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原点に回帰するドローイング

私が芸術を志した原点の絵は、19世紀末フランスの画家トゥールーズ=ロートレックの絵でした。

ロートレックは、社会から疎外される人、当時のマイノリティの人々のために絵を描き続けた画家。好きな人も多いと思います。

ロートレックは、身体に障がいを持っていた画家でした。

それを、からかわれてしまうこともあったそうですね。世の中とことん理不尽で、、。


私は学校に馴染めず、孤独だった10代の頃、

祖父と母にすすめられて、東京下町の幼馴染みの家に
泊まりながら、

どこだったか忘れてしまいましたが、

銀座のどこかの小さなギャラリーでロートレックの絵を観て、

それがアートを始めたきっかけでした。

人生の影ばかりを観ていた私には、

社会の裏側を描いたロートレックがヒーローに見えた。

こんなカッコイイ人いたんだ。

そう感じましたね。

その時に、観た作品は『彼女たちのため』という娼婦の女性達を描いた連作のシリーズでした。

10代の頃ですから、娼婦の女性達の生きざまを直接観るのは、正直とても辛く悲しかった。社会の現実に目をそらしたい自分がいました。

ですが、作品を1つずつ観ていくと、ロートレックは物凄い愛情を持って、その場に生きている人々を描いていました。

言葉にするには恥ずかしいぐらいのものですが、

「かぎりない、惜しみない愛情」を
ロートレックの絵、

「彼女たち」を描いたポスターから感じた。

ロートレックが描く、娼婦の女性達の絵から私が感じたのは、なんともいえない人間味の灯った「あたたかさ」でした。

ロートレックは、「人肌」を描こうとしていたのでしょうかね。

ルノワールの描く女性の肌の質感にも強く惹かれます、女性のプロポーションは美しく、女性の美は素晴らしいです。

印象派が描く風景の光にも強く惹かれます。

ですが、ロートレックが描いた絵画から感じる、なんとも言えない「あたたかさ」、

視覚的な効果ではない、肌触りとして感じる「熱」のようなものに、

私は何よりも強い影響を受けました。

こころの琴線に触れる「何か」がそこにありました 。

くらやみにいた私の心に、届くメッセージが
ありました。

同じように、社会から疎外される人々を描いたドガの絵も素晴らしいですが、

ロートレックの描く「人肌のあたたかさ」のようなものは、私はドガの絵からは感じませんでした。

ピカソも若き日の青の時代の頃、ロートレックの絵が置かれた部屋の様子を描いたりしてますね。

ピカソが起こした芸術の大変革であるキュビスムは、セザンヌからの影響と共に、ロートレックの描いた「何か」、、、の影響もあると私は考えています。

ロートレックの絵画を観て、私の道は開けました。

私が自分の人生で成すべきことは、彼のようなアートをやること。そう思った。

そこに自分の生きる道を見つけた。


誰かのために絵を描くこと、それはロートレック自身にとっても、自分の居場所を作ることになっていったようですよね。

誰かのために生きることで、自分の居場所が生まれた。

どこにいるかではなくて、、自分の心が「どこにあるか?」

心の居場所を描いた。

いま辛い立場にいる人にとって、その居場所となれる
芸術を。

作り上げてみせると、心に誓いましたね。


現在、岐阜県美術館でロートレック展をやっているようです、あと1週間で会期が終わってしまいますが。

館長の現代アーティスト日比野克彦氏も、

「大衆の思いに応えたロートレックは、社会と接続するアートの先駆者」だったのかもしれないと述べていました。

日比野克彦氏もロートレックを高く評価していたとは、知らなかった。

ピカソもそうだったみたいですよね、

ピカソがスペインの田舎からパリに来て分かったのは、

ロートレックこそが最も偉大な芸術家であったということ。

SDGsなどの社会的課題も問われている時代。現在、アート&デザインと福祉分野などとの連携もたくさんあります。私も色々と関わっていましたが、いまは自分で立ち上がっていくための期間。

原点のロートレックの絵画を、漠然とイメージしながら、部屋にあった段ボールにクレヨンで、無意識的に手を動かして、ドローイングをした。

描く行為の中に、私の居場所があった。

意識に絡む複雑な糸のようなもので、、、心のかげりはどんどんと複雑な陰影を作って、、

傷口が広がっていくこともある、

しかし、意識のレンズにそんなモヤモヤが浮かび上がってきた時こそ、

「ばんざーい」と、身体を動かしたい。

人の心の切実なもの、

心のかげりに一服の人肌のあたたかさが灯るような、

そんなロートレックが残したような、アートの熱を受けると、

心が原点に回帰します。

むかし、

10代の頃に志した私の道をもう一度、思い出して、、

やることやるだけです。

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