海老名から来たタクシー

ちかごろ海老名が騒がしい。

2019年11月のこと。ぼくは母校である神奈川工科大学の学園祭へ行き、もしアド街が「下荻野」だったら間違いなく1位であろう居酒屋「やきとり大吉 下荻野店」でジャズ研究部の後輩たちと食材がほぼ尽きるまで飲んでいた。

日中は激渋滞する小さな道。夜はバスもタクシーが来ない道。いまでこそそんな印象だが、江戸時代の地図では主要街道であり、すぐそばの「荻野新宿」は交差点やバス停の名前として今に伝わる。大山詣りの参拝客で賑わったことだろう。

最寄りの本厚木駅からはクルマで20~25分。もう帰る電車はない。みんなでみんなのオアシス「東名厚木健康センター」へ行って夜を明かすことに。奇跡的に捕まえることができたタクシー、その車中でのエピソードだ。

後部座席に後輩と2人で乗り込む。運転手は海老名の人だという。最近海老名はタワマンが建ち並んでいるが、ぼくにはちょっと信じられない。「あのマンション、高いところは8000万するけど売れてるらしいですよ」と聞き、酒を飲んで気が大きいぼくは、ひたすら海老名の悪評を後輩に教え込む。

「俺がこっちへ来たころ、海老名駅周辺には田んぼしかなかった。今だってなぜかタワマンが乱立しているけど、5分も歩けば農村だ。日本一小さいららぽーとがあるが、あれは地盤がゆるい田んぼ跡地にあって、改良のためにオープンが遅れたらしい。あんな地盤の悪い土地にタワマンを作る奴も奴だが、住む奴も住む奴だ。全く理解ができん」

真実かどうかは不明だが、聞きかじった話を披露した。いちおう通算で6年間住んだ厚木市が、今や風前の灯火。なにか市から特別な恩恵を受けた記憶は無いが、小田急のロマンスカー停車枠を海老名に奪われた仇討ちである。

運転手が入る。「海老名もいいとこですよ、そんなに言わないでくださいよ。こんど相鉄から新宿に行けるようになったんですから!」

海老名と横浜の間、加えて横浜市内の二俣川から湘南台へと線路が延びている相模鉄道。長らく自路線内に閉ざされていたが、JRとの相互接続が始まろうとしていた。神奈川県央エリアの海老名から横浜市内を経由してグル~っと新宿まで行けるようになる。

だがキミ、ちょっと待ち給へ。

そもそも海老名と新宿は、小田急線で一直線ではないかね。ふつうに乗換検索したら、表示は小田急オンリーですよ。

海老名→新宿 42.5km、51分、IC料金503円

海老名→JR線→新宿 57km、1時間11分、IC料金874円

あんたなら、どっちのりますか?


駅まで「道はお任せで!」と威勢良く乗り込んだことを後悔し始めた。この運転手、箱根山を経由しかねない。


とまあ、飲みながら勢いで書いてみたものの、あまり面白くないか。

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