【400字小説】ケチャップぬるぬる
口元の赤いそれにいやらしさを感じてしまった、性。
でも、わたしたちの関係はステイ。
待て、のままでお預け?
ヤチホくんが言ってくれないだけ。
このわたしを慰める人はもともといない。
ひとりだった、ずっと。
一生誰とも愛し合わないと覚悟していた、もっと。
それが自宅でオムライスご馳走される仲になれて意外ヨ。
出て行けって、言われないかな、怖いな。
「This is 向井秀徳は信じられる」と
彼は言ってる。
裏を返せば向井さん以外は
誰も信じないってことか。
わたしのことも信じられないのに、
抱き締めもしないつもりか。
そう思ったら都合が良いねって
少し腹が立つかも。
女の方から襲ってみるっていうのは禁じ手かしら。
《たかの》っていうシンプルなおでんやさんで酔いたい。
うどんも天ぷらもおいしいみたいだし。
日本酒はヤチホくん飲まない、
ワインが好きで、キザじゃない?
「しようか」とヤチホくんが突然。
気づいたら、頷いていて、
口元の赤いそれを舐めてた。
◆◆◆
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?