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【400字小説】sky is joke

田原さんは空の上にまだいて、わたしたちを見守っているのか。それとも空の向こうに行ってしまったのか。

田原さんが亡くなる前に貸してくれた吉田修一はコロナが明けた今でも読んでいなくて、6年も前の話。村上春樹の全集に至ってはブックオフに売り放ってしまった。大した金額にもならなかったのが笑い話。

青い空は嫌いで、田原さんを思い出すから、できれば曇り空が続けばいいのにと願っている。

わたしにとっての田原さんはなんだったの? 友だちでも家族でも知り合いでも恋人でもなかった。毎月ネオンホールのオープンマイクで出会うだけのおじさんだった。それなのに訃報を知ってから今の今まで、消化できていない。オープンマイク仲間たちは「田原さん、もう来なくなったね」とか「そういえば死んじゃったね」とかわたしにとっては笑えない話にしてる。人として好きだったんだな、わたしは田原さんを。イケオジでもないから、好意を寄せるほど笑えるだけ。

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