葛藤

「凡人が天才に追いつくためには、天才の10倍努力しないといかん」
オーケー、その通りだ。では、凡人なのに10倍努力するための時間すらもなくなってしまったら?
諦めたほうがいいのかな?

この歳になると同年代で集まっても子育てしてる人と子供いない人で話が噛み合わなくなってくる。俺も子供いない頃は23時まで仕事して帰ったら日が変わってるとか普通にやってた。その時は17時に帰っていく人を見て「マジか、そんなんで仕事進むのかよ」と内心思っていたことは告白しなければならない。そして今俺がその早く帰る側になってしまっている。子供いない人はまだバリバリ働いていて、寝て食べる時間以外は全部仕事に捧げるみたいなやり方してる人もいる、そうしなければ世界についていけないと。そうなると俺はどうなるのかな。「子供がいるから早く帰る」という話すると子育て大変ですね、子供いるのもいいですよねって話合わせてくれるけど、目が笑ってないぜ。きっと昔の俺と同じ気持だろう。

子供がいたとしても仮に奥さんが専業主婦で旦那の仕事を全力で支えてくれるタイプなのであれば仕事に全振りした生活をできるかもしれない(実際そういう人もいる)。そういう人が何かしら受賞とかしたなら「支えてくれた妻のおかげです」とか言うんだろうけど…そもそも自分の人生だけでなくパートナーの人生も捧げないと達成できないようなやり方って望ましい仕事のあり方なのか。100人いて100人ともがそれを目指さないといけないものなのか。仕事に人生全振りしないと達成できないものはある、そうしなければ見えない世界もある。見えるけどたどり着けないこともある。それは知ってる。世界中どこに転勤になってもついてきてくれて支えてくれる奥さんがいたらそりゃあ楽やろう、でも俺はそうでない人生を選択してしまった。普通の車でF1カーにかなうはずもないのに、同じサーキットに足を踏み込んでしまった。天才みたいな人はたくさんいるんだ、そういう人は天才なうえに更に死ぬほど努力している。子供いないのかな?って思ってしまうよね。ああいう人たちが、子供が熱出して急遽退勤する姿とか想像できない。子供が熱出してても海外出張とか普通に行きそうに見える。実際、仕事に邁進するために結婚や子供を諦めた人も知ってる。俺も「そういう人」になる道は選べたが、でもそうじゃない方を選んだんだ、それは自分の意志だ。自分ひとりじゃなく、妻や子供たちと一緒に人生歩むんだ。

子供がいるのは楽しい。一緒にいるだけで幸せになる。踏切で電車が通り過ぎるのを見るのが楽しいなんて感覚は子供できる前は想像もできなかった。妻と共働きしているおかげでよい家も買えた。外食も気軽にできる。もう幸せじゃん?それで仕事での成果まで独身並みに求めるのは贅沢、ないものねだりなのではないのか。もう諦めたら?Jリーガー全員が海外移籍目指さなくったっていいんだよ。そんな心の声も聞こえる。だいたいしんどい。これでも趣味はほぼ諦め、サッカーも見ないし映画も見ないしゲームもしないし漫画もNetFlixもみない。庭仕事はちょっとやってるけどほとんど世話できないから全然育たない。自分の時間全部仕事と子育てに使っていると思う。それでも全然足りない。趣味の楽しみを諦めて死ぬほど頑張ってそれでも周りに追いつけない、プレッシャーと劣等感がすごい、つらい、そんな生活を10年以上してきた。それをこれから更に何十年もつらいつらいいいながら続けて、そんで人生終えるのか、それって幸せなのか、もっと楽なおだやかな生き方もあるんじゃないのか、そんな疑問も最近は湧いてきたんだ。でもさ、この業界で成功したいと死ぬほど努力したけど叶わなかった奴らもたくさん見てきたんだ、俺が過ごしてる今日はそいつらが死ぬほど生きたかった明日なんだ。そいつらの屍を踏みこえて生きてるんだと思えばそんな生ぬるい気持ちでこの仕事はやってられないんだ。自分も力尽きるまで全力で頑張らないといけない義務があるよね。そんで俺が死んだらその屍を次の奴らが越えていくんだ。越えていってくれるのが息子たちだといいな。

俺がやってるのは新しい分野だから、他の人と仕事も同じではないし、それなら生き方も新しく共働き子育てスタイルで、ロールモデルの新境地を切りひらいていけばよいのではないか。頑張ってりゃ何とかなるはずさ。


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