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スミダとサトウの話をしよう


そうだ、スミダとサトウの話をしよう。

そう思い立ってnoteの投稿ページを開いた。スミダというのは埼玉西武ライオンズ2021年ドラフト1位の隅田知一郎くんのことで、サトウというのは同ドラフト2位の佐藤隼輔くんのこと。


なんで突然そんなことを思い立ったのかはわからない。多分、ライオンズの公式Twitterくんが一生新人の話をツイートしてくるからだと思う。


西武ファンは100点満点中5億万点のドラフトだったのと、今マジでびっくりするくらい公式がその二人の情報をくれるのでめちゃくちゃ詳しくなっていると思うんですが、他球団ファンは4球団競合した隅田くんのことならいざ知らず佐藤くんについては知らない人も多いのではないか。他球団の情報なんて、ドラ1以外はあんまり知らないって人が大多数のような気もする。


ただ、この記事を読むにあたって知っておいてほしい情報は「隅田くんはドラフト1位で、佐藤くんはドラフト2位だった」という情報くらいだし、読んだあとに得られる知識も多分「隅田君はドラフト1位で、佐藤くんはドラフト2位だった」に毛が生えた程度だ。あと得られるのは「あ~このnknって人、気が狂ってんだな~」という生暖かい気持ちくらい。
なので、新人に気が狂っている人間を見たい人はぜひご覧ください。


というわけで。


2021年10月11日、ドラフト会議が行われ、西武ライオンズが隅田知一郎(すみだちひろ)くんを4球団競合の末、ドラフト1位で獲得できたことは記憶に新しい。

2021年ドラフトは左腕ザックザクで右腕を探す方が難しいくらい左腕が豊富な年だった。らしい。ドラフト有識者たちの間では、長年深刻な左腕不足に悩まされている西武ライオンズは隅田か佐藤の1位指名だろうと言われていた。

その有識者における前評判の段階では、「各球団、ドラ1は佐藤・隅田」に集中するという話だった。佐藤くんも、またドラ1の器なのである。実際隅田くんが注目される前はぶっちぎりでドラ1評判だった。らしい。全部有識者の又聞きで申し訳ないのだけれど、そういう話だったのだ。

なので、わたしも有識者たちのいうことをそのままソウナノカ~!と素直に受け止め、「一通り投球みたうえで全然な~~んもわからんけど球種いっぱいあるなら隅田くんがイイナ~!」とか「凄腕左腕ならなんでもいいぞ~!」とかアホみたいなことを言っていた。凄腕左腕ってなんだよという話なんだけれどもそんなことを思っていた。


そして運命のドラフト当日。より前に、西武ライオンズは事前公表という形で「隅田知一郎」を指名した。なんと2021年の事前公表はライオンズとホークス(風間球打くん)のみ。

そのアツい気持ちが届いたのか、4球団競合の末に1番最初にくじを引いた飯田本部長様(以下、神)が隅田くんを引き当てた。神、マジで神。ありがとうございます。

これだけで、TLには「Welcome隅田知一郎」で埋め尽くされていた。既にこの時点で我々は優勝していたといっても過言ではなかった。

けれど、運命は2巡目に潜んでいた。

TLがざわつき始める。「あれ? 佐藤くん、1巡目で指名されてなくね?」「あれ? 2巡目でも残ってるくね?」「あれ? もしかして……?」


埼玉西武ライオンズ2巡目指名「佐藤隼輔」


奇しくも、2021年の”ドラフト1位候補”が、埼玉西武ライオンズに揃った瞬間だった。


話は変わるが、”運命”とはどのようなものだろうかと考えるときがある。
みんな大好きgoo国語辞典で調べると、運命の意味とは「人間の意志を超越して人に幸、不幸を与える力。また、その力によってめぐってくる幸、不幸のめぐりあわせ。運。」とあるのだけれど、なんとなく世の中の人が想像する”運命”とは少しニュアンスが違うような気もする。

うまく説明できないけど、運命ってもっとこう、鮮烈なものなのではないかという気がするのだ。ちょっとポエミーなことを言うと、運命とは閃光であってほしいと思ってしまうのだ。”抗えず、圧倒的な力で、人生を変えるもの”みたいな。


そしてわたしは、それを2021年ドラフトに感じてしまった。


”ドラフト1位間違いなし”と謳われていた、大学左腕のNo.1評価を争っていた隅田知一郎くんと佐藤隼輔くん。

佐藤くんは秋に脇腹の肉離れがあったり、その前にもちょっと故障をしている。それで評判が下がってしまったのだろうか。本当のところはわからないけれど、佐藤くんはドラフトの1巡目で指名されることはなかった。

それだけだったら普通の話だ。別に1位確実といわれて1位じゃなかった例なんて探せば多分いっぱいある。他の球団に2巡目だかで入って、順調にキャリアを積むのかはたまた芽が出ず終わるのはかわからないが、そういう普通のドラフトだったのだ。


でも、そうではなかった。

なにがどういう因果か、「ドラフト1位指名」を争った、大学No.1左腕を争った隅田くんと同じ埼玉西武ライオンズに指名され、それを内諾した。スミダとサトウは「西武のドラ1・2位」になった。

ファンからしたら鼻血が出るほどうれしい話だ。
だってドラ1クラスが2人も!しかも左腕!嘘!マジ?!本当!?優勝しちゃったなこりゃもう!!!!2人で30勝しろ!!!感謝します!!!っていう感じだった。TLもそんな感じだった。いや、わたしだけがそんな感じだっただけの説はあるけど、でもそんくらい喜んだしわたしの観測できる中ではみんなそんくらい喜んでた。幻覚でなければ。

でも、佐藤くん本人は、「ドラフト1位でなくて悔しい」とハッキリと口にしたのだ。そして「ドラフト1位の隅田くんに負けないように頑張ります」と、はっきりと隅田知一郎の名前を出して言い切ったのだ。


あ、運命の歯車まわってんな、これ、と思った。


それは2人だけの話ではなく、これからの西武ライオンズの話として、この2人がこのチームに来てくれたことは”運命”なのだなと思った。
だって、左腕が深刻なチームに、ドラ1クラスの左腕が2人きたらそりゃ運命だって思っちゃうよ。鮮烈だもん。


春までは佐藤くんの方が評価が高かった。秋になって隅田くんは急激に伸びて、ドラ1の呼び声が高くなった。それでも二人は、素人たちの間では横並びの評価だったように記憶している。

結果的に12人分しかない”ドラフト1位”の席の1つに隅田くんが座り、他の11個の席にも座ることはなく、”国立大初のドラフト1位”まで見えていた佐藤くんは「同じ年齢の」「同じ左腕の」「同じNo.1評価を受けていた」隅田くんの後ろに立つことになった。

悔しさは人を成長させる。競う相手がいる人間は強くなる。
もちろんたくさん例外はあるけれど、プロの世界はその傾向がより顕著であると思う。

正直言って、めちゃくちゃワクワクした。悔しさを滲ませた佐藤くんが、隅田くんと同じチームになり、どのように成長していくのだろうかと。どのように相対して、どのように切磋琢磨していくのかと。


対する隅田くんは佐藤くんに対して、入団前でまだ顔を合わせていないだろうタイミングから、佐藤くんへのリスペクトに溢れていた。佐藤くんの大学ラストの熱投に対して「内容聞いてモチベーションが上がった!」とかTwitterでツイートしちゃうし、佐藤くんの担当スカウトさんの話だと、隅田くんは入団会見で顔を合わせる前にSNSのDMなどを駆使して佐藤くんとコミュニケーションを取っていたらしい。

隅田くんは純粋に「同じ左腕」の「同期」として、横並び一直線のつもりなのだろう。負けられないっていうのはきっと隅田くんも思っている。佐藤くんにだけではなくて、同期全員に。
大体、入団してしまえば佐藤くんだって隅田くんだって横並び一直線のつもりだろうし、自分が抜きんでているなどとはつゆほども思わないだろう。むしろ全員横並び一直線でスタートを切っているはずだし、チーム自体も、誰かが抜きんでているなんて評価はしてないだろう。抜きんでるための努力こそしてきただろうけれど、まだ何もわからない。なんてったってスタートラインに立ったばかりだ。


でも、ドラフト1位というのはそれだけで一つの大きな”評価”だし、その時点での大きな価値だ。1位以外がダメなのではないし、入団してしまったら横並びだとしても、それでもやっぱり”ドラフト1位”はちょっと特別なのだ。


だからこそ佐藤くんは1位ではなくて悔しいと言った。だからこそ隅田くんはドラフト1位の喜びを大きく語った。

だからこそ、ドラフト1位”候補”だった2人が同じチームにいるというのは、圧倒的に”運命”に見えるのだ。


そんな2人がバッチバチにやりあって、高めあったら、どうなってしまうんだ。

ファンからしたら、本当にワクワクが止まらない。西武の新しい黄金時代をこの2人が告げるのかもしれない。運命の歯車を、グルングルン回してくれるのはこの2人かもしれない。そういう期待で心臓がドキドキする。

でも、隅田くんは佐藤くんのことめちゃくちゃ好印象に見てるけど、実は佐藤くんは悔しさのあまり隅田くんのこと嫌いだったりしたらどうしよう。それでもプロの世界は厳しいぞ。そんなこと言ってらんないぞ。どうにかして高めあってくれ。頼む。頼むから、運命の歯車をぐるんぐるん回してくれ。君たちのその左腕で、西武ライオンズに稲妻を走らせてくれ。頼む、頼むよ。

そんな祈りや、不安すら覚えた。


けど、きっと、大丈夫だという確信もあった。

だって、同じ仲間だ。

それに。大丈夫だと思える根拠が我々にはある。





2人は、親密だから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫!!!!!!!!!!!




いやせめて風呂は別れて入れ。

仲いいので安心はしたけど、もうなんか運命とかそういうポエミーな話じゃなく、それは普通に別れて入れ。




でも、本当に2人で合わせてでもいいから、2022シーズン10勝とかしたら泣いてしまうし、2人でバチバチ勝利数競いあってくれたらいいなあと本気で思うわけです。

運命と外野が言うのは簡単だし、結果や努力の過程を運命で片づける気はさらさらないけれど、2人に感じた”閃光”を、2022年の終わりに「ほらやっぱりな!」と言わせてくれれば嬉しいです。



おわり。

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