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【400字小説】恐れのフライパン返し

音楽好きなら一度はチバユウスケになりたいと
憧れたんじゃないだろうか。
でも、なれはしないし、きみはきみで……、
って言わせんなよ。

「うまくひっくり返す自信がない」と
鉄板のお好み焼きを前にして弓香が。
ビールを早くも2杯飲んでいた俺だから、
こちらの方こそ自信がなくて
「ダメならダメでいいじゃん」と
いい加減なことを言って逃げた。
自信を持つって大事で、
持てただけでパフォーマンスは
格段に違うって持論。

自信のない弓香を見て
ひっくり返せないだろうなあと
思っていたら、案の定で。
形の崩れたお好み焼きが無様。
だからこそ笑って励ますつもりだったのに、
弓香は怒り始めて……。

ひとりになった喧嘩のあとは虚しくて、
ひとりでは多すぎるお好み焼きを
食べている、ひとり。
2時間くらいし経った頃だろうか、
俺から謝らないと始まらないかなと
いつも通り諦めて、弓香に電話を。

そしたら知らない女が出て、
「今、弓香、The Birthday歌ってる!」と言った。

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