ブヒブヒ言うだけ

ABCお笑いグランプリ、初の決勝に進むことができた。
昨日の結果にまだブヒブヒ言っているようでは、たくましい顔つきで大阪に臨むことが出来ないのではないかという懸念は大いにあったけれども、進出しようが敗退しようが今日は一日この結果に頭をもたげることには変わりなかった。ブヒブヒ言うことは確定していた。それくらい、前々から6/18(金)の結果発表というスケジュールはカレンダーの中で色濃く存在感を放っていた。

芸人を名乗り始めて、初めて決勝という舞台に勝ち上がることが出来た。
少し気を抜くとブヒブヒ書き連ねかねない。本当に、本当に、喉から手が出るほど欲しかった結果だった。


2017年に初めて最終予選に上がることが出来た。事務所の仲間もいない、先輩方とのつながりもそんなに無い、そんな中で大阪への夜行バスが走り出した。熾烈なバス席・友達争奪戦の結果、僕の隣の席に座ったのは全く面識のない、未だ駆け上がる前のガンバレルーヤ・まひるさんだった。初めに軽く挨拶を交わしたが最後、ろくすっぽ話しかけることもできず、むしろ夜行バスでお喋りを試みることは失礼ではあるまいか、前に座ってるトンツカタン森本さんはいやに楽しそうだな、夜行バス用の枕を買ったほうが良かったな、とか考えるばかりの車内だった。ちっとも戦いに行く心境ではなかった。
道中でスタッフさんから香盤の発表があり、60組程度いる中で僕たちは2番手、トップバッターは大阪の大先輩だった。「いよいよ大変なことになってしまったな」と思った。大阪がホームの漫才師の方がしっかり会場を沸かせた後に現れるのは東京のぺーぺーコンビ、澱みない標準語、目の肥えた関西のお客様から総シカトされるような妄想に駆られてヒリヒリした。
東京と大阪はある種隣町の学校のようなもので、根っこの文化は共通して存在するはずなのに、噂が噂を呼んで先入観が膨らんでいく。「東京芸人は全員シカトされるらしい」というめちゃめちゃな噂に怯え切っていた。
実際のところ、思っていたよりはずっと笑いをいただくことができて、「標準語なだけで石を投げられるのではないか」みたいなめちゃめちゃな被害妄想を恥じるとともに、ああ、やれないことはないんだ、いけるんだ、と実感する機会になった。

そこから3年間、最終予選に続けて進むことが出来た。夜行バス用の枕を持参することも覚えたし、バスの隣の席もきちんと仲良しを確保できた。バスの車内でウエストランドの井口さんが飲み物をこぼすガヤガヤにも加われたし、当時ツイートした四千頭身のバシ君が枕を膨らます動画は今なお「推ししか勝たん考古学者」たちによって定期的に「掘り起こしいいね」されている。ABC放送の建物周りの空気にはすっかり慣れていったし、合間の楽しい過ごし方もバリエーションを増していった。1年に1回訪れる最高の遠足体験だった。
そして、律義に、きちんと「最高の遠足体験で良いわけないだろ」と翌日の結果発表で目を覚ました。いけるかも、きついけどいけないことはないかも、いけるかも、って感じで敗退を繰り返した。大好きな大会ゆえに、どうしても決勝の空気を味わいたかった。

去年の今頃、どういう気の流れかともかく自信を失っていた。ウイルス的なものによる要因も無くはないけどともかく自信を失っていた。大阪への移動が難しくなったため東京で行われることになった最終予選、寂しさを抱えつつもなんやかんや挑む権利を得た。得たのに、ちっとも自信が芽生えなかった。敗退終わりに過ごした飲み屋で「こんな状態の僕たちが最終予選に残ってしまうのはおかしいのではないか」みたいな最悪な自虐を漏らして、慕ってくれる後輩をがっかりさせ、信頼する同期の仲間にはしっかり叱られてしまった。そんなんじゃいけない、さすがにそんなんじゃいけないと痛感した。
そこからすぐに上向くことはなくて、めっっっちゃ悔しい敗退とかそこそこな地団駄を踏みまくったけれども、なんやかんや悪くない今を迎えることができている実感がある。

いくらなんでもブヒブヒ言ってしまったけれども、ともかく、なんにせよ、勝ち上がれた。めっちゃ最高。絶対ここで止まらない。

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