掴んだ情報によって現在玉座に座っているフリッツ王が仮初の王であることを突き止め、そして本物の王家がヒストリアの家系である所まで辿り着きます。エルヴィンの算段とはヒストリアを女王に即位させることで現王政を崩壊させること、即ちクーデターでした。

しかし、作戦を進めていた最中、中央憲兵の捏造によりエルヴィンはディモ・リーブス組織殺人の容疑者に仕立てあげられることになります。残りの指揮をハンジに任せたエルヴィンは素直に出頭に応じ、身柄を拘束されます。その後、酷い暴行の末に王政の都合に合わせた裁判によって絞首刑が確定してしまいますがその瞬間に届いた【ウォールローゼが巨人に突破されたという誤報】によって王政側が人類を切り捨てようとする発言を引き出すことに成功し無事王政失墜を果たしました。

全てはエルヴィンとピクシスの作戦であり、万が一王政側が個々の利益よりも人類の存亡を優先するような行動を取るようなことがあれば二人は死を持って償うつもりであったと語ります。それ程までに危険な賭けであり、しかしそれに見合った成果を得るに至りました。

〜ハンジ視点〜
調査兵団第四分隊長であるハンジはウォールローゼ内に出現した巨人の正体の調査に追われ、同時にウォールマリア奪還の最重要項目であるエレンの硬質化実験も進めようと取り組みますがニックの死を知りすぐに現場に駆け付けます。関係者以外は立ち入れないと強引に門前払いされてしまいますが持ち前の状況判断力と洞察力を駆使して僅かなヒントのみで即座に中央憲兵が犯人であることを突き止めます。

リーブス商会の協力の元、ニック司祭を殺害した張本人であるサネスとラルフを捕えることに成功し、報復も兼ねて初めての拷問に取り組むも確固たる王への忠誠を見せるサネスによって不慣れな拷問は長期に渡って行われることとなりました。

最終的にはサネスの忠誠心を利用したゴミクズのような作戦により真の王がレイス家であること、そしてその現当主のロッド・レイスが中央憲兵含む全ての政権を握っていることを聞き出すことに成功し、その情報はすぐさまエルヴィンに伝えられることになります。
また、エレンが思い出した【ユミルとベルトルトの会話】の内容から【巨人は巨人化能力を保有している人間を捕食することでその能力を引き継ぎ、元の人間に戻ることができる】という仮説を立て、レイス家がエレンを欲する真の目的を捕食による能力奪取だと推測します。

その後、リーブス殺人容疑を掛けられた調査兵団の無罪を証明するために唯一の現場目撃者であるディモ・リーブスの息子【フレーゲル・リーブス】を鼓舞(恫喝)し、中央憲兵を出し抜くための作戦を企てます。

作戦は多少ワイルドが過ぎたも上手く遂行され、勝ち誇りながら冥土の土産と称し真実を語る中央憲兵の話を【周りに隠れていたストヘス区の住民】に聴かせることに成功し、ようやく事件の真相が世間に明るみになります。
ハンジの提案によって証人の1人となったベルク新聞社は保身から王政側が不利になる記事の執筆を極度に怖がり一度は号外を見送る姿勢を見せるも、最終的にはハンジの説得に決意を固め、王政に背いた記事を民衆に公開しました。この世論を傾けるに至る大勝利はエルヴィンの勝利とほぼ同時刻の出来事でした。

〜リヴァイ視点〜
調査兵団兵士長であるリヴァイは硬質化実験を円滑に進めるためにエレンの使命感を駆り立てることを狙いに104期メンバーを新リヴァイ班に任命します。
そしてニックの死を理由に実験の延期を提案するハンジを諭したり、実験の結果が芳しくないエレンを壊滅的な言葉選びで励ますなど優しい一面も垣間見せます。
そしてエレンとヒストリアを拉致しに来たリーブス商会を返り討ちにした後、自らディモ・リーブスに交渉を持ちかけ友好的な関係を築き上げることに成功します。

また、ハンジの拷問を補助してレイス家が真の王家であるという情報を手に入れた後はエルヴィンの作戦を成功させるためにヒストリアの胸ぐらを鷲掴みながら女王に即位して欲しい旨を伝えます。自分には力不足だと作戦を拒否していたヒストリアもリヴァイの激励(恫喝)によって酸素不足になりながら女王に即位することを決意します。

リヴァイとリーブスの作戦では敢えてエレンとヒストリアを中央憲兵に引き渡し、その後を尾けることによってロッド・レイスの居場所を突き止める手筈でしたが残念ながら作戦はバレてしまいディモ・リーブスは殺害されてしまいます。そしてその殺害を調査兵団がやったものと仕立てあげられ、挙句エレンとヒストリアはそのまま攫われてしまう結果となりました。

なんとか先回りに成功し、エレンとヒストリアを乗せた馬車を見失わずに済んだリヴァイは尾行を続けながらもこちらの作戦を予測した中央憲兵の思考が自分と似ていることに違和感を覚え、すぐに原因を理解します。
エレンとヒストリアを拉致した中央憲兵は秘密裏に開発していた新型立体機動装置を使いこなす【対人制圧部隊】であり、その長を務めていたのが幼き日のリヴァイに強者としての処世術を教え込んだ【ケニー・アッカーマン】だったのです。

しかし調査兵団を殺すためだけに編成されたと言っても過言ではない組織の、完全なる奇襲を受けた上で、リヴァイは敵勢力を12人も殺害し逃げ切ることに成功します。この不意打ちにより部下を3人失い、エレンとヒストリアを見失うなど調査兵団は大きな痛手を負いますが完全にリヴァイを仕留める気でいた対人制圧部隊からしてもリヴァイの生還と隊員の損害規模は大きな誤算となりました。
また、初めて人を殺めてしまったアルミンを労い、これからは人間と殺し合いをしなくてはいけないという事実に辟易とする104期達には発破を掛けたりと保母さんとしての力も顕示させていきます。

その後リーブス殺害容疑で調査兵団一同が壁内指名手配にされた際は、偶然通りかかった憲兵団の新兵であるマルロとヒッチの協力要請を川藤の進言を踏まえた上で受け入れ、結果的に中央憲兵の根城の発見と制圧に成功しました。
直前にハンジが調査兵団の冤罪を証明していたためこのタイミングで指名手配が解除されることを知ります。

〜まとめ〜

エルヴィンは【王政府の失墜と兵団組織の意識統括】に成功し、ハンジは【調査兵団の名誉回復と民衆への扇動】に成功し、リヴァイは【中央憲兵拠点の発見と制圧】に成功しました。

これは冒頭で説明した調査兵団VS王政府の構図から考えるに大勝利と言っても良い功績です。兵団組織に拘束された仮初の王政府は機能を完全に失い、これまで偽の王を立て人類の発展を妨害していたことすら民衆に晒され、矛を担い影で民を統治してきた中央憲兵も制圧されてしまいました。3-0でボロ勝ちです。

しかし王政府編、ここからが本番です。正直このまとめを見るよりも本編を見た方が早い気がしてきました。めちゃくちゃ端折ったのに文字数えげつない。すごいごめん。ここからは王政編の決定的なネタバレになりますので閲覧の際はご注意ください。

【ロッド・レイスの目的は?】

そもそも中央憲兵にエレンとヒストリアの拉致を命じていたのは壁の真の王家、ロッド・レイスでした。彼が何故エレンの能力を欲しがっていたのか、それは【もともとその能力がレイス家のものだったからです】
遡ること107年前、巨人から人類を守るために作られたとされる強大な壁は145代フリッツ王(初代レイス王)が能力を駆使して築き上げたものでした。方法は簡単、巨人に硬質化で壁になあれと念じるだけです。
そう、この能力は巨人を意のままに操り、巨人を支配する絶対的な力だったのです。名を【始祖の巨人】と言います。
巨人を支配するだけではありません。この力さえあれば【民衆の記憶すらも改竄できるのです】
例えば「107年より前の歴史を完全に忘却する」とか

まさに、エルヴィンの父が立てていた仮説こそがこのことであり、エルヴィンの読みが当たっていたことが分かります。そりゃパッパも殺されるわ。

レイス家は先代を捕食することでこの神にも等しい能力を代々受け継いできたのです。
しかし遡ること845年。ウォールマリアが突破された悲劇の日にその能力はある者に奪われてしまいます

名は【グリシャ・イェーガー】エレンのお父さんです。
グリシャは当時の継承者【フリーダ・レイス】から始祖の巨人の能力を奪い、そしてあろうことかロッドを除くレイス家の血筋を皆殺しにして去って行ったのです。

そしてその能力を息子であるエレンに託し、理由を語ることなくこの世を去りました。
能力の託し方とは即ち捕食です。
第1話からこれまで行方不明として扱われていたグリシャは既に亡くなっていたことがここで判明したのです。そしてエレンが初期から巨人化能力を使えた理由の答えにもなりました。

つまり、ロッド・レイスはグリシャに奪われた能力を継承したエレンから、能力を奪還しようとしてたわけです。王家の血を引くヒストリアを新しい器として。

【奪還してどうするの?】

ロッド・レイスの目的はただ、【祈りを捧げること】それのみです。
そもそもこの【始祖の巨人】の能力さえあれば人類の仇敵である巨人をこの世から絶滅させることすら可能です。しかし107年もの間、それを実行した継承者はいませんでした。何故でしょう。
答えは、【初代レイス王が巨人に支配される世界を望んだからです】これを【不戦の契り】と言います。
その理由が王政編で明らかになることはありませんでした。ただ、この初代レイス王の思想までもを代々受け継いでしまうがためにまるで取り憑かれたかのように皆真実に蓋をしてしまうのです。

かつて人類を解放しようと継承を名乗り出たロッドの弟【ウーリ】は【祈っていてくれ】という言葉を最後に始祖の思想に呑まれてしまいました。娘のフリーダも同じです。残されたロッドはその呪縛を【神の意志】と例え、祈るしかありませんでした。寧ろ、それが神の定めた道ならば心中する覚悟すらありました。
一方エレンは王家の血筋では無いためにその呪縛の影響はありませんでした。世界の真実も受け継いでいません。始祖の巨人とは、王家の血筋を持つ者のみが使える能力だったのです。要するに、エレンが器である以上は人類が巨人から解放されることは無いのです。これにはエレンもガチ凹みです。

話を統合すると、王家の者が継承したとしてもレイス王の思想に囚われて人類を救うことは出来ない、しかし王家以外の者が継承したとしてもそもそも能力を使うことすら出来ないということになります。

システムバグじゃん!!

それでもロッドは、神に祈りたいがためにエレンをヒストリアに食わせ、その力を継承させようとするのです。

【ケニーの目的は?】

ケニーには唯一心を許す友人がいました。それが【ウーリ・レイス】ロッドの弟です。
ケニーの血筋である【アッカーマン家】は壁の中の大多数を占める単一民族とは異なる種族でした。そのため王の【記憶改竄】の影響を受けません。秘密主義を貫きたい王政側としてはとても都合の悪い存在となり、そのためアッカーマン家は代々迫害を受けてきました。彼が憲兵を大量に殺害していた理由はそこにあるのかもしれません。その延長として、ケニーは当時の真王であるウーリを殺害しようと試みますが結果は失敗に終わります。

圧倒的な巨人の力を前に手も足も出なかったケニーは、その後、強者であるにも関わらず頭を垂れて迫害の歴史を謝罪するウーリに惹かれ、彼に協力することを決意します。
ウーリは世界の真実を知る唯一の存在、人類がいずれ滅びゆくその日まで壁内に束の間の楽園を築くことを夢見ていました。暴力を信じ切って生きてきたケニーにはウーリの見えている景色が何か別の物のように感じ、それが何なのか興味を持っていました。

だからこそ、ロッドに従順な振りをしてエレンの能力を横取りすることによりウーリと対等になろうとしたのです。
しかし始祖の巨人が王家の血筋でないと扱えないことを知り酷く落胆します。彼がウーリの死後抱いていた野望はそこで潰えることになります

【結論どうなるの?】

妾の子であり【いらない子】として育ってきたヒストリアは初めて親から必要とされたことに喜びと焦燥を感じ、ロッドの願いを聞き入れます。また、ガチ病みモードのエレンからも人類の栄光を悲願され自分を捕食することを望まれます。
2つの願いが一致し、行動に移す他無いヒストリアでしたが、その瞬間に、【自分がこの世で最も大切にしている人物の願い】が脳裏に過ぎりました

ヒストリアは自分が今から行おうとしていたことがその願いに反するものだと悟り、また、気付かないようにしていた【ロッドが自分を必要としている理由に愛がないこと】にも向き合い、全てを拒絶しました。
巨人化薬を捨て去り、エレンの拘束具を外すヒストリアの傍ら、ロッドはついに、自分自身がエレンを捕食することを決意し、巨人となりました。
しかし、正しい投薬が叶わずに不出来で大型な巨人となってしまったロッドにより鉱石でできた空間は天井から崩れ落ちていきます。
そのタイミングでエレンとヒストリアの元に辿り着いた調査兵団は瓦礫の下敷きになる運命を悟り脱出経路の確保に急ぎますが到底間に合いそうにはありません。
そんな中、ヒストリアの鼓舞によりやや立ち直ったエレンは偶然目に止まった巨人化薬のラベルに【ヨロイ ブラウン】と記載されているのを発見します。

直感的に現状を打破できると判断したエレンは無我夢中でそれを噛み砕き、体内に取り込みます。その瞬間、ウォールマリア奪還の最重要事項であった【硬質化】能力を発動することが可能となり、その力を駆使して天井の崩落から調査兵団を守ることに成功しました。
しかし喜ぶ暇もなく、奇行種となってしまったロッド巨人が巨体をゆっくりと進めていく様を確認します。その先にはオルブド区、つまり一般人の生活地があります。
ヒストリアは実の父を討伐する覚悟を決めると、その役を自分にやらせて欲しいとエルヴィンに志願します。
その意図とは敢えて民衆の前で自らが巨人を討伐する姿を見せることにより、民衆からの支持を得て情勢を固めようとするものでした。ヒストリアの提案にリスクを感じるエルヴィンでしたが遠回しにそれを許可します。調査兵団の作戦によって粉々に飛散したロッドの肉片にとどめを刺したヒストリアは、そこでようやく父親との因縁と決別出来たのでした。

一方、ロッド討伐後、リヴァイは天井崩落によって瀕死状態となったケニーを発見します。ロッドから盗んでいた巨人化薬を手に持ちながらも巨人化して延命を測らないケニーに疑問を抱くリヴァイでしたが、ケニーの表情は安らかでした。
始祖の巨人を手に入れることにより、ウーリの見ていた景色を知りたかったケニーはそれが叶わずに茫然自失していましたが最期の最期に、ウーリを理解することが出来たのです。

力こそがこの世の全てであり暴力を信じて生きてきたケニーには、自分よりも強い力を持っているはずのウーリが慈悲深くも平和を渇望する姿勢がずっと理解出来ませんでした。しかし、答えは案外簡単だったのです。

自分が力を信じていたように、人間誰しもが何かに縋って生きていたのです。ロッドが神に祈りを捧げるように、サネスが王を信じていたように。
ウーリはかつて、力以外でケニーと友人になるに至った【奇跡的な何か】に縋っていたのかもしれません。慈悲深き思考の先に、楽園が築き上げられると信じて。
呆気ない答えに対して、落胆にも似た安堵を示すケニーは、最期にリヴァイに巨人化薬を託しました。

地下街で自分に生きる術を学ばせたケニーという男、その姓がアッカーマンであること、そして自分の姓もアッカーマンであることに期待のような疑問を抱くリヴァイはケニーが力尽きる間際に自分達の間柄を問います。その心境を察したケニーは嘲笑するように自分がただの伯父であることを明かし、また、かつてリヴァイの元から忽然と姿を消した理由が自分都合であったことを語ると、静かに息を引き取りました。

【ラストシーン】

王政府との戦いが全て終わり、ヒストリアが正式に女王に即位します。ヒストリアの読み通り、情勢を固めることに成功した彼女の戴冠式には民衆の歓声が響き渡りました。

その後、かつて自分の胸ぐらを掴み上げ激励(恫喝)を施してくれたリヴァイへの感謝(報復)の印として権力パンチをお見舞して身分の違いを盾に振る舞えば、予想をはるかに超えるリヴァイの反応に同期共々驚愕するのでした

~完~


以上が王政編です!!
今までの謎の解明、そして次なる謎を追加しながらも綺麗に風呂敷を畳むことが出来ているこのエピソードは読み応えと共にしんみりとした気持ちになれるとてつもない神回です。心理描写が多い分感情移入がしやすくなっていて何度読んでも思わず目頭が熱くなってしまいます。
ケニーとウーリの心境に関しては完全に私個人の解釈となりますので正解ではありません。ご容赦ください。
また、冒頭にて王政編は原作の70話までと記載しましたが71話「傍観者」もエピローグという意味では王政編に入るのかなと思います。しかしこの71話は何を隠そう、

私が全話の中で最もお気に入りの回となりますので是非また別の機会で語らせて頂きます。

王政編が幕を閉じれば遂にウォールマリア、そしてエレンの故郷であるシガンシナ区の奪還作戦が始まります。

本当にここから地獄のように盛り上がります。やばいです。

ケニーの【皆何かに酔っ払ってねぇとやってらんなかったんだな】という名台詞も、今後リヴァイに突き付けられるある大きな選択に対してとてつもなく生きてきます。頭の片隅に入れておいてください!!

この解説はおおまかに要点をまとめただけですのでまだまだ語り尽くせなかった見所がたくさんあります。王政編で諦めてしまった方、そして諦めてはいないが何となくで読み流してしまった方がいらっしゃいましたらどうかもう一度手に取って読んで見てください。

最後に、ラストシーンの【お前らありがとうな】に関しての解釈は直接私に聞きに来てください!!以上!!