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島の冬食材① クシティ

クシティ。耳慣れない言葉だと思います。
八重山の言葉というより、与那国島の方言です。野菜の名前です。
かの地では昔から栽培され、旬の今の時期には島中この葉の香りに包まれるとか。
スペイン語でシラントロ。英語でコリアンダー。和名はなんとカメムシソウ。タイ語でパクチー。そう、香草(シャンツァイ)の事です。

和名にあるようにカメムシの匂いに似た強烈な香気ゆえ、好き嫌いの極端に分かれる食材ですね。
嫌いな人は口に入れるどころか、そばにあって匂ってくるのさえダメ。これだけは一生どんなことはあっても食べれないと思ってる人も多い。
逆に好きな人はとにかく尋常じゃないくらいに好きになる人が多い。まず例えば、洒落た料理にちょろっと香り付け程度に乗ってるなんてのが許せない。丼に山盛り持ってこいやあ、となる。とにかくなんにでもこれを入れたがる。タイ料理、中華、メキシカンなんていうエスニック系はもとより、和食というか、普段飯でも全部これでいける。納豆、味噌汁、卵焼き、なんにでも入れたがり、なんだったらご飯にかけて醤油でもたらしゃ3杯でも行けるねとか、まあ言い方は良くないが完全に中毒者という人も少なくないのであります。
でもってですね、僕、実際に何人か知ってます。「一生食べない派」から「飯にかけて食える派」になっちゃった人。
なんか一度ピンと来ちゃうとどんどん深みにはまって抜け出せなくなるかなり危うい魅力があるんだよね。嫌よ嫌よもも好きのうちというか。(ちょっと違うか)
かくいう僕もじつはその一人で。
食べれないというんでもなかったけど、どっちかっていうとなんか嫌な匂いだな、いらないなコレって感じでした。
それがガラッと変わったのは、ずいぶん昔の話だけどエスニック料理ブームみたいなのあったじゃないですか、80年代の終わりくらいに。その頃に知ったナンプラー(ニュクマム)、ニンニク、唐辛子の強烈な味の組み合わせが文字通りカルチャーショックで。でそういう味にパクチーってめちゃめちゃ合うじゃん!ってなって。この新しい味との出会いというのがとても新鮮で。それまで嫌いだった食べ物が食べれるようになるって、なんか大人になった気分というか。まあ、すでにそこそこ大人ではありましたけどね。
でもってそれからはもう中毒者。やっぱりその頃に慣れ親しんだんで、タイ語というローカル言語にもかかわらず、このハーブの呼び名はパクチーがなんか一番しっくりきますね。

石垣島で居酒屋を始めた時も、沖縄には気候的にもハーブやスパイスの強烈なアクセントを効かせた料理が絶対合うはずと思い、エスニック系のメニューも積極的に取り入れたのですが、最初はパクチーがなかなか手に入らなくて往生しました。スーパーでほんの少量で200円もするのを買って、けち臭くちょろっと乗っけて。。。
そんななか夏の開店から半年もした頃、お客さんの誰かが「パクチーだったら今の時期、ユーグレナモールの脇を入ったとこの台湾のオバァがやってるマチヤァに行けば山ほどうってるぞ」という話を聞いて半信半疑で行ってみるといやびっくり!
ほんと一抱えもあるブーケ状のパクチーが無造作に店先に置いてあるのでした。しかもその大きな1束が百円だという。嬉しいよりも驚き呆れましたね。今まで買ってたあれはなんなんだと。でどうやら、与那国から持ってきてるらしいという話もそこから聞きました。
で、いまは農協の市場ゆらてぃく市場で時期になれば石垣産のものが普通に並ぶようになりました。最初はやっぱりブーケみたいな大きな束で売ってたけど、普通の家庭では使い切れないということなのか、それとも結構売れるぞ、コレということで小分けに売るようにしたのか、サイズがだいぶ小さくなってしまったのは残念ですが。まあそれでも内地の高級スーパーで買うのよりはべらぼうに安い。
でもやっぱり冬場限定の売り物で、11月ぐらいからせいぜい4月くらいまでかな?夏場は取れないみたいなのです。暑さに弱くて育たないという。でもタイとか沖縄より暑いのに通年で取れてるよね?なんでだ?という疑問もあり、まあ実際夏に収穫できるよう種を撒いたりしてみたんですが、やっぱ育たないんですね。もしかして島のは種類も少し違うのかな。島で取れるパクチーは内地産のに比べて色も薄く、茎も細くて葉も小さく柔らかで、香りもそれほど強烈ではないんです。
でも食べるととても食べやすくて美味しい。かなりやみつき度が高いパクチーなんです。

そういう訳で島では冬野菜のパクチー。
沖縄+エスニック(タイ料理風)な迷亭風にアレンジしたパクチーレシピのご紹介。
例えば本場(?)与那国ではパクチー(クシティ)は刺身の付け合わせでもよく食べるみたい。あと小さくて辛い島唐辛子やシークワサーとかの柑橘類も薬味にして食べたりします。この島唐辛子の強烈な辛さで刺身というのがなかなかなんですよ。ワサビとはまた違う美味しさ!
なのでちょっとそんなものもあわせてエスニック風にアレンジしたマグロの和え物などどうでしょうか。

【マグロのタイ風ユッケ】

材料:
マグロ パクチー 島唐辛子 ゴマ ナンプラー レモン にんにく ゴマ油 卵黄

マグロをぶつ切りにして、種を取って細かく刻んだ島唐辛子、刻んだパクチー、ゴマ、おろしたにんにく(少量)、ナンプラー、オリーブオイル、レモンのしぼり汁と一緒に和える。皿に盛り付け、卵黄を乗せる

えー、レシピというほどでもなかったな。島唐辛子は一味で代用可。レモンは沖縄ならシークワサーの方がいいんじゃないの?と言われそうですが、残念、沖縄ではちょうどパクチーが出始める頃にシークワサーはオレンジ色に色づいてあまり美味しくなくなってしまうのです。
さらにこれに納豆を入れちゃうなんてのもあり。でもって丼飯に乗せてかっこむ!無茶苦茶美味いです!

もう一つ。これもレシピというほどではないんですが。
沖縄にはヒラヤーチという食べ物があります。平たく焼いたもの。小麦粉を水で溶いた生地に具を入れて焼いた。薄いお好み焼きのようなものです。居酒屋でも島酒のつまみに、ちょっとしたご飯もの代わりに、人気があります。
それをパクチーを使ってタイ風に。

【パクチーと豚ミンチのヒラヤーチ】

材料:パクチー、豚ひき肉、小麦粉、餅粉、ごま油、スイートチリソース、醤油、みりん、砂糖。

①豚ひき肉を炒め、醤油、みりん、砂糖で甘辛く味つける。
②小麦粉3:餅粉1で合わせて、その粉に等量より少し多めの水で溶く。
③②の記事に豚ひき肉と刻んだパクチーを入れてゴマ油を敷いて温めたフライパンに流し平たく伸ばす。
④両面焼いたら食べやすい大きさに切り分け皿に盛り、スイートチリソースをかけて食べる。

最後にもう一つちょこちょこっと。

【パクチー味噌汁】

出汁に甘めの白味噌(沖縄だったら好みですがいなむどぅち味噌でも)を溶いて味噌汁を作り椀に持ってから、刻んだパクチー、ごま油少々、ゴマをぱらり、一味唐辛子かなり多め、ふりかける。

石垣島の冬はどんより曇り空の時が多く、あまり観光向けとは言えないのですが、パクチー好きの人だったらパクチー料理を置いてある店を探して(迷亭とかね)パクチー三昧という楽しみ方もありかな!?
この後も度々ご紹介するつもりですが、島の冬は意外にも野菜の美味しい時期なんです。内地の夏野菜が大概こちらでは冬が旬とか(笑)なので冬の沖縄の楽しみは美味しい野菜を食べること、なんていうのは観光のキャッチフレーズにならないかしらん。

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