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(保存版)つくば市「平成30年度市政運営の所信と主要施策の概要」

つくば市ホームページの「市長の部屋」コーナーにある「市政運営の所信と主要施策の概要」では、最新のものしか掲載されておらず、過去の経緯を辿ることができません。そこで、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業で収蔵された資料から転記をしておきます。なお以下の本文では把握できる範囲で、令和4年時点でのつくば市ホームページで施策等が公開されている箇所へのリンクを追加しました。


平成30 年3月つくば市議会定例会の開会に当たり、予算及び議案等の提案に先立ち、平成30 年度の市政運営に対する所信を申し上げます。

はじめに

市長に就任した直後の所信表明において「市民第一の市政実現のために全力を尽くす」とお誓い申し上げました。平成30 年度も初心を忘れず、皆様との対話を積み重ね、市民に寄り添い、市民第一の市政を推進していきます。

さて、我が国は、人口減少社会を進んでいます。地方創生が叫ばれる一方、東京一極集中が顕著となり、少子高齢化、こどもの貧困などの社会問題も相まって、今後も格差は一層広がっていくことが予想されます。

つくば市は、住みやすく魅力あるまちとして移住・定住先に選ばれ、市域全体としては、年々人口は増加しています。しかし、学校統廃合によって長距離化する通学路、保育施設や新しい住宅エリアにおける公共施設の不足、不十分な街灯など、市民の生活に必要な当たり前が充分に確保されているとは言えません。

私が市長に就任して以来、山積する課題に対して、ひとつひとつ解決の方向性を示していくことを意識してきました。

特に、市の喫緊の課題である県内最多の待機児童への対策として、「保育所を作っても保育士が集まらない」という現場の声を受け、民間保育園等に勤務する保育士等に対し月額3万円を助成する制度を創設しました。

また、積年の課題であった「水道事業の慢性的な赤字解消」に向けて、市議会の皆様と議論を深めさせていただくことができ、水道料金改定について全会一致でご同意をいただきました。

しかし、手をつけられた課題はまだまだ一部でありますので、平成30 年度は、つくば市が抱える諸課題の解決に向け一層加速させる1年にしたいと考えております。

それぞれの道筋は、必ずしも全員が満足する結果とはならないことは承知しています。ひとつの正解が存在しない中で、丁寧な対話を積み重ねることが、市民第一の市政につながり、私が掲げる「世界のあしたが見えるまち」の実現につながっていくと考えています。

それでは、平成30年度の重要課題とその対策の方向性について申し上げます。

(1)まちづくり

新年度のまちづくりの最重要課題は中心市街地の活性化です。とりわけ、昨年の西武筑波店、先月のイオンつくば駅前店の撤退は大きな衝撃でした。大変残念ではありますが、一方で、中心市街地にはつくばならではの魅力や資源が数多く存在することを忘れてはなりません。これらを今まで以上に上手にいかしながら、中心市街地の魅力向上やにぎわい創出などの都市再生を実現するため、現在、「中心市街地まちづくりヴィジョン」の策定を進めています。このヴィジョンに基づき、商業や交流などの多様な機能が集積融合し、市内外から人々が集う、にぎわいのある空間づくりを進めていきます。

特に、クレオ跡地については、今後の中心市街地や市民の皆様にとって必要とされ、魅力のある施設とするにはどうしたらよいか、検討を早急に進めているところです。

また、人口減少や高齢化が進む周辺市街地においては、買い物・医療などの日常生活の維持やコミュニティの活力低下などの課題も出てきており、地域ならではの魅力を引き出しながら、住みよく活気のある地域づくりを進めていく必要があります。その第一歩として、周辺市街地のまちづくりや交通について御意見を伺うための懇談会を地区別に計22回実施しました。平成30年度も地域の声に丁寧に耳を傾けながら、地域固有の特性・資源をいかし、地域が主体となった市街地振興活動を支援していきます。

公共施設跡地利用については、茎崎庁舎、谷田部庁舎、上郷高校跡地について、公共施設としての利用可能性を検討する一方で、サウンディング型市場調査も実施しました。また、高エネ研南側未利用地についても、サウンディング型市場調査を行っているところです。北部地域には旧山口小学校に加え、秀峰筑波義務教育学校の開校に伴い、4月から9校の廃校が生じます。これらの跡地について方向性を示していくことも、今後の重要なテーマとなります。

市民意識調査等のアンケート結果によると、現在の住環境について、住みにくいと感じる主な理由としては、「交通の便が悪い」ことが上位を占めている状況です。現在、交通体系の改編の検討を進めており、10月には第一弾の改編を行いたいと考えております。

(2)福祉

街の持続的な発展のためには、若い世代の活躍や働きが重要であり、そのために市が担うべき役割の一つとして、保育環境の改善があると考えます。平成29年度は、民間保育園等に勤務する保育士等へ月額3万円を助成する制度を創設しましたが、引き続きこの助成を継続し、待機児童解消と保育環境の充実に取り組みます。

多くの高齢者や障害者等、一人で公共交通機関を利用することが困難な市民が送迎や買い物などの日常の移動等に不便を感じていることから、交通体系の改編に加え、「福祉有償運送」への補助を創設し、NPO法人などの協力をいただきながら、皆様の移動をサポートしていきます。

こどもの貧困は、全国的な課題であり、つくば市では1200人を超えるこどもたちが就学援助を必要としている状況にあります。これらの課題に対応するため、学習支援事業の助成を開始し、さらに、小中学生の家庭を対象としたアンケートにより、精緻に現状を調査しているところです。平成30年度は、社会福祉課内に「(仮称こども未来室」を新設し、格差が格差を生む負の連鎖を断ち切り、将来世代に貧困を継続させない仕組みづくりを進めていきます。

(3)教育

教育については、門脇教育長の指揮のもと、社会力を育てる教育への転換を進めています。「人と人とがつながり、社会をつくる力」により、それまで自分が身につけた知識や技能を自ら進んで発揮し、社会の現場で誰かのために活用していけるようになることを目指します。

その一環として、生涯学習部門を市民部から教育局に移行し、組織としても社会力の育成を推進する体制を整えます。本年4月には、義務教育学校3校が同時に開校します。それに伴い、スクールバスの整備や児童クラブの設置を行います。

平成30年度はつくば市の教育行政において、大きく方針を見直していく1年とします。総合教育会議での議論、学校等適正配置計画の見直し、生涯学習の推進、既存施設の改修などを本格的に行い、ハード、ソフト両面からの整備を計画的に進めていきます。

(4)経済振興

経済振興については、平成30年度は産業振興課内に「(仮称スタートアップ推進室」を新設します。スタートアップとは、「新規事業領域を開拓し急成長する会社のこと」を表します。つくば市には、170を超える公的機関や民間の研究所が集積しています。これらの組織で生み出された技術シーズの事業化等により、新たな産業を生み出し、つくばの持続的な発展につないでいきます。現在、つくば市におけるスタートアップ推進のための戦略策定を進めており、平成30年度は、スタートアップ推進の拠点とするため、産業振興センターの大規模な改修を行います。

また、つくば市の雇用や成長を支えてきた地元企業の育成にも引き続き取り組んでいきます。地域が元気になるためには、地元企業の持続可能な発展は欠かせません。

その仕組みづくりとして、公共工事に関わる「担い手三法」に定められている「発注者の責務である、受注者の適正な利潤の確保」などを念頭に置いた入札制度方針の見直しを、最低制限価格へのランダム係数導入の検討と合わせて一体的に行っており、地元企業の受注機会の確保、育成及び入札不調等を極力回避できるような仕組みづくりを考えております。

(5)科学技術

筑波研究学園都市の閣議了解から55年経ちますが、市民意識調査の結果によると科学技術の恩恵を市民が感じられないという意見が5割を超えました。

科学技術により市民生活の向上を図ることは、研究学園都市が果たすべき使命と考えています。そのため、平成29年度は「政策イノベーション部」を設置し、「つくばSociety5.0社会実装トライアル支援事業」や「RPA、ロボットによる業務の自動化の実装事業」を開始しました。平成30年度は、その取組を市の政策や社会課題の解決に取り入れることで、科学技術の恩恵を市民が実感できるようにしていきたいと思います。

(6)行政

市政への市民参加を推進する取組として、現在、市民参加推進に関する指針や、審議会等における市民公募委員の選考等の要綱、大規模事業の進め方のルール化等を検討しています。これらの取組により、行政経営の適正化・透明性の向上につないでいきたいと考えております。

また、現在、公文書管理の指針等の策定も進めており、情報公開や会議公開等とともに、市民に対して開かれた行政運営を行っていきます。

平成30 年度予算の概要

歳入面では、つくばエクスプレス沿線開発の進展と人口増加に伴い、個人市民税や固定資産税の増加が続いており、税収は、前年度を上回ると見込んでいます。歳出面では、安心の子育てのための保育環境の充実や放課後児童対策、未来を担うこどもを育てる教育環境の整備、急速な高齢化に対応するための保健福祉事業、安全・安心に暮らすための防災・防犯体制の強化やクリーンセンター 、 リサイクルセンターの整備などに着実に取り組まなければなりません。

市民に寄り添う市民第一の市政による「世界のあしたが見えるまち」の実現のため、平成30年度の予算を 編成しました。

その結果、平成30 年度当初予算の規模は、

一般会計   856億1 700万円
特別会計   457億4 884万2千円
水道事業会計  78億  193万8千円
合計    1 391億6 778万円 となっています 。

このうち、一般会計における前年度当初予算との比較では、20億5500万円、2.3%の減となっています 。予算規模が縮小した主な要因は、学園の森義務教育学校とみどりの学園義務教育学校の建設が終了したことによるものです。

歳入面では、個人市民税、固定資産税などについて増加が続いており、市税全体では、前年度比2.7 %の増となっています 。

歳出面では、民間保育園 の運営委 託料や障害福祉サービス扶助費などの民生費が引き続き伸びています 。さらに、クリーンセンターの 設備 改良事業やリサイクルセンター建設事業などの大きな事業を進める衛生費についても、前年度と比較し、9億5981万2千円、10.4%の大きな伸びとなっています 。

平成30年度の主要施策

それでは、市民に寄り添い、「世界のあしたが見えるまち」を目指して進めていく平成30年度の主要施策について申し上げます。

平成30年度の市政運営も、引き続き、私が公約に掲げた6つの柱を軸として取り組んでいきます。

(1)徹底した行政改革~市民第一のつくば

まず、1つ目の柱である「徹底した行政改革~市民第一のつくば~」を進めていくためには、市役所が、その名のとおり、市民に役立つところとなることが必要です。

そのために、職員の人材育成、行政の見える化、市民参加のまちづくりを進めます。

具体的な取組としては、

職員が能力を最大限に発揮できるよう、昨年から導入したリーダーシップ能力開発研修に加え、厳しい環境の中でも成果を生み出せるリーダーを育成するため、国外の社会的企業やNGO等に職員を派遣し、自分のスキルをいかして、社会の課題解決に取り組む研修を行います。

また、職員の事務効率化、労働時間削減など、自治体での働き方改革の推進のために、現在、民間事業者と共同研究を行っているRPA、ロボットによる業務の自動化の実装に向け、改善効果の測定を行います。併せて、ワークライフバランスの取組をさらに推し進め、仕事と生活が良い相乗効果を生み出す職場環境を目指します。

さらに、手狭になっている本庁舎の就労環境を改善するとともに、市民が利用できる会議室等を備えた分庁舎をリース方式で設置します。

市民参加のまちづくりの取組としては、ひとりひとりの市民と直接交流できるタウンミーティング「会える市長」を引き続き開催するとともに、地区相談センターの職員が直接地域に入り込み、皆様の声を伺い、ワンストップで解決までの対応にあたります。

さらに、市民が市政に直接参画できる機会を増やすため、現在、策定を進めている「つくば市市民参加推進に関する指針」及び「つくば市市民公募委員の選考等に関する要綱」に基づき、市政への市民参加をより一層推進していきます。

我が国は、人口減少や少子高齢化など様々な課題に直面しており、つくば市においても2036年をピークに人口が減少に転じると予想されています。これからの10年は、未来に向けた「持続可能なまちづくり」を進める上で重要な時期でありますので、つくば市未来構想と戦略プランの見直しを行っていきます。

(2)安心の子育て~こどもとママパパにやさしいつくば

次に、2つ目の柱である「安心の子育て~こどもとママパパにやさしいつくば~」についてですが、妊娠、出産、子育てに切れ目のない施策を展開して、安心して出産できる環境をつくり、未来を担うこどもたちを育てる教育を進めます。

具体的な取組としては、

保育環境の整備については、待機児童対策としまして、その要因の一つである保育士不足解消のための民間保育園等に勤務する保育士等への助成を引き続き実施します。また、保育施設の整備等を定めたつくば市子ども・子育て支援プランについて、プランにおける見込を大きく上回る現在の保育需要に対応できるよう、保育の供給体制を見直し、今後民間保育園等をさらに整備するよう改定を行いました。これに基づき、民間保育園等の更なる整備及び運営への支援体制を整え、待機児童解消に向けた保育環境整備に取り組んでいきます。

放課後児童対策では、公設民営児童クラブの保護者負担軽減に向けた取組を、保護者と丁寧な意見交換を重ねながら引き続き進めるとともに、民間保育園等が実施する児童クラブへの運営費支援も行っていきます。児童館で実施する公設公営児童クラブでは、児童クラブニーズの高まりにより、児童館の過密状態が課題であることから、児童クラブ専用施設の設置を進め、放課後児童の安全でゆとりのある居場所づくりを進めていきます。

また、老朽化した公立保育所や児童館の修繕を迅速かつ計画的に実施していきます。特に、耐震基準を満たさず土砂災害特別警戒区域に立地する北条保育所については、別の場所への建て替えを進めます。

教育環境の整備については、幼稚園及び小中学校の適切な維持管理を行い、必要な修繕には迅速に対応します。これまでに、全小学校普通教室へエアコン設置を完了し、平成30年度は、全中学校普通教室へのエアコン設置を完了します。また、(仮称)新谷田部学校給食センターの建設に着手し、長期的に安定した給食供給体制を整備していきます。

4月には、秀峰筑波、学園の森及びみどりの学園の3つの義務教育学校が開校します。この新設3校では、各学校敷地や隣接地に配置された専用施設において、公設の児童クラブを開設し、市の責任において児童クラブを運営していきます。また、7つの小学校と2つの中学校を統合する秀峰筑波義務教育学校においては、スクールバスを運行し、通学距離が延びる児童生徒の安全確保を行います。

安心して出産できる環境づくりのためには、不妊治療費の助成や妊婦健診委託事業に加え、産婦健診委託事業、産後ケア事業を新たに開始し、出産直後の育児不安を持つ母親へのサポートを充実させていきます。また、母子保健コーディネーターを設置し、子育てに関する相談体制の強化を図り、母子の多様なニーズに寄り添っていきます。

さらに、産婦人科施設整備に当たり資金を助成する制度を創設し、市民が市内で出産できる施設の整備を推進していきます。

(3)頼れる福祉~すべての人が自分らしく生きるつくば

次に、3つ目の柱である「頼れる福祉~すべての人が自分らしく生きるつくば~」についてです。

安心して豊かな老後を過ごせる環境づくり、障害があっても自分らしく学び、生活できる環境づくりなどを進めます。

具体的な取組としては、

ひとり親家庭の生活の安定に寄与するために、これまでの母子家庭等児童福祉金をひとり親家庭等児童福祉金に名称を改めるとともに、低所得ひとり親世帯に対して、助成金を増額します。また、生活困窮世帯のこどもへの支援として、平成29年度より開始した子どもの学習支援事業の拡充を図ります。さらに、こどもの格差解消に本格的に取り組むため、新設の「(仮称こども未来室」を中心に、貧困の連鎖を断ち切る仕組みづくりを進めていきます。

障害者支援については、障害のある児童生徒の安全確保と学校生活や学習の支援のために、特別支援教育推進室を設置し、特別支援教育支援員の増員を実施しました。

しかしながら、まだすべての障害のある児童生徒に支援が行き届いているとは言えませんので、平成30年度は、さらに特別支援教育支援員の増員を行います。また、これまで就学前に保護者の相談を受けていた就学相談員を特別支援教育相談員と名称を改め、人数を増員して、就学後も相談を受ける体制を整えるとともに,児童生徒に適切な支援が行われるよう学校への指導・助言も徹底していきます。

障害児に対する療育訓練と保護者への支援を包括的に実施するためには、児童発達支援センターが必要と考えており、関係者、市民、有識者等から構成される検討委員会を立ち上げ、設置に向けた議論を進めていきます。

障害者が自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう、障害福祉サービスに係る給付等の支援も継続して行うとともに、民間事業者等が障害のある人に必要な合理的配慮を提供するために係る費用を助成する制度を創設します。

高齢者支援については、できる限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、地域包括ケアシステムを推進し、医療・介護・予防・住まい・生活支援などを一体的に提供していきます。平成29年度は、筑波圏域及び茎崎圏域に地域包括支援センターをスタートさせ、地域の身近な場所で相談できる体制づくりを開始しました。今後は、この地域包括支援センターの積極的な活用を進めるとともに、他圏域への配置も順次検討していきます。また、新たな高齢者支援事業としては、高齢者が地域で生き生きと活動する場所づくりを支援するため、補助制度を創設します。

補助を活用したモデル事業を実施していただき、高齢者の生きがいや社会孤立感の解消を図ります。

また、NPO法人等が主体となり実施する高齢者や障害者の移動支援サービス「福祉有償運送」への補助制度も創設し、一人で公共交通機関を利用することが困難な市民の日常生活をサポートする体制を整えていきます。

市民の健康づくりについては、つくばで生き生きと自分らしい暮らしができる事業を引き続き展開し、若い世代も高齢者も積極的に健康づくりに取り組むことができるよう多世代交流出前教室等を継続して実施していきます。

(4)便利なインフラ~広いのに近いつくば

次に、4つ目の柱である「便利なインフラ~広いのに近いつくば~」についてです。

公共交通の充実による市民の利便性の向上を目指すとともに、災害と犯罪に強いまちづくりを進めます。

具体的な取組としては、

公共交通体系について、これまでの利用実績、昨年開催した地区別懇談会における御意見、御要望等やアンケート調査等を踏まえ、10月に第一弾の改編を行いたいと考えております。つくバスは軸となる幹線と、そこにつながる地域の支線を整理し、路線の見直しを行うことで、利用目的や需要に応じたサービスの充実を図り、つくタクは予約センターの体制強化や相乗り率を向上させる運用の工夫などにより、予約を取りやすくするよう改善を行います。さらに、平成31年4月に予定している第二弾の改編に向けた検討も併せて行います。自転車での移動が楽しいまちの取組については、つくば駅周辺の通学路を中心に自転車通行帯を整備するとともに、自転車のまちつくば推進委員会の意見等を伺いながら、つくばならではの安全な自転車走行空間の確保を検討していきます。

また、市内の各所で交通渋滞が発生している状況を受け、交通量把握や整備計画を行う体制を強化するために「(仮称)道路計画課」を新設し、計画的に道路整備を実施していきます。また、昨年「(仮称)つくばスマートIC」の新規事業化が決定し、つくば市内へのアクセス性の向上等が期待されることから、早期供用開始を目指し整備を進めます。

災害と犯罪に強いまちづくりの取組では、土砂災害警戒区域や浸水想定区域などに避難情報を伝達する防災行政無線の整備、職員の災害対応訓練等を進めていきます。

消防・救急救助力強化のため、40メートル級はしご車や救急自動車の更新、障害者や外国人などの通報が簡易になるシステムの導入などに取り組みます。また、児童生徒等の安全確保のため、LED防犯灯を通学路に優先的に設置します。中でも県道であるりんりんロードは防犯灯の設置が遅れていましたが、秀峰筑波義務教育学校が新設され、通学路として利用されることから、平成31年度までに順次設置していきます。

つくば駅周辺の各所においても街路灯設置の要望が多く寄せられていることから、明るいまちづくり協議会事業により、中心地区内の骨格となる道路に街路灯を整備し、歩行者の安全を確保していきます。

冒頭に申し上げた水道料金を改定することに伴い、上水道未整備地域への幹線管路の整備、要望のあった地域内の管路整備を実施するとともに、市北部の低水圧地域の解消に向けた配水管の整備、老朽化施設の更新などを計画的に実施し、サービスの向上に努めていきます。

さらに、資源を有効活用するための施設整備として、平成31年4月の供用開始を目指してリサイクルセンター、平成32年4月の供用開始を目指して古紙・古布などのストックヤード、廃食用油精製施設を整備していきます。また、引き続き、クリーンセンターの設備改良事業を進めます。

高エネ研南側未利用地、谷田部庁舎、茎崎庁舎、上郷高校跡地、秀峰筑波義務教育学校開校に伴い閉校する筑波地区小中学校9校及び旧山口小学校については、公的利活用、民間利活用等、方向性を想定し、地域の皆様の声も聴きながら、利活用方策を検討していきます。

(5)活気ある地域~地元で頑張る会社と人が報われるつくば~

次に、5つ目の柱である「活気ある地域~地元で頑張る会社と人が報われるつくば~」についてです。

新たな産業の創出と地元企業の育成、新たに農業を志す人への支援を行うとともに、科学技術を市民の生活にいかすための取組や旧市街地の振興を図ります。

具体的な取組としては、

つくばでの創業、とりわけスタートアップ施策を推進し、新しいビジネスが始まるまちとなるための取組を進めるとともに、地元企業の育成にも引き続き力を注ぎます。

入札制度方針の見直しと最低制限価格へのランダム係数導入の検討を一体的に進めるほか、つくばの中小企業の高い技術を大企業の製品開発等につなげるなど、マッチングのための支援拡充を図ります。

また、「つくばSociety5.0社会実装トライアル支援事業」の取組を市の政策や社会課題の解決に取り入れ、科学技術の恩恵を市民がより実感できるようにするなど、最先端の科学技術の推進と支援についても取組を進めていきます。

農業の支援については、農業という生活に憧れて、農業を始めたいと思う人が、つくばに来れば農業で食べていける環境を整えるため、新規就農支援に取り組むほか、「つくばワイン・フルーツ酒特区」を活用するなど、地域農業の持続的発展を担う農業経営者の育成や農業担い手支援事業を推進します。

1月には筑波地区においてイノシシによる人的被害が発生してしまいましたが、今後は「つくば市鳥獣被害防止計画」に基づき、イノシシ捕獲報奨金の増額など捕獲支援を拡充し、人的被害や農作物被害等の防止に努めていきます。

また、活気ある地域づくりに向けて、人口減少や高齢化が進む周辺市街地においては、それぞれの市街地の現状や課題、資源、魅力等を「地域カルテ」として整理するとともに、地域住民や団体などと一緒に、未来志向で地域に必要な活性化策等を考えていく場として地域毎の勉強会を開催していきます。

さらに、豊かな自然を未来に引き継いでいく取組を進め、10月につくば国際会議場をメイン会場として開催される世界湖沼会議を契機として、霞ケ浦や牛久沼の流入河川の水質浄化をさらにPRしていきます。

(6)誇れるまち~「一緒に住まない?」と誘いたくなるつくば

最後に、6つ目の柱である「誇れるまち~『一緒に住まない?』と誘いたくなるつくば~」についてです。

豊かな住環境と景観づくり、文化芸術と伝統が薫るまちづくり、スポーツでつながるまちづくり、つくばの資源をいかした観光の振興、移住・定住促進に注力するとともに、こうした取組の情報発信力の強化に努めます。

具体的な取組としては、

中央図書館の開館時間や無料駐車時間を延長するとともに、市民に愛される図書館の在り方についての検討も進めていきます。また、文化芸術の拠点であるノバホールやつくばカピオ等を会場として、つくば国際音楽祭や芸術文化公演、市民文化祭等を開催し、隔年で開催しているメディアアートフェスティバルについても拡充を検討します。こうした取組によって文化芸術の振興を図るとともに、市民が集う施設の維持管理や計画的な改修を進めていきます。さらに、各地区の歴史や伝統を伝えるとともに、地域資源ともなる文化財の適切な保存と活用を図る「(仮称)文化財保護計画」を策定します。

平成31年度開催の「いきいき茨城ゆめ国体・いきいき茨城ゆめ大会」に向けて、本年6月にはアーチェリー競技、10月には自転車競技(ロードレースのリハーサル大会が開催されます。本大会の成功に向けて入念な準備を行い、市民・企業・団体・行政の協働による国体の成功に向けた取組を進めます。また、大会の開催を契機に障害者スポーツの地域への浸透を図るほか、スポーツのまちづくり推進に向けてつくば市スポーツ推進計画の見直しを行い、筑波大学や研究機関、団体等と連携を図りながら、すべての市民が、いつでも、どこでも、体力や年齢、趣味や目的に応じてスポーツに親しむことができる環境づくりに取り組んでいきます。

世界のつくばとしての観光拠点づくりでは、茨城県や県内関係団体等と連携し、MICE誘致の促進を図ります。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックも見据え、外国人観光客への「おもてなし」の一環として多言語対応の観光アプリを作成・提供するなど、筑波山地域ジオパークや科学技術の集積といった資源をいかした観光PRを推進します。ハード面では、筑波山頂観光用水渇水対策や筑波山梅林周辺の整備等、観光客の利便性や満足度の向上に努めるとともに、現在行っている市内のアウトドアフィールド資源調査の結果を踏まえながら、市内アウトドアフィールドの拠点整備を検討していきます。

つくば市の中心市街地であるつくば駅周辺エリアにおいては、市民の皆様からアンケート等で商業施設や公共施設の御要望をいただいております。こうした声や12月定例会における議会の決議を受けまして、クレオ跡地の一部に公共施設を導入する場合の具体的な検討を進めます。

加えて、ペデストリアンデッキや公園等のパブリックスペースに、実証的に遊び心をくすぐるようなレクリエーション空間やたまり場をつくり出し、市内外から多くの人々が集える場を創出するプレイスメイキング事業にも取り組みます。

こうした取組と合わせて、つくば市が「住みたい、住み続けたいまち」であることを多くの方に知っていただくためには、戦略的なプロモーションを展開していかなければなりません。そのため、プロモーションに関するまちづくりアドバイザーを招へいし、つくば市内での移住体験ツアーや動画配信などを戦略的に実施しながら、つくばの魅力をPRしていきます。

むすびに

以上、平成30年度の市政運営の所信の一端と、主要施策の概要を申し上げました。

平成30年度も引き続き、子育てや教育という未来への投資に重きを置いた予算となっています。本日は最後に、なぜ私がこどもへの投資を重視しているのかをお話ししたいと思います。

先ほど申し上げましたが、つくば市には、就学援助を必要とするこどもが1200人を超えています。

社会的貧困状態にあるこどもは、その格差が負の連鎖として大人になっても続いていきやすいと言われています。

反面、そうしたこどもへ教育等の投資をすることにより、投資した額以上に高い効果が出てくるということも、近年の研究ではスタンダードになりつつあります。ソーシャルラダー「社会的階層」とも言われ、こうした社会的格差を本人で解決することは非常に困難です。行政が支援を差し伸べることによって、格差をなくし、将来のつくば市や日本を支えていく若い世代がしっかりと育っていって欲しいと思っています。行政は場当たり的な対策ではなく、長期的な展望を持って持続可能な施策を展開していかなければなりません。

国連では、2030年までの世界共通の目標として定めた「持続可能な開発目標」SDGsを掲げています。この目標は、「貧困、飢餓、健康、教育、エネルギー、経済成長、まちづくり」などの分野における17の大きな目標とそれらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。日本政府においても、内閣総理大臣を本部長とするSDGs推進本部が設置され、本格的に取り組まれているところです。SDGsの理念である「誰ひとり取り残さない」という包摂性の精神、普遍的価値としての人権の尊重、男女の平等などは、私が目指す市の在り方と一致しており、つくば市としてもSDGsの考え方を取り入れることで、先人たちが紡いできたまちを、より良い形で次の世代につなげていきたいと思っています。

平成30年度の予算案では、持続可能な都市の実現に向けて、各種課題に対応するための様々な事業を盛り込みました。持続可能なまちづくりを念頭に置いた施策を展開し、日本が抱える各種課題にも適応できるような社会制度を市民と一緒につくっていくことで、私が掲げるつくばのヴィジョン「世界のあしたが見えるまち」につなげていきたいと考えています。

つくばに生まれてよかった、住んでよかったと、心から思える市民第一の市政を目指し、平成30年度も引き続き全身全霊を懸けて市長職を全うしてまいります。

平成30年2月21日 つくば市長 五十嵐立青


国立国会図書館インターネット資料収集保存事業で収蔵された、当時のつくば市の当該ページはこちら。


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