感想『七つの会議』(映画)

半沢直樹の池井戸潤原作、監督も半沢直樹のディレクター、野村萬斎と及川光博のダブル主演。VIVANTを観たらNetflixのオススメ欄に上がってきたので観た。

自分に社会性を注入するための儀式としてこういう企業小説的な作品にはまる時期がある。ただ、注入しようとした結果として、企業の中もまた一つの檻や箱庭のごときものであり、社会すべてではなく、社会のほんの一隅でしかないことを確認する作業になってもいる。
『七つの会議』はまさにそのような社会の一隅の中で煮詰まっていった価値観の悪性を描いたもので、大手電機メーカーゼノックスの中の派閥争いや、利益追求主義が止まらなくなった結果のリコール騒動についてを主軸に、たまたま当事者となってしまった及川光博が、何かやたらと裏事情に詳しそうな万年窓際族の野村萬斎と共に、自社の不正を暴いていく展開に繋がっていく。

原作小説は、タイトル通り一話につき会議がひとつのその周辺状況を描いた連作短編集で、こうした企業の中で行われる会議で繰り広げられる不思議に舞台めいた、それでいて当人同士にとっては必死の闘争としての会議というものがテーマになっていた。
会議。筆者はほとんど人生で参加した記憶がない概念だが、日本のクラシカルな企業におけるそれを徹底して描くことでその奇妙さや染み出すペーソスのようなものが感じ取れる作りになっていた。
映画だと、それぞれの会議を上手く流れの中に取り込んでしまったせいで、原作を読んでて感じた質感がちゃんとしたエンタメとして整理されてしまってる感もあり、お金をかけてつくる作品としては正しいんだけれど……という部分は少し感じてしまった。

ただ、そういった構成について云々言うよりも、本作は野村萬斎演じる八角という窓際族社員の異質さと及川光博演じる原島の真面目さのコントラストを味わうことをオススメしたい。
特にラストシーンで、それまでほとんど口数少ないながらも印象に残る演技をしていた野村萬斎が、いきなり火がついたように長台詞を喋りだしてビビるので、ぜひそこまでのタメだと思って本編を見て欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?