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ご縁はいつどこで巡ってくるかわからない。

その日は、好きなアーティストが愛媛県の最南端の街、愛南町の観光サポーターとなり、その愛南町でコンサートを行うということで、追っかけのため、友人たちと羽田空港へ集合していた。

私は以前、青春18きっぷを用いて香川県に上陸したことはあったが、きちんと四国を観光するのは初めて。そして愛媛に行くのも初めて。

好きなアーティストのコンサートということと、初めての地へ旅をするということが重なり、久々の高揚感に包まれていた。それは、学生の卒業旅行に負けないくらいのはしゃぎようだったと思う。
羽田空港で愛媛県の旅雑誌を熟読しては、どこに行く?何食べる?お土産どうする?と皆で大騒ぎ(笑)

そんな私たちに、一人の男性が声をかけてきた。
やばい、うるさかったかな?

とっさに身構えたが、ニコニコしながらその方は「愛媛に行くのかい?」という質問から、どこに行くの?旅の目的は?など、どんどん質問をいただき、ちょっと方言交じりのしゃがれた声がさらに温かみを感じて、あっという間におじさんを囲むように皆で話し込んでいた。

きけば、その方は愛媛県の佐田岬というところでシラス漁をしているという。今回は、特産品のPRのため東京に来ていて、昨夜打ち上げで飲みすぎてしまい昨日乗るはずだった飛行機に乗り遅れてしまったため、朝一で帰ることになったという。

だからか、、一緒にいた隣に座っている男性も疲れ気味。(笑)(二日酔いなのね)

私たちは思いもよらず、愛媛の魅力を地元の方にたくさん伺うことができ、大満足で、いざ飛行機に乗り込もうとしたとき

「時間があれば、佐田岬まで来なさい。シラス食べさせてあげるから」

どこまで鵜呑みにしていいかわからなかったけど、良くも悪くも土地勘もなく初めての愛媛旅を満喫すべく最終日に佐田岬へ向かうことにした!

が、なんと、、、、遠い。愛媛の最南端から西の端へ行くわけだからそりゃそうか。と無知であったことを反省しながらも遠い。

でもここまで来たら引き返せないと、帰りの飛行機の時間と戦いながら、レンタカーを走らせた。

何とか辿り着けば、そこには大きなざるに打ち上げられた生シラスがどっさり!!!しかも好きな分だけかけて食べていい。金なんていらん!と。

羽田空港で10分くらいしか話したことのない私たちに、関東で食べたら一人前2000円はするであろうという生シラスをたらふくごちそうしてくれるなんて、なんて愛媛の人はいい人なんだ!

後から聞けば、本当に来るとは思わなかった。と笑っていたけど。

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それから、もう何年かな、私が愛媛に行くときは佐田岬へ会いに行き、おじさんたちが関東に来る日は関東で落ち合うという関係が続いている。

佐田岬にふるさとができた気分。

地元の人との交流によって、身近な出来事として考えさせられることも増えた。

地方は自然が豊かだと思っていたが、その自然を守っていくための努力も頭が下がる。海に広がるゴミ。どこから流れ着いたのか、プラスチックごみの山。観光地ではない場所だから気付くことがないその海の写真は目を疑った。

おじさんたちが飛行機を乗りそびれていなかったら、私たちが図々しく佐田岬まで行っていなかったら、気づくことなく、地方の教育問題、環境問題や地域活性への考えなども生まれなかったと思う。

あの時のたった10分の会話が、視野をグンと広げてくれた。私は今、その気付きを活かして地域活性や教育問題に取り組むべく、関東と地方との情報をつなげることに取り組んでいる。まだ活動としてはささやかだが、情報があふれかえる社会で人の熱が通った生きた情報は、何かを変えられるのではないかと信じている。それは、佐田岬の人が教えてくれたからだ。

また落ち着いたら、佐田岬へ行こう。

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