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FF14TTRPGが予想以上によかった話

先月FF14TTRPGスターターセットが発売された。
自分も早速購入したのだが、つい先日GMでプレイすることができたのでざっくりとした感想を書いていこうと思う。

三つポイントを先に書いておくと、
・既存のTRPGで感じることが多い細かいストレスを解消しており、想像以上にプレイフィールが良い。
・TRPGの構築要素を大幅にオミットすることで、キャラクターの個体差が減っているため戦闘バランスが非常に良い。
・原作の再現度が高く、それが他のシステムではあまり見られない要素なので新鮮さも感じる。
である。

そもそもFF14TTRPGはD20システムを採用していることで、前評判において何かと同じD20システムを採用しているDnDと同一視されがちであった。
しかし、実際にプレイしてみたところ全くの別物であると感じたのでその辺りにも触れていこうと思う。少なくともFERAゲーの各種SRS系タイトル群や、冒険企画局のサイコロフィクション系よりは遥かに差別化されていると言っていい。

なお、筆者はFF14は旧の時代から知っており、蒼天まではプレイしていた。TRPG自体は20年近くプレイしており、その中でDnDに関しては5eは狂ったようにプレイしていたがそれ以前の版はあまり詳しくないためご承知おき願いたい。


・プレイしているときの細かいストレスの解消

実際にプレイしてみてここが良かったと感じた所を具体的に挙げていこう。

・攻撃の命中判定にミスが存在しない

FF14TTRPGの攻撃判定にはミスが存在しない。
判定ベースこそDnDのACシステムではあるのだが、攻撃を宣言した時点で攻撃に使用したアビリティごとに一定の効果が保障されるようになっており、(最低保証値→しきい値を超えたときの効果→クリティカル時の効果)
の三段階で効果が変化するようになっている。
これが従来のTRPGでは
(効果なし→しきい値を超えたときの効果→クリティカル時の効果)
となっていることが多く、攻撃命中判定というものはオールオアナッシングであることが殆どであり常識であったのだが、FF14TRPG方式は非常に快適であった。
実際、TRPGの戦闘において攻撃をミスするということはかなりのストレスを伴う。TRPGでは長い戦闘ラウンドを想定しているゲームは少ないように思われ、大体のゲームにおいて2~3ラウンド程度で決着することが多く、それ以上のラウンド数がかかる戦闘はキャラクターのリソースが持たないか、特殊なシチュエーションであることが多い。そして大体のゲームにおいて1ラウンドに自キャラが行動できる回数は1回である。その1回の行動がミスによってなかったことになるというのは、戦闘中33%~50%は自分は何もしていなかったと感じることになる。これは面白くないだろう。
その点、FF14TTRPGは自分の行動で(仮に攻撃ロールの達成値が足りなかったとしても)何らかの影響を場に与えることができたと実感できるため、従来のTRPGに比べてミスという事実に対して受けるストレスが殆どないと言ってよかったのはとても良いポイントであった。

・先行は常にプレイヤー側から

FF14TTRPGにはイニシアチブ値、先制値、行動力などシステムによって呼び方は様々だが、それに準じる行動順を決めるステータスは存在しない。
常にプレイヤー側から行動を行い、プレイヤーの行動が全員終わったら敵が動くというシステムになっている。
これも従来のシステムには殆ど見られないものなのだが、結論としてはメチャクチャよかった。
まず、戦闘が圧倒的に時短になると感じた。戦闘ごとにキャラクターの行動順が毎回変わったり、敵と味方の行動順が入り乱れているようなシステムはハッキリ言って煩雑でありGMに優しくない。行動順を細かく管理し、敵と味方が交互に行動するような戦闘の方がタクティカルさを演出できるんじゃないかと思っていた時期もあったが、正直まとめて陣営ごとに行動してもらった方がお互いに負担も少なくプレイヤーが集中できるため、結果としてより連携も取れタクティカルな戦闘になる。
これはSW2.5系が割と近い陣営手番システムを採用しているが、SW2.5のシステムには問題があり、"確実にプレイヤー陣営が先行になれるわけではないにも関わらず、戦闘バランスがプレイヤー陣営が先行を取ったことを前提として設計されている"ことである。そのため、何かの間違いでGM側が先制を取ってしまった場合、PCはあっさりと全滅することになる。
それを避けるには、①急に敵の知能が下がったかのように手加減を行う②PCが後攻になるかもしれないということを見越した戦力配置にする③増援などで1ラウンド目から最大戦力にならないように配分するなどの方法があるが、①はプレイヤーにバレて萎える。悪手なのでやらない方がいい。②は安牌ではあるが基本的にPCは先行を取れるものなので、プレイヤーからするとあまり緊張感のない"ヌルい"戦闘が続くと感じるだろう③はスマートな方法だが、全ての戦闘で考えないといけないのは負担が大きすぎる。
と、結構な問題を抱えていたわけだが、FF14TTRPGではこれを思い切って確実にプレイヤー陣営が先行を取れるようにしたわけである。
これはプレイヤーにとってもGMにとってもメリットがかなり大きい。
プレイヤーにとっては確実に自分の手番が回ってくるのは嬉しい。誰だって手番を行いたいし先に敵に殴られるよりは先に敵を殴りたいのだ。
GMにとっては確実にプレイヤーが先手を取ってくれるので、それを前提として戦闘バランスを設計できる。特に前項で説明した通り、TRPGの戦闘は戦闘ラウンド数が比較的短いことが多い。戦闘ラウンド数が短ければ短いほど行動順が自分の手番数に与える影響が大きいため、ここを均一化するのは非常に英断だったといえる。

構築要素のオミット

戦闘システム面でもだいぶ思い切ったことをしているが、これもまただいぶ思い切ったことをしている。FF14TTRPGでは(少なくともスターターキットの範囲では)レベルアップによるキャラクターの成長は固定であり、武器防具アクセサリーと言った装備品の概念は存在しない。書き方を見るにたぶんスタンダート版でも同様だとは思う。
この辺りがどうも受け入れられない層が多いかなという気がする。キャラクター構築こそがTRPGの花でありメインであり一番楽しいところだと思っている層は特にそう感じるだろう。
ただ、実際にプレイしてみての感想を言わせて貰うと、こっちの方が良かったといえる。
選択肢のある構築は楽しい。楽しいが考え出すと時間がかかる。特に初プレイのシステムなどは尚更である。FF14TTRPGはキャラクターシートを配るところから実時間4時間ちょっとでシナリオが1本終わっていた。またその間に戦闘は3回できている。
これが従来のオールドシステムだと戦闘1回できれば十分なぐらいの時間だろうし、構築に時間かかるゲームだと下手したらさっきキャラクター作成終わったところなんてこともありえる。
どっちの方が総合的な満足度が高いかと言われると人によるだろうが、自分は前者だった。
この成長による選択肢がないというのは原作通りであるし、また選択肢を減らすことで先ほども言ったキャラクターの個体差を減らすことに繋がっている。キャラクターの個体差が減るとシナリオの強度が上がり戦闘バランスが洗練されることに繋がるため特にGMを頻繁にするような人には嬉しいだろう。
また成長による選択はないが、別にできることが増えないわけではない。寧ろ戦闘中にできることは成長によって大幅に増える。クラスを変えるだけでもプレイ感が大幅に変わるし、同じクラスであってもレベル帯が違うとプレイ感が全く変わるので、どのクラス、どのレベル帯でやるかによって色々な楽しみ方ができるであろうと感じた。

原作の再現がTRPGとしては新しいシステムになっている

これまで述べてきたように、FF14の原作再現を忠実に行っていることによって、従来のTRPGシステムからはちょっと外れた感じになっている。
しかし、その原作再現によるTRPGシステム化が結果としてTRPGの実プレイを行う上でストレスフリーな要素となっており、このFF14TTRPGのシステム設計に関わった人たちの思いみたいなものが随所に感じられてとてもよかった。"攻撃予兆"のルールもFF14やってれば簡単に理解できるけれど、他のTRPGシステムには殆ど見かけないルールでとても新鮮に映るだろうし、"敵視"のルールもログホラTRPGなんかではあったりするけどあまりメジャーではないルールだし、これがあることで盾役が味方を守っている感を出せたりするので良いシステムである。ここまで書いててめちゃくちゃ褒めてしかいないな。今さらですが別に回し者じゃないです。スクエニさんから一銭も貰ってません。

まとめ:短い時間でもタクティカルな戦闘を複数回楽しめるシステム

色々書いたがこういうことなんだと思う。
独自の設計は殆どが時短に繋がっているものか、キャラクター毎のブレを抑えるものになっているし、それによって本家FF14のような良質なバランスの戦闘が生み出しやすい土壌が生まれていると感じた。
またプレイヤーが受けるストレスを減らしながら時短化に成功しているため、複数回の戦闘も比較的簡単にこなせるのも嬉しいポイントだった。
今後発売されるスタンダートルールブックやシナリオ集なんかで、蛮神戦やレイドコンテンツとかもカバーされると嬉しいなぁと期待が広がる良作でございました。

あ、最後に一つだけダメ(?)なポイントを。
シナリオの報酬は前金レベルの現物支給だけじゃなくてそれに加えてお金を提示してあげてもいいんじゃねぇかな…(現状使い道がないとしても)


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