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【400字小説】杖をついている人を突き倒すくらいの怖さ

去年の秋から転職して働き始めた職場が
居心地良すぎて、何か怖かった。
15人ほどの同僚はみんないい人だし、
仕事ができる人ばかりで、やさしくもあり、
ゾッとするくらいなんだよね。

年末の新人歓迎会の飲み会も愉快すぎた。
社長は丁寧な言葉選びをする人で、
誰にでも敬語で話す。
だからこそ怖くて、悪いことに見舞われる予感しかない。
そろそろ変な宗教に勧誘されるんじゃないかとか、
いよいよ経営が行き詰まって
唐突に倒産するんじゃないかとか、
勘ぐったり不安になったりするんだ。

鼻くそほじくって呑気にしていたら、
後ろから日本刀で首を落とされる夢を
何回も見るのは仕事と無関係とは思えない。
この春に新入社員が2人来た。
気持ちの良い子ばかりで気持ち悪かった。

ある日、そんな後輩から飲みに誘われる。
酔っ払った彼らに「先輩(☚わたし)がいい人過ぎて怖い」と
打ち明けられた。
同じ思いをさせていたとは、
なんていい人なんだ!と自分を責めたよね。

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