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AIイラスト×700文字の物語|有心論

🎼RADWIMPS『有心論』のオマージュ

好きになったって、どうせ嫌われる。愛した人にいつか憎まれる。それならいっそ自分から嫌った。

嫌われるのが怖くなって。誰も好きにならないように気をつけて。うわべだけの笑顔を振りまいて。
気がつけば、好きになるのが怖くなっていた。
ホントよりも嘘ばかりで、自分が嫌になった。

遠回りな自殺志願者になっていたのかもしれない。何もかもがつまらなくて、何もかもがどろどろで汚くて、どうでもよくなっていた。

校舎の向こうに沈んでいく夕焼け。いつもと同じ独りの帰り道。
いつもと違うのは、涙を流す一人の少女がいたこと。
彼女はただのクラスメイトで、別に親しいわけでもない。たまたま同じ場に漂う空気と同じ関係でしかない。足を止める理由は何もない。けれど。

さらさらの髪が黄金色に輝いてる。
小さく肩を揺らし、薄紅の頬を透明な雫が伝う。
それがあまりにも綺麗で、思わず。

僕に気づいた彼女は、つられて笑っていた。
なぜか寂しそうな顔、少し遠くに焦点のあった瞳。
それが無性に嬉しくて、今度は勝手に涙が溢れていた。

彼女の胸にはまばゆく輝くハートが浮かんでいる。

夕日はハートの後光になって彼女と僕を照らす。
3分前までの自殺志願者はどこかへ引っ込み、ドロドロはきれいさっぱり洗い流されていった。

あの日僕を救ってくれた君は、もういない。
遠くへ、いってしまったから。
もしもう一度逢えたなら、なんと言えばいいのだろう。彼女に何を伝えられるだろう。

全てが汚れて見えていた心を、君はすべて綺麗に流してくれた、洗ってくれました。
明日を呪う人間不信者は、明日を夢見る人間信者になりました。2秒前までの自殺志願者を、君は永久幸福論者に変えてくれました。

だから、君はもういないけれど。
この心臓には君がいる。
だから、生きる。

✎有心論/ RADWIMPS より
✎X投稿を加筆修正
https://x.com/nkm_ai_illusts/status/1739240309408899163?t=pO7u5dEX6sjp_fmdx9zFyQ&s=19


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