自動車雑記 2023年4月28日 ダイハツ工業 認証不正について思うこと

はじめに

 書くまでもないと思いますが、私はダイハツ工業およびトヨタ自動車の内部で勤務している者ではなく、当該不正に関して直接情報を得られる立場にもありません。
 また、今のところの情報ソースはトヨタイムズニュースの緊急生配信とダイハツ工業のプレスリリースのみとなります。
 ただ、自動車関連業種で設計開発ではない領域でエンジニアと呼ばれるような職種で働いている、一般の製造業に従事する車好きです。
 エンジニアなんて自称したことは無いですし、自分の能力も高いとは思っていません。
 ですので、限りなく個人の感想のレベルの文章であることはご了承下さい。

大前提

 まずは前提として「どんなものであれ、法規・認証試験での不正は許されない」ことは言うまでもありません。
 例えそれが実害がなかったり、正規の試験内容に対して厳しい評価だったとしてもそうです。
 数年前にスズキの燃費試験の不正という事案もありましたが、これは厳しくなるような不正でしたがもちろんアウトです。
 仮に社内基準の評価であれば、社内ルールに則って実施することは問題ないですが、法規や型式認証は統一された基準で、再現性のある方法で実施する事に意味があるからです。
 そういった意味で、よく言われる「燃費試験は街中走行して測れ」は不可能という事になります。
 ですので、燃費測定モードは数年単位くらいでアップデートされていると思われます。

トヨタイムズの緊急記者会見に対する所感

 まずは、ダイハツのリリースから間髪入れずに親会社の会長と社長が揃って会見をしたのは、最近のトヨタらしいスピード感だったかと思います。
 また、佐藤社長はエンジニアとして事実をわかりやすく説明し、豊田会長は少し概念的・抽象的な「考え方」を語り、富川氏がフラットな視点で聞き役になりつつ場を円滑に回していくという役割分担は、視聴していてわかりやすかったですね。
 まずはお詫びし、安全性に対する不安に対する現時点での確認結果、不正内容の説明と今後の動き、マスコミ関連への質疑と、この瞬間にできる事はすべてやったのかなと思います。
 個人的にはもう少し細かい技術的な説明と、もう少し長い質疑があっても良かったかなと思いましたが、初報であることを考えればこんなもんかと思います。

個人的な注目ポイント

①発覚が内部通報によるものだった
②社内追試の結果はOKだった
③対象車種が海外向けのみだった
このあたりについて、以下でまとめてみようと思います。

①発覚が内部通報だった

 ダイハツのリリースによると、事の発端は内部通報だったそうです。
 ということは、認証方法の誤認識とかミスの類ではなく意図的に行われたということになります。
 ミスならいいのか?…とはならないですが、不正試験を考えてしまうような何かがあったのかなと推測します。
 そのうえで、内部通報者の方では止められないレベルの中間管理職までは認識があったのじゃないかなと思います。
 役員とか上級管理職であれば、さすがにこのレベルの不正だと自らの権限で止めるのではないかな。
 別にそれは正義感や職業倫理じゃくて、普通に自分の保身のためかもしれませんが…
 そのクラスの人が、そんな不正をお目溢ししても損しか無いですからね…
 ともかく、傷が浅いうちに通報してくれた内部通報者の方はグッジョブだと思います。
 ここで「じゃあなんで不正するときに止めないんだ」とか言うと、不正を隠蔽する方向の圧力になるので止めておきましょうね。

②社内追試の結果はOKだった

 これは、一見不思議な対応に見えると思います。
 普通に考えれば「なんで試験OKなレベルなのに不正したの?無駄じゃない?」となるのでしょうが、これはちょっとだけ気持ちが理解できます(やらんけど
 前提として、認証試験の前に十分な設計検証やCAE解析、試作品での強度試験等は十分に行って(なんなら認証と同じ試験も実施して)いるわけですよ。
 このへんは自動車特有ではなくて、量産の工業製品なら同じかと思います。
 もちろん、公差や素材や加工のバラツキを考慮してはいるはずだけど、試験する側としては「最悪の最悪条件に振れてたら大丈夫かな…」と頭では大丈夫と思っていても不安になることは正直あります。
 しかも納期が近いとか、設計変更を入れる時間的余裕が無いとか、仕入先に設変品を作ってもらう時間や予算が無いとか、量産型製造のリミットが近いとか、余裕度確保の設変が通りにくい社内風土があるとか、流用設計前提だから変更できないとか…いろいろな制約から「やっちゃった」のではないかと思います。
 ただ、擁護するわけでは無いですが、試験結果NGのもののデータを改竄するというものよりはマシなのかなと思います。
 まあ、不正という括りでは一緒ですが、悪質性に差はあるのかなと思います。
 正規の手順でやるのであれば、
・正規品で認証試験を受ける
・試験データを基に余裕度の低さを設計に投げかけて設計変更を入れてもらう
・対策品を作成し、再試験実施
 となるのかなと思いますが、昔は図面にサラッと変更入れればOKでしたが、今は関所が多くて大変と聞くので言うほど簡単ではないと思いますが…

③対象車種が海外向けのみだった

 これはダイハツの開発部隊がどこにあるかわからないとなんとも言えませんが、仮に現地拠点ににも開発部門があるとするのであれば、言葉の壁とか文化の違いみたいなものの影響もあるかもしれませんね…
 ただ、ダイハツの国内以外の主たる市場って東南アジアなんですよね…
 そこに対してこんな事するのかな…という個人的な疑問はあります。
 昔だったら海外向けのリコール情報だと、国内にはほとんど情報出なかったりしましたし、時代はホワイトな方向に進んだのだなと感じますね。

まとめ

 まずは不正ではあるものの、安全に直結しなかったのは不幸中の幸いだったなと…ただし信頼は大きく毀損したと思います。
 個人的には事実の把握と再発防止策、必要であれば補償を十分に実施していただければそれで満足です。
 この件で役員の首飛ばしたところでなんの意味もないし、逆に数年掛けてでも再発防止の浸透をする事こそが責任の取り方なのではないかと思っています。
 幸いにもトヨタグループには豊田章男というある種のカリスマが残っているので、豊田会長の手腕も大いに振るって頂きたいですね。
 また、自分の普段の仕事に落とし込んで見ると、やっぱり「現地・現物・現認」は大切だなと思います。
 正しい手順で、事実を基に仕事をしないといかんなーと改めて肝に銘じようと思います。
 また、不正等を見つけた時には、自分で直接指摘できなくても上司経由だったり内部通報窓口を活用することを頭の片隅に置いておくという事も大事なのかもしれません。
 今後調査が進むと思いますが、同じ業界で飯を食う者として関心を持って続報を待ちたいと思います。


追伸

 ヲタクの戯言を書こうと思って作ったアカウントですが、たまにこういった時事ネタや他の趣味の話題も書いていこうかなと思います。
 なるべくタイトルで見分けられるようにしておきますので、ご興味ありましたらお読みください。

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