情熱の石油を運ぶ船

32歳の誕生日を迎えた。毎年なんやかんやじめっと不穏な気持ちになることもある日だけれども、なんやかんやウキウキ楽しく穏やかな気持ちで迎えられたように思う。

「歳を取るということだから誕生日は嬉しくない」的な、それはそれで紋切り型の天邪鬼になることもなく過ごせた。大らかになり、卑しい恨み言をほざかず、人として丸みを帯びてきた証左なのかもしれない。
嘘、ともかく今、いろんなことが良い方に転がりつつある今を、ともかく機嫌良く過ごしているだけな気がする。とてもとても大事な戦いを控えているし、それはそれとしてご褒美みたいな出来事が多い。


鈴木ジェロニモ主催の、ジェロニモ短歌賞に出させてもらった。
鈴木ジェロニモとは、おそらくは去年のR-1対策ライブかなんかで一緒になったのが最初で、今年のネタにいっそう惚れ込んで、ナルゲキで一緒になるタイミングでじわりじわりと不器用ににじり寄り、「説明」にのめり込み、すっかり虜になっていた。
話していくうちに短歌を詠む人だということが分かり、ジェロニモに興味を持つのと比例するように短歌も魅力的に感じられた。ジェロニモ短歌賞はいつか出演が叶えば良いなあと思っていたライブだった。

僕はプレバトが好きで(正直今はあんまり見れてないけれども)、毎週毎週夏井先生の厳しくも説得力のある添削にうっとりし、「いつかは僕も…!」という思いで俳句に挑戦してた時期があるんだけれども、日本の名句がちっとも頭に入ってこず、季語の奥行きにうんざりし、自分が作ったものを誰かに見せるのが恥ずかしく、ほんの数ヶ月で断念してしまった。
一度だけ僕らがメインを張った耐久ライブの小さい版(耐久ライブが何かは各位調べて欲しいが、そんなに大事な情報ではない)で、自然の中でたたずむ僕の写真を背景に、自作で手書きの俳句を一句ずつ載せたポストカードを数種類配ったことがある。持ってる人は相当レアだと思う。

そのまま俳句にのめり込めたら良かったけど、教えてくれる先生が近くにいるわけでもないし、情報交換する仲間がいるわけでもない。ライブでちょっとだけ一緒になった赤嶺総理にほんのり話してみたこともあったけど、結局モジモジして終わってしまった。
マネージャーに「俳句が好きと聞きましたが、短歌もやりますか(もしそういう仕事がもしあれば売り込みますか)?」みたいに尋ねられた時に「いや、俳句と短歌は違うんで」みたいな要らんぶっきらぼうを披露したこともあった。そもそも俳句もろくすっぽやってみれなかったのに、なんじゃお前みたいなスタンスに思われていたかもしれない。


なんとなく一度俳句に敗れた感覚があったけど、ジェロニモみたいな人がそばにいてくれたら短歌を嗜むことはできるかもしれない、と思ってあれこれ尋ねてみたら快く応えてくれた。そのうえ程なくして短歌賞にも呼んでくれた。
自分が初めて人前に出した短歌が添削され、血が巡っていく感じがめっちゃ嬉しかった。俳句で出来なかったことだからよりいっそう嬉しかった。13歳みたいにワクワクした。

順位は振るわなかったが(ライブの演出上、便宜的に順位をつけるんですと、大前提上下を作るものではないんですと、あくまで一個人の、かつその時感じたようにつけた順位だし、人それぞれが思う良し悪しがあるべきなんですと、きめ細やかな前置きがあった上で順位をつけてもらった)、ともかくも自分の作ったものに対して、何が良くて、どこをどうすればもっと良くなるかと論じられてる時間にめっちゃうっとりした。みんなの詠んだ短歌も良かったし、代案が挙げられていく様もともかく良かった。

めっちゃ良い誕生日プレゼントをいただいたようだった。
人力舎勢揃いの中に1人だけ混ぜてもらったのがともかく忍びなかったけれども、みんな優しくてニコニコまっすぐ短歌をやってる感じがして良かった。
1年生からテンションモリモリの部活で楽しんできたが、4年になって知り合いのよしみで顔を出してみたサークルにめちゃめちゃときめき、「ああ、、こんなキャンパスライフもあったのか、、、」とじんわりくる感覚だった。また機会があれば、決して邪魔することなく、真摯に、ひたむきに臨んでみせるので、どうかこのおじんを仲間に入れておくれ、みたいに思っている。


ライブが終わった後に、ジェロニモと人間横丁と横浜を散歩して、パスタを食べた。

楽しかった
楽しかった


パンの食べ放題のセットをつけて、みんなでやんちゃに食べ惚けた。
繊細に短歌を解説してくれていたジェロニモは、何度も何度も執拗にガーリックパンをおかわりしていた。短歌に勤しみながら、それでいて身体に厚みがあるのも面白い。



とても良い日だった。
ご褒美をいただいたからには、また相応に、モリモリ頑張ってみせねばならない。
強烈な勝負が近づいてきている。かましたい。32歳を戦っていく。

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