ベルクソン的時間を走る

 時間は空いたが、走ることのログを残していこう。書いてはいないが、毎日走っている。いつも長距離というわけではないが、1km以上は走っている。習慣だ。走れないのは基本腹痛が原因。そうでなければ、走るのは気持ちがいい。
 走るのは毎日1時間と決めている。先も言った通り、腹痛というイレギュラーを除いては。決まった時間何かをこなすことのほうが習慣化という意味ではいいのではと考えたからだ。走っていると爽快ではあるが、色々考える。もうベットでだらりとしたいなと思うこともある。そうなると、速く走ろうとしてしまう。しかしそれはまったく意味がない。意味がないどころか、逆効果である。速く走ったとして、1時間という時間は短くならないどころか、疲労のためより時間が長く感じてしまうからだ。
 僕はこの走るという時間を僕の内部で持続させている。それは決して、客観的に一意な時間ではない。無心で走っているときは溶けるように過ぎ去り、早く終われと願っているときはスローモーションになっているかのように感じる。

 そう、これはベルクソンに繋がる。走りながら音楽やラジオを聴いている。ゆる哲学ラジオを聴いていると、ベルクソン回だった。そこで砂糖水の例が出されていた。砂糖水が溶けるのをじっと眺める時間。客観的に見れば、ある一定の時間が経て均一に混ざっていく。しかし、それをいまかいまかと待ち望んでいるこの身にとって、その時間はなんともヤキモキする時間だ。僕たちは、その時間を生きている。客観的時間ではなく、何かが生きられた時間。
 知った口でベルクソンを語っているが、ベルクソン自体の本は読んだことがない。買ってはいるが積読状態だ。それでもベルクソンの話は入ってくる。また最近、「目がスクリーンになるとき」も文庫になったので買った。これはドゥルーズの「シネマ」についての解説書だが、ドゥルーズの影響元であるベルクソンについても多分に言及されている。どうやら、ベルクソンに触れるタイミングが熟しているのかもしれない。
 いつも僕にとっての読書は偶然が導いてくれる。それを大事にしたい。今はベルクソンが僕の前に立ちはだかっているようだ。しかし、レヴィナスというものも無視はできない。時間は有限だ。できる限り、やっていくか。かつては無理に幅広くいろんな知識を手に取ろうと四苦八苦していた。しかし、それが無益だということに気づいた。もう自分には限界がある。これはある意味悲観的だが、別の意味ではよい開き直りでもある。自分に関係あるものにだけベットすること。しかし重要なのが、自分にとって何が関係があるかを見定めることだ。これは難しい。しかし、見定めるのではなく、感じるというのが一番らしい。おそらく。

 ベルクソンにしっかりと対峙したいが、いまはレヴィナスの先約があり、時間が難しい。「ウィトゲンシュタインとレヴィナス」を今読んでいある。これ自体はレヴィナス自身の本ではない。これはウィトゲンシュタインとレヴィナスの宗教・倫理的考えについて比較・考証している本らしい。まだまだ途中ではあるが、なかなか読み進めるのは骨が折れそうだ。
 骨が折れそうと感じるのは、読み進めるときに感じるカチコチとした読書感ののせいだ。翻訳書だからか、学位論文がもとになっているからか、それともその両方か。原因はわからないが、こちらも心もなんだか硬直する。久しぶりに論文のようなものを読んだからか。しかし、なにかしら益することが書いてあるとは思う。ここは忍耐だ。自分の体をこの論調に慣らしていくほかない。
 いまは読み進めて5分の1程度。まだレヴィナスの出番はなく、ウィトゲンシュタインについてだ。この本の筆者の軸足はどちらかというとウィトゲンシュタインの方にあるらしい。レヴィナスの著作についての評価を留保する記述もあった。そのような人がどのようにレヴィナスを記述するのか。どのようにウィトゲンシュタインと接続させていくのか。今はそこに興味がある。じっくりと歩調を合わせよう。
 読書するという時間も、極めて個人的な生きられて時間だ。同じ本を読んだとしても、けっして同じ時間というものは生きられない。もっとラディカルに言ってしまえば、他人に生きられた時間というものが果たして生起しているのかということさえ怪しまれる。
 話が前後するが、また本の話に戻る。ウィトゲンシュタインと並列して出されるのが、ピュロン主義である。ピュロン主義とは、真理というものは知りえないから、そのことを受け入れ、あるがままに生きていけという主義主張のことである。そうすれば心の平穏、アタラクシアが得られるらしい。そのような哲学的態度と、ウィトゲンシュタインを並列して、類似点を述べている。もちろん多分に相違点もあるのだが、ウィトゲンシュタインにピュロン主義の要素が見られるということらしい。そこからどうやってレヴィナスにつながるのやら。ここはじっくりと腰を据えていこう。

 最後に簡潔に、ランニングログとして走行距離を記して終わりにしよう。
 9日目7km。10日目7.7km。11日目1.3km。12日目7.8km。13日目8km。14日目9.3km。

 今回はここまで。

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