うれし涙のメカニズム
エモの研究
まとめ:悲しみの正体とは「物事が失われたときに感じる感情」というのが、僕の仮説です。正確に書くと、「モノ·コトへの期待値に対する負のフィードバック」になる。
うれし涙って、実は悲しみが潜んでいると思うんですよね。
とある20代前半の女性から聞いたエピソードで気づきました。
最近、悲しかったことですか。
そうだなあ。
彼氏と家でネットショッピングをしてたら、急に昔のことを思い出して泣けてきちゃったんです。
小さい頃、うちの親がすごい厳しくて、余計なものは一切買ってもらえない家で。友達が普通に買ってもらえるようなものも、基本的に買ってもらえない。それが辛かったんですよね。
それを急に思い出しちゃって、なんかボロボロ泣けてきて。
いま、大人になってお給料もらえるようになって、ネットで好きなもの、ポチポチ買えるようになったんだなあって。
ええ話ですね。
この涙には、ニュアンスが2通りあります。
・あの頃悲しかったなあ(涙)
・いまって幸せだなあ(うれし涙)
これがどっちにも転びうるけど、まあうれしさが勝っている状態が、うれし涙だと思うんです。
構造としては、この4ステップです。
1.デフォルトが悲しい状態(期待よりマイナスの状態)
2.それを意識しないよう感情を押し殺している
3.悲しい状態を挽回すること(期待にとどくようなプラスのこと)がある
4.フタをしていた悲しい記憶を想起しつつ、うれしいのに泣いてしまう
ベタな例を考えると、こんな具合です。
職場で上司にほめられてうれし涙の巻
1.自分はなんて仕事ができないんだ、とうんざりしながら、働いている。
2.仕事の悲しみ(期待よりマイナスの状態)に打ちひしがれていたら、ますます仕事はできないから、必死に感情にフタをしている。
3.がんばった仕事で成果が出て、疎まれていると思ってた厳しい上司から、不意打ちで激励される。
4.がんばったことを評価されたうれしさと共に、押し殺していた悲しみのフタが開き、我慢してがんばった記憶などがあふれて、泣いてまう。
これって、自己憐憫の涙ってやつとも紙一重なんですよね。
「自分に同情するな、自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」って永沢さんも言ってました。(©ノルウェイの森)
その自己憐憫の悲しさを押し殺して、打ち勝ち、うれしさを獲得したときに流す涙を、永沢さんはなんと評するんでしょうか。
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