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(保存版)つくば市「令和3年度市政運営の所信と主要施策の概要」

つくば市ホームページの「市長の部屋」コーナーにある「市政運営の所信と主要施策の概要」では、最新のものしか掲載されておらず、過去の経緯を辿ることができません。そこで、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業で収蔵された資料から転記をしておきます。なお以下の本文では把握できる範囲で、令和4年時点でのつくば市ホームページで施策等が公開されている箇所へのリンクを追加しました。


令和3年3月つくば市議会定例会の開会に当たり、令和3年度の市政運営に対する所信を申し上げます。

はじめに

市長2期目就任直後の所信でも申し上げたとおり、市民第一の市政を推進するため、市民との丁寧な対話を積み重ね、様々な課題と真摯に向き合い、令和3年度も「世界のあしたが見えるまち」の実現に向けて取り組んでいきます。

世界的な新型コロナウイルス感染症の流行は、市民の生活や地域経済に非常に大きな影響を及ぼしました。これまで当たり前だった日常が、当たり前ではなくなり、生活は一変しました。

つくば市では、全国一斉休校への独自の対応や、地元の協力の下、医療崩壊を防ぐため豊里ゆかりの森の宿泊施設「あかまつ」において軽症者等をいち早く受け入れたほか、医療機関等への物資の提供、高齢者や障害者、子育て世帯への市独自の生活支援、経済活動や文化芸術活動への支援等を実施してきました。2月1日には「新型コロナウイルスワクチン接種対策室」を新設し、市民が滞りなくワクチンを接種できるように準備を進めています。引き続き、新型コロナウイルス感染症への対応を最重要課題として全力で取り組んでいきます。

「誰一人取り残さないつくば」を実現させるため、令和3年度もつくば市SDGs未来都市計画に掲げる持続可能なまちづくりに向け、これまでの4年間の取組を更に本格化させていきます。

周辺市街地では、8市街地での地域主体の取組を発展、加速化するとともに、他の地域や団地等にも横展開し、活気ある地域をつくっていきます。中心市街地では、つくばセンタービルのリニューアルを中心とした取組や、まちづくり会社による取組を開始し、ソフト・ハードの両面で魅力あるまちづくりに向けた動きを本格化させていきます。

高エネ研南側未利用地は、最終解決に向けて、市民や議会等とともに方向性を決定していきます。

先端技術やデータの活用により誰もが安全、便利で快適に暮らせるスマートシティの実現は、若者だけでなく、日常生活に不便を感じている高齢者や障害者等に役立つものです。地域課題の解決等を目指し、令和2年度中に内閣府のスーパーシティ構想へ応募する準備を進めているところです。

全ての人が自分らしく生きる包摂的な社会を実現するため、高齢者憩いの広場の整備の推進や児童発達支援センターの開設、つくばこどもの青い羽根基金を活用したこどもの貧困対策等、これまでの取組を更に充実させていきます。

教育面では、「教えから学びへ」の新たな教育理念を浸透させながら、一人一台の児童生徒用パソコンを整備し、学校でも自宅からでも同じように学べる環境を整えていきます。今後必要な場面で効果的に活用していくことで、質の高い学びを実現していきます。

新型コロナウイルス感染症への対応という前例のない状況下においても、市民生活と地域経済を守り、令和3年度も更なる市民第一の市政を進め、市民や議員、事業者など、様々な関係者と誰一人取り残さないつくばを「ともに創る」1年にしていきます。

令和3年度当初予算(案)の概要

それでは、令和3年度当初予算案の概要について御説明します。

令和3年度当初予算は、

一般会計    897億1,300万円
特別会計    343億2,365万7千円
水道事業会計   87億7,710万5千円
下水道事業会計 166億9,906万6千円 で
合計が、  1,495億1,282万8千円 としました。

一般会計では、前年度当初予算と比較し、11億8,800万円、1.3%の増となっています。

近年、個人市民税や固定資産税は増加が続いていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、市税全体で前年度比2.2%の減を見込んでいます。一方で、民間保育所運営委託料や障害福祉サービス費などの民生費は前年度比で2.9%の増、児童生徒の急増に対応するための学校施設等の整備を進める教育費は前年度比で13.7%の増となっています。

令和3年度の主要施策

次に、令和3年度の主要施策について御説明します。

(1)徹底した行政改革 ~さらに市民第一の市政へ~

「徹底した行政改革」としては、市民第一の市政を実現するため市民主体のまちづくりを更に推進するとともに、多様性を重視した働き方改革や行政サービス提供への取組を進めます。

具体的な取組としては、市民につくば市の取組をより理解してもらうため、市政情報をより詳しく、より分かりやすくまとめた市政情報かわら版を新たに作成し、区会回覧などで配布します。

業務効率化の取組として、AI等先端技術を活用して、業務の自動化を進めます。

また、市民に寄り添う市政を担う職員、自ら考え行動する職員を育成するため、コーチング研修及びNPO法人等派遣事業を実施します。

つくばの科学技術をまちづくりにいかす取組として、市民生活の質の向上や地域活性化等を図るため、茨城県、筑波大学、民間企業等と共同で、先端技術や多様なデータを活用し、地域課題の解決につなげるつくばスマートシティモデル事業を実施します。

持続可能なまちづくりの普及啓発やつくばSDGsパートナーズ会員活動を活性化することで、市民自らも身近な活動を通じて地域課題の解決に取り組むことを目指します。また、地域経済やまちづくりに貢献されてきた方々の事績をたたえるため、名誉市民・表彰を積極的に行い、市民のまちづくりへの意識の高揚を図り、市民と「ともに創る」市政を推進していきます。

(2)安心の子育て ~こどもとママパパにもっとやさしい子育て環境~

次に、「安心の子育て」としては、安心して出産・子育てができる環境づくりを進めるとともに、「教えから学びへ」の教育改革を推進し、地域の特性をいかした質の高い学びの実現を目指します。

具体的な取組としては、現在の不妊治療等への助成に加え、不育症の治療や検査にかかる費用の一部を新たに助成します。また、出産を伴う入退院時や妊産婦健診の受診時のタクシー利用料金も新たに助成し、安心して出産・子育てができる環境づくりを進めます。

保育環境の更なる充実に向けては、公立保育所の一部から始める主食提供、放課後児童クラブ専用施設の新設や児童館へのエアコン設置などにより、子育て環境の整備を推進します。

「教えから学びへ」の実現に向けては、スクールソーシャルワーカー等の専門員による相談事業、不登校の児童生徒が安心して学習や体験ができる拠点運営などにより、一人一人に合った学びの環境を作るとともに、部活動指導員補助事業など教師がこどもと向き合う時間を増やすための働き方改革を進めることで、教育大綱の理念を学校現場で体現していきます。

さらに、TX沿線地区での児童生徒数の急増に対応するため、5つの小中学校の新設を進め、引き続き学習環境の整備を図ります。

(3)頼れる福祉 ~すべての人が自分らしく生きる社会~

次に、「頼れる福祉」としては、老後を安心して生活できる環境づくり、障害があっても自分らしく学び、生きられる環境づくり、こどもの貧困対策などを充実させ、「誰一人取り残さない」包摂的な社会への転換を推進します。

具体的な取組としては、高齢者等の日常生活の不便さを解消するため、高齢者タクシー運賃助成事業の要件緩和、買物支援のため移動販売事業者への支援を行い、併せて、身近な地域で運動や趣味の活動ができる高齢者憩いの広場づくりなどを進めていきます。

こどもの発達や障害に関する専門的な知識をもった職員が保育所や幼稚園、小学校等を訪問し、各施設内での集団生活に関する支援を行う保育所等訪問支援事業を新たに実施するとともに、こどもの発達に関する支援を切れ目なく行うため、筑波大学との連携による春日消防本部跡地での児童発達支援センターの整備を進めます。

さらに、こどもの未来を支援するために、生活・学習習慣を身に付けるための学習拠点や安心して過ごせる居場所づくり、みんなの食堂などの支援を継続して進めます。

(4)便利なインフラ ~快適で持続可能なインフラ整備~

次に、「便利なインフラ」としては、継続して公共交通の利便性向上に努め、自転車や徒歩による移動環境の整備を進めます。さらに、持続可能なインフラ管理や資源の循環も推進することで、これまで以上に持続可能性を重視した取組を実施します。

具体的な取組としては、土砂災害警戒区域や浸水想定区域など災害リスクの高い地域に、デジタル防災行政無線を整備し、突然訪れる災害に備えていきます。

つくば市で保有する約700 の公共施設等のインフラを持続的に管理するため、施設の利用・修繕の実績や経費などを整理、分析できるシステムを新たに導入し、適切な管理を推進します。

市内の自転車利用を促進するため、3年間の実証実験としてつくば駅及び研究学園駅周辺にシェアサイクルを導入し、回遊性や移動の利便性向上を図っていきます。

安全・安心なまちづくりを推進するため、区会等が設置する防犯カメラに対して、新たに費用の一部を補助します。

また、道路・街路の整備や橋梁・河川の修繕等を行うとともに、都市計画道路についても、事業化や整備を推進していきます。

(5)活気ある地域 ~つながりを力に活気ある地域へ~

次に、「活気ある地域」としては、周辺市街地活性化の取組を加速化し、他の地域への横展開を行うとともに、地元産業の支援や地産地消を促進し、地域の持続的な発展に向けた施策を進めます。また、市民の自発的な取組を全力で応援し、様々な地域に活気を生み出していきます。

具体的な取組としては、地域が自ら積極的にまちづくりを行う機運が高まった8つの周辺市街地での取組を、他の地域や団地等にも展開していきます。

地域の魅力を引き出す取組として、筑波東中学校跡地にジオパーク中核拠点施設やサイクリング拠点の整備を進め、みどりの地区には、複数の学校プールを集約し、市民も利用できる屋内温水プールの整備を進めます。

新型コロナウイルス感染症により影響を受けた市内事業者に対しては、相談を一元的に受け付ける窓口を引き続き設置するなど、市内事業者が必要とする支援策を実施することで、経済及び雇用に与える影響を緩和し経営安定化を図ります。

この他にも地域の持続的な発展を支えるため、人材の確保や定着化を促進する若者地域定着化促進事業、つくば市発の優れた商品・サービスを市が認定するつくばクオリティ認定制度事業、地元産食材を提供するレストランを増やして地域全体での消費を促進する地産地消レストラン推進事業等を実施します。

また、科学技術によって地域課題の解決を図る取組として、近未来技術等を活用したスタートアップの革新的な製品・サービスの導入を市が支援し、市民サービスの向上につなげます。

(6)誇れるまち ~つくばの魅力をともに創る~

次に、「誇れるまち」としては、魅力ある中心市街地にするための取組や、地域の財産である文化芸術・伝統芸能活動への支援、案内機能や体験型観光の更なる充実などにより、つくばの魅力を最大限いかしたまちづくりを進めていきます。

具体的な取組としては、中心市街地のつくばセンタービルやセンター広場を、つくば駅前にふさわしい訪れたくなる場所としてリニューアルし、市民窓口機能や新たな市民活動・交流拠点の場等を整備していきます。

その他、筑波山観光案内所等の整備や筑波山観光用水渇水対策の実施、フットボールスタジアムつくばの傷んだ人工芝の張替や新型コロナウイルス感染症の影響を受けている文化芸術・伝統芸能のアーティストの支援も行っていきます。

以上、令和3年度の市政運営の所信の一端と主要施策の概要を申し上げました。

むすびに

新型コロナウイルス感染症によって、世界が一変したと言われています。市民生活と地域経済に大変な苦境を生み出しているという意味で、そして今まで当たり前と思っていたことが、当たり前ではなくなったという意味では確かに大きな変化をもたらしています。しかし、私は、コロナによって、急に全く新しい世界が生まれたわけではないと捉えていますし、むしろコロナ前とコロナ後は地続きの世界としてつながっていると考えています。今、社会全体が直面している課題は、今までも潜在的には存在していても、重要視されてこなかったり、そこまで多くの人々の関心が向かないことで顕在化してこなかったり、社会のアジェンダとしては一部の問題意識を持つ人にのみ共有される状況にとどまったために、対策が取られてこなかったなど、多くのことがあります。

例えば、コロナ対策において最も重要な課題となっている医療体制の問題。有事の際の医療体制の脆弱性は一部の専門家からは指摘されていたものの、その備えを実際に行った国はわずかしかありませんでした。あるいは、コロナの経済的影響によって、とりわけ非正規雇用者や個人事業主が大きな苦境に立たされていますが、コロナ前から不況時には脆弱な社会的立場の人たちや所属する組織がない人たちにしわ寄せが来ることは知られていたことでした。しかし、具体的な対策が取られなかったためにその格差は広がり、コロナにおいてますますその差が生み出されてしまっています。

行政や企業のデジタル化の課題も、日本は諸外国から遅れていることが以前から指摘されていました。結果として特別定額給付金に象徴される一連の混乱は、デジタル技術を駆使して迅速に給付金を支給したり、マスク情報を適切に届けたりする国々と対照的な状況を示しました。

コロナはこのように、何か新しい問題をもたらしたわけではなく、潜在的には存在していたものを顕在化させる、そしてそれを加速させていくものです。

私は、この物事の捉え方に今後の市政運営のヒントがあると考えています。コロナによって顕在化してきた負の側面については、誰一人取り残さない市政を目指すつくば市として、当然に対策を取っていく必要があります。そのために現在、議会の皆様の御理解をいただきながら、感染症対策室や新型コロナウイルスワクチン接種対策室、経済支援室を中心に、全ての部署の職員が市民生活と地域経済を守るために取り組んでいます。

同時に、コロナが潜在的なものを顕在化させるという視点では、正の側面を持つ資源や可能性に目を向けることも重要だと考えています。無理やりゼロから新しいものを作り出すという動きではなく、つくば市未来構想に掲げた「つながりを力に未来をつくる」という理念に基づき、今既にある資源や考えを具体化していくことで、つくばのまちづくりを前に進めていくことができると考えています。

その意味では、つくばがこれまで取り組んできた持続可能都市に向けた方向性を加速させる機会でもあります。その典型が周辺市街地における活動です。従来、周辺市街地は人口減少と少子高齢化という面のみでネガティブに捉えられてきましたが、コロナ前からつくばではその魅力に目を向け活動が行われてきました。私はかねがねヒト・モノ・カネを中心部に吸い寄せる「求心力」ではなく、ヒト・モノ・カネが中心部から周辺部へ流れていく「遠心力」を働かせることがつくばのまちづくりにおいて重要ということを申し上げてきました。コロナの蔓延によって、都市の密集は回避すべきものとされ、物理的な空間の広さや自然への近さが改めて注目を浴びています。

インターネット投票もコロナ前から取組を進めてきましたが、コロナで投票所の密が課題になる中、注目度はより増してきています。テレワークやオンライン会議の利用も、これまで必要と言われてきながら現実的ではないと却下されてきたものが、コロナで一気に進み、今ほとんど全ての会議はオンラインで行われています。もちろん、オンラインで完全に代替できるわけではなく対面のコミュニケーションの重要性は認識していますが、形式的な会議のあり方は根本から変わりました。

私は、今こそ「世界のあしたが見えるまち」としてのつくばの役割があると考えています。我々には、知恵を出し合い、市民生活を守り、世界に新しい可能性を示していく使命があります。

今般、市長2期目として最初の所信表明に当たり、過去の資料を振り返っていたところ、26 歳で市議会議員に初めて出馬した際のポスターを見つけました。そこには、「つくばの無限の可能性を形に」と入れてありました。私はつくばの無限の可能性を当時も、そして今も強く信じています。何よりも、人々の幸せのためにその可能性を形にする必要があります。今、苦しい状態にいる方々を少しでも笑顔にするために、市民生活と地域経済を守るために、そして市民の幸せを、市民と「ともに創る」ために、全身全霊で市政運営に臨むことをお誓い申し上げ、3月議会に当たっての所信とします。皆様の御指導をよろしくお願い申し上げます。

令和3年2月15 日  つくば市長  五 十 嵐 立 青


国立国会図書館インターネット資料収集保存事業で収蔵された、当時のつくば市の当該ページはこちら。


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