失地回復

プロい野球選手の明日は厳しいというか、儚いというか、とにかく安住でいられる時は短く、1年で逆転、元も子も無くなる。それをこの正月身に染みて感じているのが阪神の青柳晃洋投手だ。

 平成28年ドラフト5位で入団した。指名順位からみて即戦力を期待されたわけでは無く、3、4年先に目標が置かれた。その意味では4年目に9勝、翌年7勝、そして6年目13勝は順調以上の歩みで7年目も連続13勝、2年連続、最多勝、最高勝率のタイトルを獲得した。押しも押されぬエースに成長、その意味では昨年3月31日、DeNAとの開幕試合先発は誰もが納得だったが、この試合勝利投手にはなったが5点もらいながら5回3分の2で降板した。

 その後も調子は上がらず5月に2軍に落ちた。戻ってきたのは約2ヶ月後の7月だって。この長い離脱について後日岡田監督は「調子を取り戻すのが目的では無かった。根本から治そうと考えた」と話した。

 青柳は上手と横手の間へんから投げる投手だ。こんな投げ方の投手は唯一無二で制球は容易でない。ただ球に力はあった。誰が直したのか、我流がいい結果につながったのか内角に行く直球がストライクになり打者が手を焼いた。それが4年目からの勝ち星につながった。

 ところが昨年青柳の直球に力がなくなった。勝てなくなったのはそのためで「調子を取り戻す事だけが目的で無かった」2ヶ月の2軍は原因をみつけるための期間だった。

 7月に1軍復帰、最終的に8勝したがシーズン終了後「1年間ずっと納得のいく投球が出来無かった」と唇をかんだ。今季順調に1軍登録日数を増やしたら国内FA権を取得出来る。大山も同様でその大山に球団は昨年の契約更改で複数年契約を提示したが、青柳は単年だった。昨年の投球では仕方ない。自身の価値は自身の右腕で取り戻すしかない。そのためには連続13勝をもたらした球威の復活だ。

 1昨年のオフ、2軍2年目、1軍で勝ち星の無い村上に乞われ自主トレ、聞かれたら答えた。その村上が昨年10勝した。ほかに伊藤将、才木も成績を伸ばした。自分の立ち位置がかわった。「良い選手が多い。昨年はその前の年の実績で投げさせてもらったが今年はそうはいかない」。

 プロ野球は怖い世界だ。

令和6年1月3日

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