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(保存版)つくば市「令和2年度市政運営の所信と主要施策の概要」

つくば市ホームページの「市長の部屋」コーナーにある「市政運営の所信と主要施策の概要」では、最新のものしか掲載されておらず、過去の経緯を辿ることができません。そこで、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業で収蔵された資料から転記をしておきます。なお以下の本文では把握できる範囲で、令和4年時点でのつくば市ホームページで施策等が公開されている箇所へのリンクを追加しました。


令和2年3月つくば市議会定例会の開会に当たり、予算及び議案等の提案に先立ち、令和2年度の市政運営に対する所信を申し上げます。

はじめに

市長に就任して以来、市民第一の市政を推進することを申し上げてきました。令和2年度も、市民との対話を積み重ね、市民に寄り添い、様々な課題と真摯に向き合うことで、市民第一の市政を推進し、「世界のあしたが見えるまち」の実現に向け取り組んでいきます。

さて、昨年は、G20 やいきいき茨城ゆめ国体の開催、サマーダボス2019 への参加、米国ケンブリッジ市との姉妹都市協定再締結など、国内外へつくばを発信することができました。

つくば市は、2018 年に内閣府の「SDGs未来都市」の認定を受け、持続可能なまちづくりを念頭においた施策を展開しており、こどもの貧困や高齢化など多くの自治体が抱える課題に、つくばの強み、特色をいかして取り組んでいます。

こどもの未来を支援する取組では、つくばならではの新しい仕組みとして、昨年4月に「つくばこどもの青い羽根基金」を創設しました。1月末時点で約800 万円の寄付をお寄せいただくなど、多くの皆様から温かい支援をいただいています。この基金を活用しながら、誰一人取り残さず、こどもたちの明るい未来のために、これからも全力で支援していきます。

教育面では、日本を代表する各分野の教育関係者等と様々な意見交換を行い、「一人ひとりが幸せな人生を送ること」をつくばが目指す教育の最上位目標に掲げた「つくば市教育大綱」の策定を進めています。

高齢化に向けた取組では、高齢者が元気にいきいきと過ごせるまちを目指して、地域の支え合いの体制づくりやすべての人が気軽に通える憩いの広場づくりなどを進めています。また、地域で暮らす高齢者の相談窓口である地域包括支援センターを市内全地域へ整備することを目指すなど、高齢者の安心した暮らしを引き続き支えていきます。

2030 年の未来像を示した新しい「つくば市未来構想」案では、持続可能なまちづくりの方向性を取り入れ、21 世紀半ばまでを見据えたまちづくりの基本理念として、「つながりを力に未来をつくる」を掲げました。これには、多様なコミュニティの中で、顔と顔が見えるつながりをつくり、挑戦が新たなまちの活力を生み出し、更なる好循環を生み出すことで、まちを持続的に発展させていくという思いを込めています。

特に、地域のつながりの力がまちの持続的発展には不可欠と捉え、周辺市街地の活性化の取組を進めてきました。周辺市街地まちづくり勉強会を幾度となく開催することで、地域が自ら積極的にまちづくりを行う機運が醸成され、未来がつくられ始めていると実感しています。

令和2年度も、「誰一人取り残さない」という包摂の精神に基づき、引き続き市民との丁寧な対話を積み重ね、つくば市が抱える諸課題の解決に向けて一層加速する1年にしていきます。

令和2年度予算(案)の概要

それでは、令和2年度予算案の概要について御説明します。

令和2年度当初予算の規模は、

一般会計     885億2,500万円
特別会計     338億2,462万6千円
水道事業会計    92億9,492万2千円
下水道事業会計  171億6,420万2千円 で
合計が、   1,488億 875万円 としました。

このうち、一般会計においては、前年度当初予算との比較で、4億8,500万円、0.6%の増となっています。

歳入面では、個人市民税、固定資産税の増加が続いており、市税全体では前年度比で11億1,290万8千円、2.4%の増となっています。

歳出面では、民間保育所の整備費補助金や運営委託料、障害福祉サービス費の増加に加え、(仮称)みどりの南小学校用地購入や葛城小学校増築校舎建設事業など児童生徒急増に対応するための教育施設の整備や幼児教育・保育の無償化への対応等により、民生費が前年度比で21億2,815万3千円、6.0%の伸び、教育費が前年度比で10億9,101万5千円、10.4%の伸びとなっています。

令和2年度の主要施策

次に、令和2年度の主要施策について御説明します。

新しい「つくば市未来構想」案では、目指すまちの姿として、①魅力をみんなで創るまち、②誰もが自分らしく生きるまち、③未来をつくる人が育つまち、④市民のために科学技術をいかすまち、の4つを掲げており、「誰一人取り残さない」という包摂の精神に基づき、地域課題解決に向け着実に事業を進めていくことで、「持続可能都市」の実現を目指していきます。

Ⅰ 魅力をみんなで創るまち

まず、「魅力をみんなで創るまち」としては、市民が中心となり、多様なコミュニティの中で顔と顔が見え、人と人がつながり、つくばならではの魅力を高め、世界に示すまちを目指します。

具体的な取組としては、市民や市民団体による活動やチャレンジを支援するため、市民活動に関する情報提供や相談機能の充実を図ります。また、今年度発足したつくばSDGsパートナーズを活性化し、市民自らが地域課題を認識し、その解決に向けた取組を推進します。

つくばの豊かな資源をいかす取組としては、つくば産の食材を使って提供する「地産地消レストラン」を認定することや、地産地消に関する情報発信を行い農産物のブランディングを図ります。

牛久沼周辺の「茎崎こもれび六斗の森」には、アウトドアフィールド整備事業としてシャワー室、トイレ、炊事場を備えたサニタリー棟を整備します。

空き家対策については、有効活用を図るため、「つくば市空家バンク制度」に登録された空き家の改修と家財処分に対する補助制度を新設します。

中心市街地においては、「つくば中心市街地まちづくりヴィジョン」の実現に向け、具体的な取組を定めた「つくば中心市街地まちづくり戦略」を策定しています。議会の「つくば中心市街地まちづくり調査特別委員会」の中間報告でも提案いただいたつくばセンタービルのリニューアルやエリアマネジメント団体の設立については、先行して進めていきます。

周辺市街地においては、地域主体で協議会組織が順次設立され、地域が自ら積極的にまちづくり活動をしています。地域主体の活性化事業に対し、来年度も周辺市街地活性化チャレンジ補助金で支援するとともに、つくばR8(リージョン・エイト)地域活性化プランコンペティションの規模を拡大し、魅力的で持続的な地域づくりを進めます。

また、夏には、東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、つくば市はスイスのホストタウンとして、選手団の事前キャンプの支援や市民との交流事業を実施します。聖火リレーのルート及び聖火到着式の会場にも選ばれており、市民と一緒につくばの魅力発信やオリンピック・パラリンピックの機運を盛り上げていきます。さらに、これらのイベントを一過性のもので終わらせずに、まちづくりにおけるスポーツの価値を、分野を超えて検討するため、市民部にプロジェクト・チームを新設します。

Ⅱ 誰もが自分らしく生きるまち

次に、「誰もが自分らしく生きるまち」としては、誰一人取り残されず、一人ひとりの安心が守られ、地域の隅々まで福祉がいきわたり、つくばに集うすべての人が自分らしく生き、自然豊かで幸せがあふれるまちを目指します。

具体的な取組としては、新たに桜圏域と谷田部東圏域に地域包括支援センターを開設し、市内全圏域において高齢者の生活を総合的に支える介護などの相談窓口拠点を整備することを目指します。併せて、高齢者が集えるサロン等の設置を補助する高齢者憩いの広場事業や、高齢者の見守りやゴミ出し、移動支援等を地域で支え合う体制の構築を目指した生活支援体制整備事業を推進します。福祉有償運送や買い物支援、成年後見制度の利用促進事業等も実施することで、高齢者が住み慣れた地域とつながり、安心して生活ができる環境を整えます。

市民の健康づくりについては、新たにロタウイルス任意予防接種や禁煙外来の受診に対する助成を行うほか、市が実施する節目年齢のがん検診や健康診断の無料化を行うことで、疾病の早期発見・早期治療、生活習慣病の予防につなげます。

昨年は、度重なる台風襲来により市内各所で風水害が発生し、平時からの防災対策の重要性を再認識したところです。土砂災害警戒区域や浸水想定区域など災害リスクの高い地域への防災行政無線の整備や非常用電源、防災備蓄倉庫、災害用井戸の整備を進め災害時の備えを充実させていきます。

市民が安心して地域に住み続けることができるよう、市内の施工業者による住宅リフォームに対する補助制度を新設します。また、イノシシによる生活被害や農作物被害を防止するため、経済部農業政策課に課内室を新設し、施策を一元的に実施します。

公有地の利活用のうち、学校跡地については、旧小田小学校で一部教室及びグラウンドを地域主体で運営管理し、地域拠点形成に向けた取組を実証的に開始します。旧菅間小学校では生活支援ロボットコンテストの開催、旧筑波西中学校では広域通信制高校の開校に向けた準備を進めており、旧筑波東中学校では、施設の一部を活用し、筑波山地域ジオパーク中核拠点施設の整備に向けた検討をしています。

また、茎崎庁舎や谷田部庁舎の跡地については、現在導入する施設等を検討し土地利用計画案を作成しており、今後これを基に地域との意見交換をして方向性を決めていきます。消防庁舎跡地については、筑波大学附属病院と連携した施設と一緒に児童発達支援センターを整備する方向で筑波大学と協議を進めていきます。

そのほかの学校跡地や高エネ研南側などの未利用地についても、地域や議会の意見を丁寧に伺いながら、利活用方策を検討していきます。

公共交通については、昨年4月に大規模な改編を行った結果、今年度上半期の公共交通利用者数は、前年度比で約15,000人増加し、今年度の市民意識調査では、公共交通に対する満足度が前回調査より3.1%高くなりました。今後も、公共交通の充実のために地域と一緒になって取り組むとともに、つくば市地域公共交通網形成計画を改訂し、市民が使いやすく社会環境やまちの変化にも適応した公共交通網の実現を目指します。

昨年11月につくば霞ヶ浦りんりんロードナショナルサイクルルートに指定されたことを受け、つくば駅からりんりんロードまで表示等で案内誘導を行うとともに、つくば駅に隣接するBiViつくばには自転車組み立てスペースを設けます。

また、自転車利用の安全性を確保するため、18歳までを対象にした自転車用ヘルメット購入補助も行います。利用者が増加するみどりの駅の自転車等駐車場では、スペースを増設し、適切な駐輪環境を提供します。

Ⅲ 未来をつくる人が育つまち

次に、「未来をつくる人が育つまち」としては、自分たちのまちと世界を知り、未来について考え、よりよい未来を次の世代に引き継いでいけるよう、自ら行動する人が育つまちを目指します。

具体的な取組としては、子育てに悩みを抱えた家庭を訪問し、寄り添いながら話を聞いたり、一緒に家事などをすることで孤立を防ぐホームスタート事業を新たに開始します。

TX沿線地区では人口の増加に伴い、児童生徒数も急増しています。そのため、学校の校舎の増築や新設を先行して進めています。学校においては、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、スクールサポーターを充実させることで、悩みや不安を抱える児童生徒、保護者、教職員に寄り添った支援を行います。

また、不登校の児童生徒が安心して学習や体験活動ができるよう民間事業者と共同で新たな学習支援の拠点を設けます。

さらに、放課後児童クラブを拡充するほか、こどもたちが家庭環境に左右されず勉強し生活できる環境をつくるため、つくばこどもの青い羽根基金を活用して、学習支援や居場所づくり支援、学習塾代助成拡大を行い、新たにこども未来支援員を配置し、課題を抱えるこどもを早期に支援していきます。また、こどもたちがのびのびと過ごせる環境づくりのため、遊び場や地域交流の場となる公園を整備していきます。

教員の働き方改革としては、これまでも出退勤のタイムカード導入や電話の留守応答機能の運用などを先行して実施してきました。新しく策定した「教員の働き方改革に関する実行計画」を基に、校務支援システムの全校導入や学校給食費の徴収管理の一元化などを進め、教職員の負担を軽減していきます。

Ⅳ 市民のために科学技術をいかすまち

最後に、「市民のために科学技術をいかすまち」としては、市民の日々の生活や地球環境をよりよくするため、科学技術の成果を最大限活用し、課題の解決に貢献するとともに、社会にイノベーションを生み出すまちを目指します。

具体的な取組としては、茨城県、筑波大学、民間企業とともに、国交省のスマートシティモデル事業として、顔認証技術によるバス乗車と移動先でのサービスの連携に向けた実証、自動運転電動車いすの実証等を進め、誰もが安全、便利で快適な生活を送ることができるスマートシティ化を推進します。

科学技術の社会実装を推進する取組としては、「つくばSociety 5.0 社会実装トライアル支援事業」と「つくば市未来共創プロジェクト事業」を引き続き実施していきます。

市役所の業務効率化の推進としては、民間事業者等と共同研究により、RPAなどを進めていますが、来年度は紙情報を電子化する技術であるAI-OCRとRPAと組み合わせ、更なる業務効率化を進めます。

また、市民に身近で分かりやすいものとしては、窓口における証明書等の支払いに電子マネー決済を導入することや、ごみの出し方の検索や収集日の確認ができるごみ分別アプリを導入することにより、市民の利便性向上を図っていきます。

以上、令和2年度の市政運営の所信の一端と主要施策の概要を申し上げました。

むすびに

先日、先程も述べた周辺市街地8地区の事業の報告会がコミュニティ棟で開催されました。R8、すなわち北条・小田・大曽根・吉沼・上郷・栄・谷田部・高見原という旧町村の中心を成していた市街地の皆さんが集まり現在の取組について報告するとともに、コンペで採択された4団体からも併せて発表がありました。

市長に就任前、これらの地域を歩くと聴こえてくるのは、「中心部ばかりが発展している」「周辺部は置いてきぼりにされている」「行政は何もしてくれない」という声でした。実際に、旧町村が合併することで地理的に周辺部となった旧市街地に対して、行政としての施策はほとんど行われてきませんでした。結果として、高齢化は進み、若い世代は地域を離れ、商店街での閉店が続く、という循環に陥っていました。この流れを変えるために、2年前、周辺市街地振興室を新設し、地域に活気を取り戻すための取組を始めました。そこから、地域の皆さんと職員がともに汗をかき、多くの活動が生まれてきました。地域の資源をいかして地域が主体となり新しい取組が生まれ、活動の拠点も生まれてきています。さらに、筑波大の研究室の企画である地域の宝探しをするロゲイニングや、つくばの出身者を中心とする建築集団による昔ながらの運搬手段である大八車の各地域のイベントでの活用など、新しい視点が生まれています。

これまで商店街の店が閉まっても、新しく何かがオープンするということはほとんどなく、大学や他の団体がここまで地域に入り込んで活動をするということもなかったと思いますので、これらの取組は非常に価値があることだと考えています。

そして特筆すべきは、旧市街地同士の意見交換、そして交流が生まれていることです。例えば、先週参加した吉沼のイベントには、上郷の協議会の皆さんが参加をし、大曽根の協議会の事務局を担っている珈琲店が応援の出店をしていました。このように市街地同士が地区を超えて行き来をする、お互いの魅力を学び合い時間を過ごすということは、私の知る限りつくばでのまったく新しい動きです。このつながりを通して地域の魅力を発掘し、中心市街地やTX沿線の住民にもこれらの地域の魅力が届き、イベントや地域活動に参加して地域の資源の魅力に触れる、地域の人たちと交流をする、その中から更には移住をしてみたいと思う人が出てくればと思います。これまでのつくばは中心部に人が吸い寄せられる求心力が働いてきましたが、今後は中心から周辺地区への遠心力が働くまちにしていくことで、つくば全体が持続可能都市になっていくものだと考えていますので、この取組にはこれからも力を入れていきます。

これらの地域に密着し、地域の資源をいかす取組と同時に、つくばの世界的な地位を高めることにも取り組んでいます。「世界のあしたが見えるまち」のヴィジョンには、つくばの科学技術をいかし市民を幸せにする取組を通して、少子高齢化が進む世界の都市における人類に対しても貢献できるという思いを込めています。スマートシティやSociety5.0、スタートアップ支援の取組はその一環であり、ロボットによる業務の自動化や、ブロックチェーンとマイナンバーカードによるネット投票、電動車いすの自動運転、住宅街でのドローン配送など、数多くの日本初や先進的な事業を実施しています。国の省庁で講演や事例発表を依頼される機会も増え、この数年でつくばの取組への評価が大きく高まっていると考えています。そのような中で、昨年は中国で開催された、世界中の政治やビジネスのリーダーが集まる世界経済フォーラム主催のサマーダボスに招待され、日本の市長で唯一のスピーカーとして登壇をし、つくばの取組に世界中のリーダーたちの目を向けることができました。さらに、その世界経済フォーラムの記事において、つくばは「ロンドンやニューヨーク、東京よりもキャリアを積む場所としてふさわしい」と評価をされました。研究機関が集積し世界中から人材が集まり、自然があり公園等も多く、大都市よりもはるかに安い生活コストで豊かに暮らすことができる、といった内容が書かれています。世界経済フォーラムという紛れもなく世界をリードする組織の記事でこのような評価を受けたことは、就任以来取り組んできたことが確実に形になり始めているということ、可能性はあると言われながらそれを顕在化できてこなかったつくばが、都市として新しいステージに入ったことを示していると思います。

もちろん、このような注目を浴びる事業以外にも、福祉・子育て・教育といった市民生活に必須な取組についても、職員が市民に寄り添う仕事を確実に進めてくれています。職員がとても丁寧な対応をしてくれた、という声が数多く届くようになってきました。変化は確実に生まれてきています。もちろんまだ課題は多くありますし、改善するところもあります。令和2年度はそれらの課題に素晴らしい職員たちとともに正面から向き合い、市民とのパートナーシップを深めながら解決に向けて取り組みます。就任以来まいてきた種が形になってきたことを受け、決してこの動きを止めることなくより加速させることで、市民一人ひとりが幸せを感じながら、世界をリードする持続可能都市の歩みを進めていく一年にするために、全身全霊をもって市政運営に取り組むことをお誓いするとともに、議員の皆様からこれまで以上の御指導を賜ることをお願いし、所信とします。

令和2年2月14 日 つくば市長 五 十 嵐 立 青


国立国会図書館インターネット資料収集保存事業で収蔵された、当時のつくば市の当該ページはこちら。


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