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バディミッションBONDの『あの腕時計』を考える

※あまり重要ではないネタバレが含まれます

バディミッションBONDというゲームにハマっている。

内容をおすすめするnoteはいくらでもあると思うので、それは他の記事にお任せする。私が今から話すのは、作中に出てくる『あの腕時計』についての一点だけである。知らない人のために、まず簡単に説明をする。

「借りを返す」として、腕時計を渡すシーンがある。

これはメインストーリーに直接的には関係がなく、サブエピソードの中でのワンシーンになる。プレイした人の中には覚えていない人すらいるのではないかというシーンだ。

このエピソードの登場人物は、作中のメインキャラのうち2人である。まるで野獣のような戦闘力と機動力を持ち、理由あって国宝級の宝石を狙っている世界規模のならず者『怪盗ビースト』アーロン。もうひとりは、変装や催眠によって人を操り数多の組織や国すら陥れたとされる裏世界の住人『仮面の詐欺師』チェズレイ。2人とも、肩書きだけ見れば泣く子も黙る大悪党である。
バディミッションBONDという作品はこの2人を含むメインキャラ4人がチームとして動くのだが、この2人の組み合わせはどうも性格が合わないようで、気を抜けばすぐ嫌味と怒号の応酬。大体そんな感じだ。

エピソードのあらすじはこうだ。とある経緯で、アーロンはチェズレイに助けられてしまう。気に食わない相手に助けられたアーロンはそれを良しとしない。借りを返すべく、アーロンはある事件で宝石強盗を捕まえたついでに、その懐に入っていた腕時計をくすね、それをいわば『詫び腕時計』としてチェズレイに渡した。結果どうなったかは、是非ゲームをプレイして見てみてほしい。

さて、ここからが本題である。

この腕時計、何だろう。

絵があれば予想もつくものだが、残念ながらこの腕時計のイラストは無い。一体どこのメーカーの何という腕時計なのだろうか?大悪党同士の『詫び腕時計』として渡されたこの腕時計は。

まずは出どころである「宝石強盗」からインスピレーションを受けてみる。ジュエリーウォッチの可能性はあるだろうか。アーロンは五感が飛び抜けて優れており、イミテーションを遠目からでも瞬時に見抜けるという異常にハイレベルな宝石の目利きである。ジュエリーウォッチに目をつけるのは自然な流れだろう。

ジュエリーウォッチといえば、カルティエかショパールあたりだろうか。

カルティエといえば、パンテールというコレクションがある。豹をモチーフとしたカルティエの代表的なラインだ。

パンテール ドゥ カルティエ ウォッチ: ラ パンテール ウォッチ、23.6 mm、クォーツムーブメント。18Kイエローゴールド製ケースにブリリアントカット ダイヤモンド40個(計0.24ct)、18Kイエローゴールド製パンテールヘッド、ペアシェイプ ツァボライトの目、ブラックラッカーノーズとスポッツ、ゴールド仕上げダイアル、ゴールド フィニッシュ ブルースティール製剣型針、セミマットグレー アリゲーターストラップ、18Kイエローゴールド製アルディロンバックル。厚さ:7.7mm。日常生活防水。 SM、クォーツムーブメント、イエローゴールド、ダイヤモンド、ツァボライト、ラッカー、レザー www.cartier.jp

ワイルドで、怪盗ビーストと呼ばれるアーロンらしいチョイスではないだろうか?アーロンの私服のコートの背中には、PANTHERの文字が書かれた豹があしらわれている。正にアーロンにぴったりだ。しかしここで、ふと気づいた。このふたりは仲が悪い。仲が悪いのに更に自分を連想させる物など渡したら、険悪な雰囲気になる程度では済まないだろう。この線はないものとする。

逆にチェズレイのイメージの蝶(と蛾)から連想してみる。なら、ショパールの

こちらなんてイメージに合うだろう。しかしこれも待ってほしい。このふたりは仲が悪いのだ。特にアーロンはチェズレイをどうしても受け入れられない性格である。相手を連想する時計を持っているだけでも憤死ものではないだろうか。更にはそれを渡すなど、そんなプレゼント紛いの事、とても耐えられないのではないだろうかと思う。

他にも、ジュエリーウォッチで有名なブルガリには、チェズレイのもう一つのモチーフ(モチーフ多いな)である蛇をイメージとしたセルペンティというコレクションがあるのだが、どちらにせよ、この線はなさそうだ。少し目線を変えてみることにする。

もっとわかりやすく高い腕時計かもしれない。

オメガはどうだろうか。多くの人に愛される伝統的なウォッチカンパニーだ。

堅実さを感じるブランディングで個人的には好感度が高いが、どちらかというと何かの対価というよりは実用的なイメージが先行する。バディミッションBONDのメインキャラ4人の中でも、作中の「いわゆるFBI」に所属する優等生タイプの好青年ルークなんか、いかにも着用していたりしそうなものだ。詫び腕時計としての登場は少々イメージが違うか。

やはりここは、王道ともいえるロレックスだろうか。ロレックスといえば、アイコンウォッチとも言えるサブマリーナー。

しかし、まだ実用感が勝っている。世界を相手にする大悪党たちの詫び腕時計には、これでもまだ遠い気がする。アイスを奢ってあげるぐらいの詫び感ではないだろうか?

ロレックスであったなら、きっとデイトナだろう。

デイトナのモデルの中に「メテオライト」という文字盤がある。この文字盤にはなんと、本物の隕石が使われている。

バディミッションBONDの舞台は、その昔隕石が降ってきたことにより島が生まれ人が住み、国となったという類稀な場所である。実際に作中に登場する隕石は非常に重要なキーアイテムであり、その物語に深く関係している。それを示すかのようにゲームのエンディング曲の題名もまた「Meteorite」となっているし

配信にて開催のファンイベントも「メテオライト・ショー」と銘打っている。

もしかして、これは正解なのではないだろうか。

いや、もっと高いのでは?

先程も言ったが、アーロンが腕時計を渡そうとしている相手は国すらも手玉に取るトンデモ知能犯のチェズレイ・ニコルズである。国を相手取るとなると国家予算レベルの話になるだろう。3桁万円では菓子折り程度の感覚なのではないか?まあチェズレイにとってもメリットのある行動ではあったので、菓子折りでもいいような気はするが。

しかし、これ以上の値段になるとなかなか簡単には想像がつかない。とりあえず、フランク・ミュラーを思い浮かべてみる。

トノーカーベックス。デザインが特徴的で、『高い腕時計』でイメージしやすい腕時計だ。きっとイラストにした時もわかりやすいだろう。メインではないエピソードにふらっと出てくる腕時計にしては目立ちすぎる気もするが。

いや、もっと高いだろうか!?

もう半端なく高いといえば、半端なく高いリシャール・ミルだろうか。

ちょっと高すぎる気がする。

いくら世界の悪党たちといえど、これは詫び腕時計という単位ではないだろう。強盗犯が連行される現場から「ちょっとした駄賃」としてくすねるにも重すぎる額のように感じる。やはり千万円台前半が「少し良い菓子折」ぐらいの気持ちでやり取りできる範囲内なのではなかろうか?

そのあたりになると、やはりパテック・フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ・ピゲあたりが候補に上がってくる。

いずれも高名なメーカーではあるのだが、しかし一般的には少しイメージし難いようにも思う。たとえばこのシーンがイラストとして描かれた時に、カラトラバやノーチラスが出てくるかと言われると、おそらく出てこないだろう。

それこそオーヴァーシーズなど、イラストで遠巻きにサラッと描かれてしまったが最後、「オーヴァーシーズだ!」と言える自信が私には全くない。

その点でいえば、この中でならロイヤルオークが最も可能性大か。

しかし、これには問題がある。ウブロのビッグバンと間違える可能性があるのだ。

https://www.hublot.com/ja-us/watches/big-bang/big-bang-original-steel-ceramic-44-mm

ビッグバンはビッグバンで人気が高く一般的にも知られており、特にイラストで細部をデフォルメされてしまうと、この判断は難しいものになる。価格感に差があるので、この見解の違いにより悪党たちの金銭感覚の解釈が割れてしまうのは厄介だ。


やはり“ロレックス コスモグラフ デイトナ メテオライト”あたりで手を打ってくれないだろうか。だってなんだか運命的じゃない。ねえ?

仲が悪いとはいえ、同じ釜の飯ならぬ同じフライパンの肉を食う間柄である。大悪党にしてはカジュアルかもしれないが、あえて重くなりすぎない貸し借りのやり取りがあっても良いんじゃないだろうか。

悪党だと自称する割になんだかんだで律儀な二人なので、これは彼らなりの菓子折りのやり取りだと思うとしっくりくる。悪党なので勝手に押し付けられた貸しなど放っておけばいいのに、律儀にも何かしらの形で返そうとするアーロンもアーロンだし、気に入らなければ突っぱねるだけでもいいのに、いちいち丁重に相手をした挙げ句に出直しを要求するチェズレイもチェズレイだ。このやり取りが非常に面白くて、私はそんな二人の微妙な距離感を気に入っている。

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