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【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「SUN MYSELF」Husking Bee

「《太陽》って名前が重い」が彼の口癖だった。部屋の上部にある横長の窓ガラスにはアスファルトの地面が広がっている。自転車と歩行者の足。排水溝の匂いがうっすらしている。陽光にはお目にかかれない。家賃が安かったから、部屋を借りた、マンション街の下に半分埋もれて。

太陽の彼は暗い性格で名前負けしている。彼女はいない、一度もいない。28年間を太陽自身に捧げてきた。死んだ父親が名付け親で、その理由は想像できるのでここには書かない。少なくとも父に悪意はなかった。たくましく生きて欲しかっただけ。最期の言葉は「太陽ごめんな」で、病室で見守られて逝ったから、それは幸せそうな顔だった。残された家族は母親と妹と太陽。

彼は1年の留年をして受験し、高校デビュー。見違えるように明るくはならなかったけれど、影が自分らしさだって胸を張れるように。父の死亡保険で少しマシな部屋を借りた、地上1階。そこで今も幸せに暮らしている。

https://open.spotify.com/playlist/5rB5QR6w01DrYgGc8klsln?si=LIeuWnfoTW2zE-il6s7jDQ

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