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[研究室ゼミ] 5分プレゼン・5分質疑の論文紹介

論文紹介(文献紹介)をやっている研究室は多いと思います。ただ、論文紹介って何のためにやってるんだろ?と思ってしまうひとも多いんじゃないかなとか思ったりします。

新しい文献との出会いの場を作り、紹介と議論を通じて学生さんの教育を促すってところらへんだと思うのですが、今まで所属したところでは正直うまくいってなかったように思います。

問題意識

論文紹介、紹介者が論文のことを深く理解して準備してくれたら議論がとても盛り上がりますし、専門が近く、レベルもある一定以上で、少人数(グループ単位など)で実施する場合は議論も盛り上がりますのでとても良いのですが、研究室という単位(20~30人)で実施するとなかなかそうも行きません。

まず、学生(特に学部や修士の学生)にとって論文をしっかり読み込んで、準備することは難しいです。また、研究室全体で論文紹介をすると、興味のないトピックであることも多く、興味ないのに30分くらい発表してたりするので、(みんな色々と忙しいのもあって)内職する人が続出したりします。さらに、一生懸命聞いてるのに、紹介者が「この論文面白くなかったです」などと最後に発言しちゃって、俺は何をきかされていてたんだと、残念なことになるのも珍しくありません。さらにさらに、論文を読み込めてない時、「この文章の意味わかってる?」などと先輩・教員などから質問が飛んで、なんともいやーな雰囲気になることがあります。私も英語を読み込めて無くて突っ込まれたことが何度もありますし、他人がそう突っ込まれてるのを見る機会もたくさんありました。なんとも苦手です。

あと、質問を促すために、1人1回質問は必須ね!と言っても、まぁ自分から手を上げて質問するのが苦手って学生さんはいますし、その結果1つの文献紹介だけで1~2時間ということもありました(いつ終わるんだとみんなの顔が険しくなっていきます)。

とはいえ、論文紹介は、自分だけだと興味を持てないかも知れない論文に出会うきっかけとなり、色々知ることができるというメリットがありますし、やっぱり読んで紹介するのはいい教育になるため、現時点でやることは重要だと思っています。なので、これをどう工夫するかという話になります。

目的

できるだけ数多くの、そして色々な分野の論文に出会う場を作ること。手短にまとめる練習をし、聴衆には興味があればちゃんと読んでみようかなと思えるようにすること。論文の紹介を聞きながらリアルタイムで議事録を取る練習&質問を考え、質問をする練習をすること。紹介された論文を、研究室の知識として蓄積していくこと。

実施方法

論文紹介の発表の時間は1人5分、質疑を5分とする(この短い論文紹介は、FMS学科の宮下研のやり方を見て、真似させてもらっています)。時間がきたら、質問と議論は終わりとする。1回あたりの論文紹介者数は10~15人程度なので、交代などの時間も含め、全部で2~3時間程度(2コマ分)。担当が2~3週間に1度回ってくる。

選ぶ論文は、学部3年生はどんな研究でもOKとし(研究会でもOK)、学部4年生は日本語の論文誌または国際会議のものから、修士は国際会議のものから紹介する。

論文紹介では、発表者が事前にScrapboxに論文ごとにページを作成(こちらは、以下みたいにSlackのコマンドを入力して生成することが可能)。

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事前に、著者情報とか入力して、名前をリンクにしておく

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そうすると、他の論文で登場していたら、他の論文も紐付けられてよい。

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また、その日の全体ゼミに関するページから、そのページへとリンクを張っておく(以下は、学部生が担当した回。数多くてここまであると)。

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そこに2名の書記(主に次の2名の発表者が割り当てられる)が発表される論文についてまとめる。他の参加者は、ページの下部に自分の領域を作って、そこに思ったこと、考えたこと、質問などをひたすら書いていく(わからないも当然アリ)。

最初は、手を上げて質問してもらっていたのですが、やはりなかなか難しいので、現在は司会または質問割当担当が、各学生の書いている中で質問として面白げなものに、勝手に「?」を書き入れ、当てて質問してもらう(Scrapboxで冒頭に?を書くと、色がつくので当てやすい)。

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あと、紹介した論文とスライドは、研究室のGoogle Driveに保存して、リンクを張っておき、参照可能とする。

効果

色々な論文に出会えることができますし(学生さんによって探す先が異なってて面白いです)、「あっこれ関連研究にできる! 読んでみよう!」と学生さんが喜ぶことが結構あります。また、ざっくりの説明にとどまっているとはいえ、研究室のScrapboxに論文紹介が蓄積されていきますし、随分時間が経ってから、あれ?こういうのなかったっけ?と検索できるのでよいです(以下は、2019年度に紹介された論文群です。スクロールバーの長さで察して下さい)。

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また、5分でまとめることがどんどん上手になっていきますし、質問についてのハードルもどんどん下がっていっているように思います。分野によっては5分は厳しいとは思いますが。

一方、話を聞きつつ、Scrapboxに書き込むことに必死になるので、内職がかなりしにくいですし、仮に興味のない話であっても、発表5分で終わっちゃいますので、あまり準備がしっかりしていなくても、また興味のない時間であってもすぐに終わって、次に行きます。

まぁ、さすがに1日の紹介件数が多いと疲れるので、1日10件くらいが目安かなとかは思います。

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