(保存版)つくば市「令和4年度市政運営の所信と主要施策の概要」
令和4年3月つくば市議会定例会の開会に当たり、令和4年度の市政運営に対する所信を申し上げます。
はじめに
令和2年以降、新型コロナウイルス感染症の拡大は、社会全体に大きな影響を与え続けています。様々な制約が伴う中、つくば市では、「誰一人取り残さない」包摂の精神のもと、市民や地域の事業者等の声に耳を傾け、市内の医療機関や大学・研究機関、企業等と連携して、市民生活と地域経済を守るための取組を全力で進めてきました。
ワクチン接種が進んだことにより、昨年の秋以降、経済活動やイベント等が一旦は再開し始めましたが、新たな変異株・オミクロンの猛威により、年明け以降、市内でも感染者数が爆発的に増加している状況です。依然として厳しい状況が続いていますが、市民をはじめ多くの関係機関等とのつながりを力に、「ともに創る」市政を前進させていく所存です。
つくば市では、令和4年度も、新型コロナウイルス感染症への対応を最重要課題と位置付け、引き続き、自宅療養者に対する物資支援、市独自のPCR検査のほか、経営支援ワンストップ窓口の設置など市独自の支援策を講じていきます。また、既に始まっている3回目のワクチン接種を速やかに進め、市民の安心につなげていきます。
科学技術都市・つくばの強みをいかし、地域が抱える社会課題の克服や市民生活の向上につなげていくため、大学・研究機関、企業等と連携し、先端的な技術を活用したサービスの社会実装を進める「つくばスーパーサイエンスシティ構想」の実現を引き続き目指していきます。
中心市街地においては、つくばセンタービルのリニューアルの一環として新たな市民活動拠点の整備を進めるほかに、市民窓口機能も整備していきます。また、周辺市街地では、これまで8市街地で進められてきた取組を発展させ、空き店舗を活用したチャレンジショップの開設や、地域振興を担う人材の発掘に取り組み、地域主体の取組の自走化支援に力を入れていきます。
「誰一人取り残さない」包摂的な社会を実現するため、生活困窮者自立支援、障害者の日常生活及び社会生活に関する支援、こどもの貧困対策、高齢者の買物支援等の事業に引き続き取り組んでいきます。
教育面では、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーや、学校サポーターの配置を大幅に充実させ、教師がこどもとじっくり向き合う時間を増やし、学校教育の質を高めていきます。
近年、世界各地で地球温暖化が原因と考えられる異常気象による大規模な自然災害が多発しており、その原因は国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書にも示されているように、人間活動による影響であることは疑う余地がありません。つくばの恵み豊かな自然を未来の世代に引き継いでいくためにも、最先端の科学技術を有する研究学園都市の特性をいかして、地域や地球社会が直面する課題を克服していく必要があります。
この課題を市全体で共有し、持続可能な脱炭素社会を実現させるため、つくば市は、2050 年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を目指すことを宣言します。
令和4年度も、SDGsの理念のもと、市民や議会、地域の事業者や関係機関等と力を合わせ、前例にとらわれない柔軟な発想をもって「世界のあしたが見えるまち」をともに創っていきます。
令和4年度当初予算(案)の概要
それでは、令和4年度当初予算案の概要について御説明します。
令和4年度当初予算は、
一般会計 1,015億3,200万円
特別会計 348億8,156万1千円
水道事業会計 90億8,573万円
下水道事業会計 167億6,785万9千円 で
合計が、 1,622億6,715万円 としました。
一般会計では、前年度当初予算と比較し、118億1,900万円、13.2%の増となっています。
一般会計だけでも1,000億円を上回り、過去最大規模の当初予算額となりました。
令和4年度予算編成では、歳入のうち市税については、新型コロナウイルス感染症の影響は残るものの、これまでの実績から前年度比5.5%の増を見込みました。歳出については、児童生徒の急増による学校建設など、必要な事業を着実に進めるとともに、新型コロナウイルス感染症拡大防止策や経済対策のほか、社会情勢の変化を的確に把握し、多様な市民ニーズに積極的に対応するための予算としました。
令和4年度の主要施策
次に、令和4年度の主要施策について御説明します。
(1)徹底した行政改革 ~さらに市民第一の市政へ~
まず、「徹底した行政改革」としては、市民への分かりやすく親しみやすい情報発信に力を入れるとともに、SDGsの推進等を通して市民と行政のパートナーシップを構築します。また、市が有するデータをいかし、市民にとってより利便性の高い行政サービスの提供を進めます。
具体的な取組としては、市民に対し、市政情報をタイムリーにより分かりやすく親しみやすい発信にするため、「広報つくば」の充実や、「つくば市かわら版」の発行回数増加、「つくば市かわら版チャンネル」をはじめとする動画の活用や、市ホームページのリニューアル等を行い、情報発信をさらに強化します。
また、市全体でSDGsを推進していくため、講座や市民ワークショップを開催するとともに、SDGs大賞を新設し、取組効果の見える化や情報発信を行います。
つくばの科学技術をまちづくりにいかす取組として、大学・研究機関、企業等と連携し、先端的サービスの社会実装を進め、地域が抱える社会課題を克服する「つくばスーパーサイエンスシティ構想」の実現を目指します。その一環として、市民と行政をつなぐツールとなる「つくスマアプリ」を導入し、市民が必要とする情報やサービスを迷わず使える体制を構築していきます。
さらに、データに基づいて住民ニーズに応じた適切な判断・政策決定を行っていくため、庁内各課のデータを横断的に利用できるデータ共有システムを運用し、「市民第一の市政」を更に推し進めていきます。加えて、お亡くなりになった方の遺族が必要な行政手続きを1か所で行うことができるよう、おくやみ相談窓口を設置します。
(2)安心の子育て ~こどもとママパパにもっとやさしい子育て環境~
次に、「安心の子育て」としては、安心して出産・子育てができる環境づくりを進め、こどもや保護者に寄り添った質の高い保育・学校教育を推進するとともに、こどもたちの学びの機会を確保していきます。
具体的な取組としては、出産を希望する夫婦が検査や治療を受ける際の経済的負担を減らすため、不育症に対する助成を引き続き実施します。不妊治療に対する助成については、現在、国で公的医療保険の適応が検討されていることを踏まえ、制度のあり方を検討していきます。また、新たに新生児聴覚検査事業や、マル福の外来診療分の対象を高校生まで拡大するなど、安心して出産・子育てができる環境づくりを進めます。
学校をはじめとするこどもたちが過ごす場の環境整備として、児童生徒数が急増するTX沿線地区における5つの小中学校及び放課後児童クラブ施設の新設や、児童館プレイルームへのエアコン設置などを行います。また、臨時休校や分散登校への対応のほか、不登校児童生徒への学びの選択肢を増やすために、授業のライブ配信等に必要な機器の整備を進めます。
学校での教育活動の充実や教員の働き方改革実現に向けて、学校での各種問題を解決する専門員であるスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置を大幅に拡充するとともに、市の独自事業として新規に100 人以上の学校サポーターを配置することで、教員が直接児童生徒と向き合う時間を増やします。
さらに学校と地域住民、保護者が目標やビジョンを共有し、地域と一体となってこどもの育ちの場を支えるために、コミュニティ・スクールのモデル校を1学園に導入します。
(3)頼れる福祉 ~すべての人が自分らしく生きる社会~
次に、「頼れる福祉」としては、新型コロナウイルス感染症の影響から市民の生活を守りつつ、高齢者や障害のある人も自分らしく生活できる環境づくり、こどもの貧困対策などを充実させて「誰一人取り残さない」包摂的な社会への転換を推進します。
具体的な取組としては、新型コロナウイルス感染症の拡大が依然として市民生活に大きな影響を与えていることを踏まえ、3回目のワクチン接種をできるだけ速やかに進めることはもちろん、自宅療養者のための無償での物資配送、市独自のPCR検査を引き続き実施するなど、市民に寄り添いながら適切な対策を実施していきます。
また、買物が困難な状況にある高齢者等を支援する事業を引き続き実施するなど、高齢者も介護者も生きがいを持ち、住み慣れた地域で安心して暮らせる環境づくりを進めていきます。障害のある人が安心して自立した生活を送るための支援としては、電車やバスなどの運賃をICカードで支払った場合の交通費助成や、重度障害者の就労に伴う介助等の支援などを実施します。
生活困窮者支援としては、生活保護に至る前段階の自立支援策として、住居を持たない人に衣食住を提供する事業を新たに実施するとともに、生理用品の配布なども行います。経済的に困難な状況にあるこどもたちへの支援としては、こどもの未来を支援したいという思いを持つ個人や企業からの寄附で設けられた「つくばこどもの青い羽根基金」を有効に活用しながら、学習支援、安心できる居場所の提供、みんなの食堂の実施などに引き続き取り組んでいきます。
(4)便利なインフラ ~快適で持続可能なインフラ整備~
次に、「便利なインフラ」としては、公共交通の改善を進めるとともに、持続可能なインフラの維持管理を推進します。また、資源の循環を促進するため、市民レベルの取組を支援する施策も実施し、市民とともに持続可能なまちづくりを進めていきます。
具体的な取組としては、新設する小・中学校やプール等の教育施設に、災害用井戸や非常用電源等の防災設備の設置を進めます。
交通利便性の向上を図るため、実証実験を行っていた茎崎地区の路線をつくバス路線として新たに組み込むとともに、筑波地区の支線型バスを本格運行します。さらに、圏央道におけるスマートインターチェンジ設置の早期実現のため、用地購入等の事業を推進します。
安全で安心なまちづくりを推進するため、区会等が自主防犯活動の補完として設置する防犯カメラ等の費用の一部を補助します。
低炭素で持続可能な社会の実現に向けて、宅配便の再配達回数を減少させ二酸化炭素排出量を削減するため、集合住宅の所有者に対し宅配ボックスの設置費用の一部を補助します。さらに、サステナスクエアの可燃ごみ焼却施設の安定的な稼働を図るため、焼却炉内部の耐火壁を修繕するとともに、家庭から排出される生ごみの減量及び自家処理を目指し、電気式生ごみ処理機やコンポスト購入費の一部を補助します。あわせて、リサイクルの更なる促進のため、プラスチックごみ収集回数について、現状の月2回から月4回に増やします。
(5)活気ある地域 ~つながりを力に活気ある地域へ~
次に、「活気ある地域」としては、これまで進めてきた周辺市街地活性化の取組を発展させ、地域が主体となった取組の自走化を支援していくとともに、他の地域への横展開を図ります。また、企業立地や雇用の促進、市内における新規創業の支援等、地域の持続的な発展に向けた施策を実施します。
具体的な取組としては、周辺市街地において空き店舗等をいかしたチャレンジショップを展開し、にぎわいの創出や地域経済の活性化を図るほか、地域振興の担い手となる人材を発掘・確保するためのイベントを開催します。また、まちづくり活動の主体となる8つの周辺市街地活性化協議会による取組の自走化支援を行います。
旧筑波東中学校の利活用としてジオパーク中核拠点や自転車拠点を整備するとともに、みどりの地区では、複数の学校プールを集約し、市民も利用可能な屋内温水プールの整備を進めます。
地域産業に関しては、引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者を対象に、経営支援ワンストップ窓口を設置するほか、市独自の補助事業等により、雇用の促進や市内中小企業等の経営安定化を図っていきます。
また、地域の持続的な発展につなげていくため、市内にオフィスを新設した事業者等に賃料の一部を補助することで企業立地や雇用の促進を図るほか、市内での創業を促進する取組として、創業啓発イベントの開催や、マルシェ等への出店機会の提供、新たな会社設立の経費補助等を行い、創業しようとする人を支援していきます。
科学技術を地域課題の解決や市民生活の向上につなげる施策としては、引き続き、革新的な技術やアイデアをいかした製品・サービスの社会実装を支援する取組を行っていきます。
(6)誇れるまち ~つくばの魅力をともに創る~
次に、「誇れるまち」としては、中心市街地の活性化に向けた取組、文化芸術創造拠点の形成、筑波山や宝篋山をはじめとする観光資源に係る環境整備、プレイパークの整備やTX沿線地域の近隣公園整備等により、つくばの魅力をより一層引き出していきます。
具体的な取組としては、筑波地区の廃校を活用した文化芸術創造拠点の整備に向けて計画を策定していきます。
中心市街地のつくばセンタービルについては、新たな市民活動の場を創出し、駅前にふさわしい持続可能都市の拠点としてリニューアルします。
観光面で市の魅力を高める取組としては、筑波山や宝篋山における各種施設を整備するほか、地域の特色をいかし、まち歩きイベントの開催や電子媒体を含めた情報発信の強化を行います。
公園施設については、こどもたちが自ら工夫して遊びを作り出す場であるプレイパークの整備に加え、萱丸・トンボ池の用地取得やTX沿線地域の近隣公園整備を進めるほか、市民が楽しめるスケートボードパークの整備を進めます。
このほか、電子図書館の運営を新たに開始する予定です。また、二酸化炭素排出量の削減を目指し、サステナスクエアで発電した電力のうち、自家消費分以外の電力を市の公共施設で利用します。
以上、令和4年度の市政運営の所信の一端と主要施策の概要を申し上げました。
むすびに
市長に就任して、6回目の予算編成を行いました。就任以来、市民第一の市政を掲げ、市民に寄り添い、市民とともにつくばのまちづくりを進めてきました。変化は確実に生まれていると思っています。難しい案件だったけれど職員が丁寧に対応をしてくれたおかげで本当に救われた、今までだったら返事ももらえなかったけれど迅速に改善に動いてくれた、放って置かれている気持ちでいたけれど今は職員と一緒にまちづくりを進めていると感じる、といった前向きな声が届くのは、職員が日々誠実に市民の目線に立ちながら行動をしてくれているからであり、率直にうれしく、心強く思います。
一方で、常にそのような対応ができていることばかりではありません。お叱りを受けることもありますし、もっと寄り添う対応ができたのではないかと考えることもあります。その象徴的な事例が、今般議員のみなさまにも大変ご心配をお掛けしている、不登校児童生徒を対象とした学習支援事業の委託事業者選定についてです。結果として、現在の利用者や保護者に多大なる不安を与えてしまっています。
様々な事情を背景に学校に通えなくなっていたこどもたちが、ようやく自分の居場所を見つけることができたにも関わらず、事前の周知もなく突然実施主体が変更されることを知らされ、不安な状況を作ってしまった原因は、寄り添う市政の徹底を実現できていない私のまぎれもない力不足であり、こどもたち、保護者のみなさまには本当に申し訳なく思っております。
現在、保護者、そして関係者のみなさまからご意見をいただきながら、こどもたちの不安を何とか解消できるように努力をしているところですが、今後決して同様の事態を招かないために私自身が深く反省し、寄り添う市政という心を全庁に徹底的に浸透させていくことを改めて強く決意しています。まだまだ至らぬことが多くありますが、市民のみなさま、そして議員のみなさまと、「誰一人取り残さない」つくばを「ともに創る」ために全力で前進していく所存です。引き続きのご指導・ご支援を賜りますようお願い申し上げ、所信といたします。
令和4年2月14 日 つくば市長 五 十 嵐 立 青
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