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第8回 Tax Credit ってどういう「感じ」なのか

 Mosler 氏はよく" tax credit " という言葉を使う。

The dollar is a tax credit.
The yen is a tax credit.
The euro is a tax credit.

  AIに翻訳させると「ドルは税額控除です」というようになるのだけれども、これがしっくりこない。

 なぜかというと、日本語空間には credit に対応するピッタリな言葉がないから仕方がない。

 というわけで作ったのがこのグラフ。

Fig1. Definition of "a tax credit"

 ついでに、

Fig2. Tax credit の性質

 書いてしまえばむつかしくも何ともない。

 でもなぜこれが "credit" になるのか?

 credit は debit という語のちょうど逆で、セットで考えるとわかっていきます。

CO2排出の貯金(credit)と借金(debit)

 ちょうど地球温暖化にまつわる排出権取引でこの概念が使われています。

 こんなの。

 右上がりの直線は「CO2の総排出量の上限」で、右下がりの直線は「総排出量の下限」です。下限は経済活動のために「これくらいは仕方がないだろう」という量、ですね。

 だから下限が目標値になります。

 次に、曲線は「実際の排出量」です。実際の排出量は目標値を上回ったり下回ったりするものです。

 その評価は目標値を下回っるほど「よいこと」で、目標を上回ってしまったら「悪いこと」ですから、ちょうど逆になるわけです。

 というわけで 
  debit が「借りている分」
 ならば
  credit は「預けてたまっている分」
 っていう感じ、ということでよいと思います。

Tax Credit の”感じ”


 以上の説明で十分な人もたくさんおられると思いますが、せっかくなのでもう少し。

 上のグラフをもう一度。

 

 横軸は時間、縦軸は金額です。
 青線は政府支出、赤線は税です。

 政府が税を自国通貨で集めるためには、民間に政府自身の負債を供給していなければなりません。つまり、税は政府支出の範囲でしか集めることができません。

 だから、税の上限は過去の財政支出ということになる。

 で、上のCO2排出権と同じように考えて、
 「財政支出額>徴税額である時期」は、政府以外(民間および海外)に「税をとるための元手を増やした時期」で、その累計総量が "tax credit" というわけです。

 次回はもう一つの図2について少し書きます。

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