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【400字小説】知らない右手

あの日、5階建てのマンションの屋上で
ひとりゲリラライブを始めた@ド*平日。
『ゲット・バック』を演奏したのは、
ビートルズをオマージュして。

10分もしないうちに警察官がやって来て、
演奏を止めに入った。
ぼくがジョン・レノンだったら許されたかも。
でも、警察官たちはまだ若かったので、
ジョンのことを知らないかもしれないと
諭されている間、ずっと思っていた。
パトカーに乗せられることもなく、
機材を撤収したら許してくれた。

しかし、彼らが帰ってから5分もしないうちに、
うっすら怒りが湧いてきて、
行き場がないから、かなりストレスになった。
発振したディレイのように音量が大きくなっていく。
気持ちに制御するフィードバックのツマミはない。
ただ爆発しないよう耐えるしかなかった。

しばらくして近隣のマンションから
爆音で音楽がかかる。
我慢できず「うるせえ!」と屋上からお見舞い。
すると遠方から狙撃されて、
それ以来ぼくは右手が使えない。

◆◆◆

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