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ホームラン打ち男

R-1グランプリで、初めて2回戦を突破することができた。

例年であれば3回戦が控えているところを、予選日の縮小により直接準々決勝に進めることになった。2回の勝ちで凛々しい字面の準々決勝進出を勝ち取ることができたのはすこぶるラッキーで、同じ理屈でキングオブコント2020も初めて準々決勝まで進むことができた。ツイてた。
肝心要のM-1グランプリは1回勝っただけで散ってしまったので「2回戦敗退」となってしまった。「負けちゃったならそれはそれで『3回戦敗退』にしてくんないかな」とか思っちゃう、すごくみっともない。M-1だけ回戦の数字を外せたことがない。難儀だ。


もし仮に、宇野が体調不良になってしまったなどして「今日は一人でネタをやってください!」と言われてしまった場合、僕が咄嗟にできるネタといえば「ホームラン打ち男(うちお)」しかない。

「コント、ホームラン打ち男!」というタイトルコールの後、「ホームラン打ち男」というフレーズを2分間に15回くらい放つコントである。フレッシュでエネルギッシュな反面、鋭さ、ポリシー、自分のキャラを売り込むような要素等一切なく、ただ「なんとかウケて欲しい、なんか、なんかウケて欲しい」と念じながら2分間やり切るだけのネタである。
毎年、1回戦に挑む時はいつも「今年は何か、革新的なマスターピースでもってみんなを驚かせるぞ」という顔だけ繕ってぼーっと過ごし、直前になって「また間に合わなかった、、今年も“打つ”しかない、、」とうなだれながらホームラン打ち男を披露していた。
絶対に当落線上だろうという手応えでなんとか合格し、「2回戦は…こんなこなしているネタで戦えるわけない…!」と慌てて新ネタを作っては残念0笑い(⇄満点大笑い)で盛大に爆ぜるというのを繰り返していた。
ある年は「アメリカの冴えない少年に扮してずっとザコいことを言うコント」、ある年は「最愛の女性にプロポーズをしたものの、想定とは違った理由で断られるコント」を披露したりと、手を替え品を替え挑んだけど結局お客様に無視される始末だった(ピンネタであまりに笑いが起きなかった時僕は「滑った」ではなく「無視された」と解釈している)。

会場を透き通った空気にした名残がインターネットに残っている。年明けに2回戦敗退の匂わせをするのが恒例になっていた。


なあなあで受かっては付け焼き刃で滑り「恥ずかしい、、」と呟いて帰っていく。
本当にR-1に賭けて臨んでいる方々からしたらこういう態度のちゃらんぽらんはさっさと淘汰されてしかるべきだと思う。普段から一人で戦っている方々には本当に頭が上がらない(その反面、「なんんんで1人で戦えるの!?おかしいんですけど〜!」という感覚もある、凄過ぎる)。



今年も、1回戦は例に違わずホームラン打ち男にお世話になったんだけれども、2回戦を前に「等身大でいこう」という踏ん切りがついて、コンビの良さをそのまま活かしたネタをすることにした。受からせていただいたのは本当に色んな時の運が重なりまくったハイパーラッキーと思っているけれども、結果どうこうよりも、ともかく見栄を張らず、無茶せずやりたいことを健康的にやれたのが個人的にすごく良かった。



本当に面白くて、すごくウケているのに、結果が見合わないというようなピン芸人の方々を何度も目にしている。いくらなんでも難し過ぎる大会に感じる。彼らを上回る実力でもぎ取った!と1mmでも思えるわけがない。反対に、正直引け目があると言ってしまうと「シャンとして臨め、失礼だろうが」と叱られるお声も聞こえてくる。
あれこれ考え過ぎても仕方がないので、ともかくもいただいたチャンスだからとどさくさに紛れて思い切りぶつかれたらと思う。
めちゃめちゃ面白い人たちばかりで、もっというと絶対に決勝で見たいような人たちにも混ざれるなんてこんな幸運なことはない。

何がどうあったって「恥ずかしい」では終わりにするまい。直接想いを託してもらった、村民代表南川とムカイワンダーランドに特大ホームランを捧げるぞ。

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