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【400字小説】ポールvsリンゴ

【400字小説】ポールvsリンゴ

「ジョンの了承なしでリリースされたことに
憤慨ですヨ」と我妻さんは語尾こそ
《ヨ》にふさわしかったが、静かに怒っていた。

『NOW AND THEN』が発売されたのは
去年の秋だったのに、
春になった今でもしつこく怒っている。
「そもそもジョージがいないじゃんかヨ」って
居酒屋のBOSEのスピーカーにガンを飛ばし、
流れている『NOW AND THEN』に
睨みを利かせてる。

遠くないいつか、ビートルズの遺された
メンバーも逝くだろう。
今のうちに曲を発表するのは
ありがたいことだとわたしは思うのだが。
火に油を注ぐだけなので
「そうですね~」とすり抜けて本音は隠している。

わたしはあの曲が好きだ。
悲しい曲だとしても好きだ。
そもそも今の世の中、
明るい曲しか流行っていない。
わたしは胸を締め付けるメロディを欲している。

我妻さんに「きみもポールとリンゴのやり方に
納得してないよな!」と厳しい語尾で言われて、
背骨がジャキンとした。
わたしは我妻さんに唖然。

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