ブックスマートの感想 本当の自分と1人の人間について

現状オールタイムベスト10に入れて良いくらい大好きな映画だった

泣きじゃくったけれどそれは自分でも理由はよく分からなくて、でも悲しいからとかじゃなく、ただ楽しくて、最高で、クソで、バカみたいに大笑いしながらボロボロと泣いてしまった。

この映画を語るにあたって避けて通れないであろう要素に「フェミニズム」があるじゃないですか。でも今回自分はそれを放棄しちゃいます。
だって「本当の自分」の感想を曝け出して良い映画だと思ったんだもん、これ。
そういう「正しさ」みたいなモノはたしかに必要だと思う。それは勿論否定しないしなんなら同意する。
けど少なくとも自分はそういう感想の出力、疲れるんだよな正直。
普段からそれを生業にしている人間ならスラスラ言葉が出てくるのかも知れないけれど、自分にとっては、自分がしたくてしていると言うより、「世間の潮流的にさせられている」ようなモノ、みたいな所がある。
個人的にそれを本作のモリーからも勝手に感じ取ってしまった。だからこんな感銘を受けているのかもしれない。

彼女はとても強くて、正しい事を言っている……のも事実だけれど、本当は「みんなクソ最高だよ!!!!」って言う人間だったじゃないですか。
彼女が今の思考に至るまでの経緯の中には「あのパリピみたいな人間達と私は違う」って思うための理論武装としての側面もあったんじゃないか~って読み取るのはどうなんだろう。少なくとも自分はその可能性もあるなと思った。
けれどその本当の姿をさらけ出す事って中々難しくて、人それぞれの距離感や価値観、本音と建前があって。だからこそ人と人が通じ合った瞬間のかけがえなさはありえないくらいに尊いんだよな。そんな瞬間が何度も何度も訪れる凄い映画。

雑にレッテルを貼ってしまって居た人間達。そんな1人1人を見つめて、寄り添った結果見えてくるみんなの「本当の姿」。
本作には多種多様に個性の強い面々が出てくるけれど、それをポリコレ的に押し出す説教臭さは一切無く、ただ1人1人の本当の姿を切り取っただけのような感触を受けた。この「1人1人を見つめる」と言うのが特に自分の感性にブッ刺さったんだな。自分と見つめている方向性が一緒なんだよこの映画。アジア系、黒人、女性、同性愛者、である前に1人の人間。
どう考えても当たり前な話なんだけどこの思考を抱いている人間ってあまり数が多くないんじゃないかな~と思っていたのでこの映画に出会えて本当に良かったと心の底から思っています、今。

最初に「現状」って書いたのは、この映画が世に放たれた事で、今後こういう映画が増えていき、本作を超える傑作が生まれる可能性があると思ったから。それだけの力が本作には籠もっている、と思うくらいには評価をしている。
マイノリティもそういう属性でなく、「1人の人間」としてちゃんと見て貰える世の中になると良いな。いや、なっていくんだろうな。


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