おせちしながき

おせち、おぼえがき。

毎年恒例の「迷亭のおせち」。すべて手作りで、島の素材を使い、伝統的なおせち、沖縄の祝い膳料理、迷亭オリジナルをミックスした創作おせちということで、毎年限定20個作って販売してます。

能書きは偉そうですが、僕は和食のちゃんとした料理屋さんで終業した経験があるわけでもなく、おせちの料理のノウハウもほぼ書籍やネットのレシピ頼りで、そこに少しづつ自分なりの工夫を加え、手作りにだけはこだわりながら、去年よりも少しでもいいものをと思いつつ作ってはいますが、それでもお客様にお渡しする時は不安な気持ちでいっぱいです。正直に言えば毎年同じように、あーすれば良かった、こーしたほうが美味しかったんじゃないか、そんなことばかり思います。この料理は去年はもっと美味しくできたのにぃ、とか。いやそれじゃダメだろ(苦笑)

なにせ一年に一度のことなので、仕事の流れは覚えていても、ちょっとした細かいことで忘れてしまうことなど多々ある。毎年同じレシピを参考にしてもその時々の工夫など、記録してなかったりする。

んな訳で今年の年末にこそそういうことのないように、ちょっと細かい覚書を書き出しました。手書きで帳面にかたっぱしから、書き殴ったので、それは僕だけの参考書ということで、もう少し整理した形で他人様の目に触れても大丈夫なとこだけ(それでもこれ書いちゃわないほうがいいかなという箇所もありますが)こちらの方にも残しておこうかなと思います。

普段のお料理のレシピというわけでもないので、あまり面白くないかもしれませんが、もし迷亭のおせちを召し上がっていただいた方なら、あーあれのあの味はそういうことなのねー、などと思っていただけるかも。またご家庭でおせちを作る方(特におせちの習慣がない沖縄にお住いのかた)にも多少の参考になるかもしれない、と思っています。

まずは一の重から

【いくらのしょうゆ漬け】

・まず忘れてはいけないのは、生の筋子は10月から11月中までの非常に短い旬の間でなければ手に入らないということ。スーパーに行けば時期には並んでるというわけではないので(沖縄では)注文を忘れないこと。

・今回味付けはかえし醤油に煮切り酒を足したものにつけました。かえし醤油は醤油に砂糖をみりんを加えて寝かしたもの。旨みが強くて味は良いのですがおせちに入れるには色がやや濃すぎる。来年分は白醤油を取り寄せてやってみよう。

・菊芋(血糖値を下げるということで話題の健康野菜。生食出来る。)をなますにして一緒に和えてみたんだけど、お酢の味がちょっと余計だった。色止めと保存のつもりだったんだけど。山芋の賽の目を軽く湯掻いたもので良かったかも。

【きんとん】

・芋は石垣産の金時芋を使用。とても美味しい。ペースト状にする時プロセッサーのみでやってしまったが、ちゃんと裏ごししないと若干粒が残ってしまった。鍋で練るとき、水飴の代わりに栗の甘露煮のシロップを使用。さっぱりした仕上がりになる。あと島では色付けのくちなしの実が売ってないので取り寄せになる。注意。

・栗は豪華なつもりで丸一個で合わせてしまったが、半分もしくは三分の一の方が食べやすいね。茶巾絞りにして上に飾ったのはピンクペッパーとモリンガパウダー。

【島大根、島人参、島たこのなます】

・これは石垣ローカルの話ですが、毎年冬場は生のたこを買いに伊野田の大嶺商店まで行くのですが、今回行ったら店のオバァから「今日はないよ」という無情なお言葉!遠いんだからちゃんと確認してから買いに行こう。で結局、真喜良の商店で、茹でてあるものを購入。これもお知り合いに教えてもらったのだけど、ここの島たこは茹で具合が絶妙でとても美味しいのです。

・人参は金時人参と金美人参を使用。どちらも石垣産。香り付けと彩りで長命草も加えました。柚子を加えようかとても迷ったのですが長命草の香りを生かしたくてあえて入れず。でも入れたほうがよかったかな。石垣島で作られてるきび糖と京都の千鳥酢、シママースでシンプルに味付け。

【美崎牛のローストビーフ】

・美崎牛のランプを店の冷蔵庫で二週間ほど熟成してから使いました。いわゆる炊飯器を使った真空調理で作りました。出来上がりから冷水にとって粗熱をとりそのまま冷凍。盛り付けの前の晩に冷蔵庫に移して解凍、切り分け、盛り付けというプロセスでお出ししてます。かなり気をつけて工程は管理してるつもりですが、やはりどうしても出来上がりのきれいな色のままで長くは持たないし、中心部まできっちり温度は上げてはいます(65℃)が、傷みも気になる。やはり豪華さでは劣るけど島豚の叉焼のほうが安心で美味しいかも。

【車海老の古酒蒸し】

・車海老は石垣島産。崎枝の養殖場にあらかじめ電話してから直接取りに行くと配達よりかなり安く買えます。

・大きな鍋に八重泉の黒真珠をどばどばいれてそれにかえし醤油をあわせ、香りの生姜スライス、鷹の爪、八角(ほんのひとかけ)を加えます。買ってきたばかりの活きた車海老をどんどん放り込みます。もちろん一回一回蓋をしながら。大暴れしますが、すぐに大人しくなります。かなり残酷。2時間くらいつけたのを海老だけ蒸し器に移して蒸していきます。蒸しすぎないよう注意。蒸し上がりは氷水にさっと通して粗熱をとりパックに入れてそのまま冷凍庫へ。つけ汁も冷凍しておいて、盛り付けの時に解凍、みりん砂糖を加えて煮詰めてタレにして、同じく解凍した海老に刷毛でさっと塗って盛り付けます。

・海老はその前まで酒漬けした海老に爪楊枝で止めて形を整えてから蒸してましたが今回はやらなかったけど問題なし。とにかくスピード勝負で鮮度を保って一気に仕上げるのがポイント。


はあ、ここまででもだいぶ長いね。まだ4分の一ぐらいか。連載全4回予定(笑)

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