カメレオンの眼*4

混雑してゆく車内の中で
優先席に片足を突っ込んだような体勢になりながらも
頑なに立ち続ける姿を、視界のどこかで確認していた。

私の目線とその人の手元が重なる。綺麗な爪先。

朝から強く打ちつける冷えた雨で、
血色が悪くなった自分の手と見比べる。

手元に落とした目線を再び彼女の手元に戻す間、
何やら主張の強いものに目が止まった。彼女の靴下。

黒のジャケットから覗く白いシャツ
黒のパンツとローファーには似合わない、
足元から覗いていたのはキャラクター物の靴下だった。

部分的に見えていただけだが、おそらく10円で買える美味い駄菓子のあのキャラクター。

朝からこの雨だ、急いでいたのだろうか。
空を気にするせいで足元を見なかったか。
あるいは。


狭いところを傘と傘がすれ違うとき、ぶつからないように高さを別にしたり、互いに外側へ向けたり。
相手と通じ合ったかのようで嬉しい。

月曜と朝と雨と寒さが重なって、
でも人間は微笑ましい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?