セルフネグレクト考(自分の反省も含めて)

我が家にはテレビを置いていないが、TVerで久しぶりに見たテレ東の「家、ついて行ってイイですか?」に登場した女性が見事なセルフネグレクトで感心してしまった。同時に、今後いくらでも良くなっていける希望みたいなものを彼女から感じ取って、それはどうも私自身の今後を考える上でもヒントになりそうな気がした。

番組に登場したのは(ヤラセでないなら)54歳で体重100kg超あるという独身女性。ツインテールのややロリータ風の格好だが、明らかに細部が雑で、自身のメンテナンスには興味がなさそう。亡くなった両親の遺産のおかげで不労収入が毎月50万円。住まいは高級マンション。けれど一歩入れば生ゴミこそないらしいがそれ以外のモノで溢れかえり、床は見えず、廊下には人ひとりがやっと通れるような獣道ができている。糖尿病のようだが食事制限ができていない様子。何やら自暴自棄な気持ちになってしまって、生活の基盤を整えることができないんだなと思って見ていた。わかるような気がした。私も何度も経験した、あの鬱のような気分に近いのではないだろうか?私の場合精神状態に関わらず部屋は常に人並み以上にキレイにしており、食べるものにも手を抜かないでいるんだけれど、油断すると何もかも自分の人生が丸ごとどうでもいいような、生きる意志が抜けていってしまう時がある。ずっと昔から。

件の女性はインタビューの中で、思春期を通して母親の介護をしてきたこと、家業も手伝ってきたこと、それとの両立が困難で大学を中退したこと、母親の死後は父親も要介護となり、やがて他界したことを語る。一人になった寂寥感を埋めるために物を集めている、今はペットのウサギに幸せをもらっている等々。
この人は疲労の果てに家族を失い、自暴自棄というか、もうどうでも良くなってしまったのだろう。子供時代を子供らしく過ごせなかったために、今更経済力と時間の自由を手に入れて自分と向き合う余裕が生まれても、怖くて向き合えない、どうしていいかわからないのかもしれない。

セルフネグレクトとは、とどのつまり、自己愛の枯渇により自分自身を粗末に扱うこと。不毛な人間関係に甘んじる、体に悪いものを摂取する、危険な行為を繰り返す、あえて生活の安定や健康、快適さを脅かすことをする。ポイントは自分自身に対して投げやりな気分になるというところで、それがひどくなると自身を敵対視し攻撃する人格が育ってしまうのだと思う。ちなみに私も今、そんな状態の非常に浅い入り口に片足を突っ込んでいる。よくあることなので、またかという感じ。

逆に心身ともに元気いっぱいで自分を愛せていると、大切な自分、大切にされるべき自分のために、居心地の良い清潔な環境を用意し、たとえ稼ぐ必要がなかったとしても、能力を活かして生産性のあることを(生きがい・やりがいを感じるために)してみよう、と志向する。自ずと自分を守りながら、丁寧な暮らしとか幸せな人生に向かっていく。

ただこの女性、喋る様子を見ていても、心がピュアというか、変にこじらせてはいないよう。私の脳裏に、このゴミ屋敷をどうにかして改善して楽になっていくイメージが広がった。この方は働かなくてもお金はあるんだし、何かしら生産性のあることをすれば、あっという間に健康な方にギアが入りそう。そのきっかけになるのは、些細なことだと思う。
例えば好きな世界観のコスメブランドに出会う、その商品を実際見てみたくて店舗へ行く。化粧が楽しくなって凝り始め、せっかく化粧したのだからと外に出るようになる。ある日ふと入ったカフェの店員さんが好みで、つい通ってしまうようになるとか。人形が好きだと言っていたので、自分の作品を作り始めることで、作業スペースを確保したり、人間関係の輪が広がっていくとかもあるかな。そして興味が外へと向く中で、少しでもいいからアルバイトなり何なりを始めるのがベスト。

外の世界と繋がり直し人との交流が増えるとエネルギーの循環が良くなり、物理的移動も伴うので、まず痩せていくはず。寂しさも紛れるので、食べる量が減る。暴飲暴食さえしなければ、糖尿病は改善されるだろう。体が軽くなると、体を動かすことが億劫でなくなるので、ますます動けるようになり、さらに痩せるという好循環が生まれる。そのタイミングで運動習慣をつけるのが理想的。100kgもあれば数キロは簡単に落ちるし、素早く動けるようになると室内の大量の物が邪魔になり、片付ける気になる。片付けるのも運動になる。一旦火がつくと床が見えるまで片付けたくなり、床が見えたら掃除と整理整頓が始まる。サイズダウンしたことで新しい服が欲しくなり、衣類の断捨離が始まる。あの物で溢れたトイレと風呂が片付き、二日に一回だった入浴が毎日になる。ここまで来るとメンタルも改善し、やたらと物を買わなくなる。片付いて面積の広くなった鏡で自分の姿を見て、美容院に行く気になる。スペースができるのでウサギの餌やフンも場所を決めて管理するようになる。ゴミ出しもする。生活のサイクルができる。職場でもイキイキした様子が周囲に伝わる。すると人に好かれて交友関係がますます広がる。お誘いが増える。恋愛もするかもしれない。パートナーや友達を家に招けるように、家はきれいに保つだろう。ここまできたら多少の出来事で気持ちがアップ&ダウンすることはあっても、自分軸で舵取りをしながら対処する力が付いているはずなので、元の生活に戻ることはない。
もっと加速度的に飛躍するシナリオだって可能だ。今まで自分を全く顧みていなかったんだから、ちょっとでも自分を愛し始めたら、いくらでも上昇できる。少し外に出てみるだけでいい。若さは多少失ったように感じられるかもしれないけれど、他人と比べなければ大丈夫。むしろ伸びしろしかなくて羨ましいくらい。

さて、翻って私。さすがに生活の基盤は最低限確保しているし友達も家に招けるほどきれいにしているが、前職のストレスと、これまで自分を苛んできた妙なこだわりに疲れ切ってしまって、どうにもやる気が出ない。おそらく燃え尽き症候群が長引いている。必要最低時間数だけ働き、毎日を夏休みのようにふわふわと好きなように過ごしている。本当はこのモラトリアムを抜けて現実社会の中でスケールを拡大していきたい。あっという間に年寄りになってしまいそうで怖い。でもそこから目を逸らしている。ちょうど番組の彼女が食事と健康のことから目を逸らしているように。だから彼女を通して自分の方向性を探るなら、とにかく何か興味あることを見つけて、それに素直に向かっていくのが良さそうだ。ちょっとしたことで歯車が上手く噛み合って前進に向かえるはずだ。

とりあえずは、今の自分、お疲れ様。疲れ切って、身を守るためにモラトリアムに入ったようなものだから。日々この世の中で生きるのは、私にとって決して楽なことではない。納得のいかないルールや仕組みの中で、搾取・利用しようとする人から逃れ、境界線を超えて入ってこようとする人を押し戻し、嫉妬のエネルギーをかわし、ないものは奪えないからと全てを一旦放棄した。そして本当に投げやりな気持ちになった。でもそんな理由で消極的な生き方をしていてもしょうがない。ポテンシャルを溜め込んだ上述の女性の姿を見て、そろそろ私も復活しようじゃないかと思った。一度きりの人生楽しくやろうよと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?