【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Arcarsenal」アット・ザ・ドライヴイン
「童貞ちゃうわ!」って陽が叫んだら、騒がしかった教室が静まり返って、どか~んとウケた。こっそり付き合っているひろみは赤面してクラスを飛び出した。高校受験生だというのに、夏はまだだからか、みんなに緊張感がない。
昼休みが終わってもひろみは戻ってこなかった。陽は午後の歴史の授業を窓の外から見ながら過ごす。「波多野!」と陽は呼ばれた、3回目で気づいた。教壇の教師が「今のところ読んでみろ」と言うので「聞いていませんでした」とあっさり認める。
それで教師が仕方ないなあという感じで頭を掻いたときだ、ひろみが教室の前の扉から入ってきて、「波多野くん、結婚しよう!」と叫んだ。怯んだ陽は「う、うん」とためらいがちに。矢継ぎ早にひろみが言う。
「子どもできちゃったの!」
再び静寂がクラスを襲って、間があった後、悲鳴が上がった。誰もが大袈裟な嘘だと思った。でも、たった15歳のひろみが「うっそぴょ~ん!」と言うはずはなかった。
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