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帰省

 実家に帰省している。何度か書いたが、私の地元は分家の人間が本家の人間を殺害したかと思いきや本家の給仕が犯人でしたという事件が密室で起こるほどには寂れておらず、かといってコンビニが二軒並んで立っていてダサい奴はこちらのコンビニを使う傾向があるという文化があるほど栄えてもおらず、端的によくある車道の強い田舎と言えると思う。

 高校生の頃まで仲がよかった幼馴染は地元でちゃんとしており(この『ちゃんと』に一切揶揄はない)、しかしながらというかそれ故にというか、私が県外でだらだらしているという情報を私の親族ごしに聞きつけた為に、近年では彼の話す内容が私に対して軽蔑している感じを出す、になってしまっており、まともに話すことが叶わなくなってしまった。私はおっしゃる通り地に足ついておらず、ロールプレイしている人生感覚のため実際たいして軽蔑も効かず、細かなストレスに飢えてるので排他的なそぶりに少し助かる面もある。抗うつ剤を飲んでる時なら芯に効いただろうが、もう不定形であることに慣れすぎてしまった。しかしながら新年の挨拶とかしたいじゃないか。

 そんなわけで、上記とはまた別の幼馴染が地元の郵便局の局長をしているので会いに行く。特に用事もなく人に会うというのは大人になってからだと緊張する。そのため郵便局に封筒を買いに来ましたよ、郵便局の封筒はいいものですからねという感じで伺うのだが、年明けの忙しい時期というのもあり(おそらく)新卒の局員さんにコップのふち張力ギリギリの対応をさせてしまい申し訳なくなる。奥にいる幼馴染が私に気づき手を挙げ近づいてきて説明を引き継ぐ。局長局長と茶化せばそれこそ自分を今の年齢や土地から引き剥がしてしまうので下の名前で呼ぶ。封筒の話はそこそこに、いつまでこっちいんの、明日帰るわ、あけましておめでとう、というような話をして郵便局を出る。なんかこのやりとり探偵っぽくていいなと思い、一生このよくわからない状態でいたいとも少し思う。

 帰りに母校の小学校を横に眺めながら歩き、もしグラウンドに小学生の私を見かけたらゴールドオーブをすり替えたいなと思う。ドラクエ5の主人公が幼い頃の自分が持つゴールドオーブを偽物とすり替えたのは、天空城を浮上させるためではなく単純に幼い自分の持つゴールドオーブをすり替えたかったからだと思う。あけましておめでとうございます。

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