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思うこと

職場に知的障害者の男性がいるんだ。

その人、色んな人に話しかけていて僕にも話しかけてくる。

それがまあ会話にならないんだわ。

相手の言ってることよくわかんないし。

もう相手にするのも疲れるから最近はその人が近寄ってくると逃げているんだよね。

そうやって逃げているとき、ひとつの思い出が蘇ってくる。



小学生の2年生くらいの時のことだ。

クラスに知的障害の男の子がいた。

僕はその子と背の順が近かったこともあって、遠足のときなんかに面倒を見させられることがしばしばあった。

あるときどういう流れかは覚えてないけど、放課後に遊んだことがあったんだよね。

その子の家で遊んだあと、自転車に乗って一緒に出かけたんだ。

自転車で公園に向かって走っていたら、道端にバッタがいた。

小さなバッタ。

よくみると1匹じゃなく何匹もいた。たくさんいた。

僕たち二人はそのバッタを捕まえることに夢中になったんだ。

バッタを捕まえるんだから、虫かごが必要になる。


僕は言った。

「虫かごを持ってこよう」

知的障害の子が返答する。

「僕の家に虫かごあるよ!」

「うん、でも僕の家の方が近いから、家から持ってこよう!」

「僕の家にある!僕の家から持ってこよう!」

「いや、家の方が近いから……」

こんなやりとりを100万回くらい繰り返した。

「はぁ……わかった。君の家から持ってこよう。」

そう返答した僕は、知的障害者の子の家に一緒に向かう振りをした。

そして隙をついて逃げた。

疲れたんだもん。

罪悪感とかはなかった。不思議と今もない。


翌日、学校に行くと朝一番にその知的障害者の子が

「昨日は一緒に遊んでくれてありがとう!」

って僕の席まで言いに来た。

お母さんに「ちゃんとお礼を言いなさい」って言われたんだろう。

僕はただ一言

「うん」

って返答した。


職場の知的障害者に話しかけられる度に、あの日の記憶が蘇る。

あの子、今どうしてるんだろう?


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