おめでたいけどしんどい 鯉と逆鱗

ハレノヒカンタータでお見かけした上原ぺこさんの生誕イベントにて、鯉と逆鱗というこの日のための書き下ろしのお芝居を観劇しました。
まず、17時開演→21時20分終演(その後物販22時20分頃まで)という鬼スケジュールで普通のイベント1部分のお値段ということ、主賓の上原ぺこさんが歌って踊ってお芝居してとほぼ出ずっぱり。
これだけでも大変にクレイジーであり、途中で考えるのを辞めてしまったのではないかと心配になるほどの一大イベントでした。

そして今回出演者のだーつーにお呼ばれしました鯉と逆鱗。正直な感想は生誕で観るにはなかなかにしんどいシリアス。かなり本格でした。
もちろん生誕イベントの感想として「しんどい」は大変失礼と分かっていますが、それでも心がしんどくなる、ドロっとした作品。裏を返せば「心を惹き付けられた」だと思います。

あらすじ

公式のあらすじがないため、ざっとですが
(広い意味で)本を書くことで自分を表現するそめぢが、ヤンキーグループのたまり場のスナック(?)マルゲリータに呼び出される。キズキ、タマ、若葉の3人とともに演劇を作り、段々と人気を得ていく。
しかし、未熟な女子高生という立場特有の気持ちや立場の変化がいつしか取り返しのつかないくらいの崩壊を招くことになる。その崩壊の後、キズキがそめぢに伝えた言葉は。

これ、生誕イベでやるのかというくらい重い


まず正直な感想は、結構しんどいです。面白いとかつまらないとかじゃなくてしんどい。精神が疲弊するというか、どっと疲れる感じ。特に3幕。
なんというか、女子高生特有なのか分からないですが、本来は黙っておくべき、一番ダメージの大きくなる瞬間で泥沼化させていく瞬間を、1番楽観視している様子だったタマが作り出していることがただただ恐ろしい。
そして一番精神が崩壊したのが、ぺこさん演じるそめぢでした。仲間だと思ってた。一緒の目標に向かって頑張ってたと思っていた。そんな人達に裏切り者のような風にして突き放される。それも、当初に目標にしていた池袋の劇場での公演直前で。
なんと言葉にしていいか分からないグチャグチャがそめぢを、そしてマルゲリータ全員を襲う感じは見てらんないくらいしんどい。本作はおそらく敢えてそれを乗り越える様子を描かず。マルゲリータの仲は修復しません。ここからも、困難を乗り越える青春ストーリーではなく、どこか気味悪いというか人間の未熟で怖い部分が出た作品に仕上がっていたのでしょう。

もちろん、その中にせめてもの救いがあったのが、キズキのスマホのパスコードが、そめぢへのメッセージであったこと。ここが少し救われたポイントではないでしょうか。

全体を通しての感想は、なんとなく辻村深月的な要素が強かった風に思います。偶然ですが、私が直前に読んでいたのもドロっとした女性の友情と恋愛によって生じたや歪みが特徴的な辻村深月の小説。事実は小説よりも奇なりとはよく言うものですね。


ぺこさんのファンの方々がどのように受け取ったかは定かではないですが、一エンタメファンとしてはすんごいことするなあ。です。
ダンスパートで感じた、精神が崩壊する。ような感じはたしかにハマってるような印象は受けました。ゾクッとする感じ。ただそれを、自らが主役の生誕イベントで、精神的にも負荷がかかるであろう役をやるのだから凄い。
ファンでないなりに、ファン目線に立った正直な感想は、こんな姿を観れるのが1度限りなのは勿体ないという気持ちと、こんな辛い姿を観る生誕は懲り懲りだ。なんて気持ちが戦っています。
心にぐしゃっとくる作品は、しんどすぎて二度と観たくなくなる方が褒め言葉だと思っているので。

あと、個人的に目についててメモにも残してたところが
・第1幕でカバンを拾い上げてスカートが思いっきりめくれてるのは、あれはわざとなのか。直さないところにそめぢの脚本以外は抜けている部分が現れているのか。それとも直す余裕がないくらいの緊張だったのか。

・同じく第1幕の、ソールドアウトの画面をを覗き込むシーン。これは本編には直接関係ないシーンかもですが、個人的にグッとくる表情でした。


女子のいざこざの裏に男あり

また、今作のドラマの裏には男性の影が不可欠。青春ストーリーにいるような、ヒロインとくっつく優男。なんてものは幻想で、友情の崩壊を招くことすら有り得る。というリアリズムを見せつけるあたりは、やっぱり辻村深月的な感じを受けました。

今回お呼ばれした、だーつーこと津田宗司さんは飯塚さん。という大人の役。いわゆる芸能系と繋がりのある人。そめぢ達からすると頼りの綱のような存在であるが故に引き起こされたいざこざがなんとも言えない。
個人的には、ジブリによく出てくるいいこと言うジジイ的な台詞回しだったなと言う印象。個人的な受け取り方だからなのか、少しその印象よりも若いかな?という認識のズレはありました。
ただ、女子高生たちのいざこざを巻き起こすには多少の若い感じがある方がリアルなのかな?流石に60~70のジジイに気に入られた嫉妬であんなクライマックスは迎えない…とは思う。

胡散臭いおじさんかと思いきや、言ってることは至極真っ当であり、人間味もある。出番は僅かながらも難しい役だなあと感じました。

今日だけの公演

計3幕、合計80分の作品がまさかのこの日だけの作品。素演劇で、稽古期間も短いということで色々と勿体ない気持ちではあります。

もちろん全てが完璧ではありませんので。
個人的に気になったのは、劇場からの電話に「お疲れ様です」なのかな?とか、電車を降りる時の座席と扉の位置関係があんまり馴染みがないかな?とか。
言い回しや言い方は細かい部分は普段の舞台でもそうですが、もっと洗練されて行くような気もしました。

ですが上記のようにクライマックスでしっかりしんどい思いをするほどの熱量は十分に伝わりましたので。だからこそ、何回も重ねたらもっとしんどくなる気もしました。演じる側もしんどいかもしれませんが笑

最後に


長時間とはいえわずか1日の間にてんこ盛りのイベント。超人見知りのためご挨拶は出来ませんでしたが、関わるみんながハッピーになれるように考えて考えて考えたイベントだと思いました。
この1/3の時間で倍の金額とるイベントや舞台は珍しくないですから、とんでもないことしてるかよーく分かります。老婆心ながら、やりたいこと詰め込んで全部やる脳筋というかゴリラ的思想(言い方)は男らしい反面、身体壊さないか心配でした。お身体に触らぬよう。。。
ですが、普段関わりのない私でもちゃんと充実出来るものでした。
おめでとうございます。

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