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【400字小説】心の隙間、何で埋めてる?

加齢で体力も顕著に落ちてきたし、
心にも余裕がなくなって来ていると公言。
その一方で心に虚しさがあることは誰にも言っていない。
それを事細かに言語化するのは不可能だから。

「膝が痛くてさあ」とか「高校生の娘が
学校行けてなくてね」とか
友人に口にする言葉はマイナスなことばかりだと
オムライスを半分食べたところで気づいた。

「ごめん、愚痴しか言ってなくて」
「我々も年ですからネ。
いいことばかりありゃしませんよ」

友人はやさしい。
やさしすぎて鬱病になるくらい。

「唐突だけど、心に空洞があるのね、俺。
きみはそ~いうのないのかね。
あるとしたらどうやってそれを埋めているのかな」

すると友人は考え込んでしまって、
1分黙ったままだった。
だけど口を開くとこう言った。

「その空洞に風が通るじゃないスか。
それが爽やかだなって感じます」

ぐうの音も出なくて、オムライスを食べることに
集中したけれど、最後の一口が
どうしても食べられなくて、残した。

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