聴覚障害×当事者研究その①(kento_02)

9月29日に宮城教育大学で【聴覚障害×当事者研究〜「自分」を見つめる、「自分」を知る、「自分」のことばで語る〜】が開催された。僕は、パネラーである妻の専属マネージャーとして帯同してシンポジウムを聞いた(本当の目的は息子の子守)。

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このシンポジウムは、去年、聴覚障害者としては「超」がつくほど有名な方々4人、そして当事者研究の1人の計5人がパネラーとして初めて開催されたが、これがあまりにも好評すぎて、今年も開催されることになった模様。
今年は、上記の聴覚障害者の4人に加え、大学4年生の方、そして当事者研究の第一人者である方の6人がパネラーとして発表した。
この内容がかなり濃かったので、箇条書きで簡潔にまとめたものだが、これをご覧いただいている皆さんに少しでも参考になればと思い、ここに書き留めておく(全然清書してないので、そこんところごめんなさい笑)。

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(以下は、全てシンポジウムの発表内容をまとめたものである。)

■そもそも聴覚障害当事者研究とは


聴覚障害当事者が自分に起こっている「困りごと」を研究して自分のことを知ったり助けたりすることができるような実践の場がない。また聴覚障害当事者の「困りごと」について、支援者や専門家もまだ把握していない部分もある。そこで聴覚障害当事者研究の実践を通して、支援者や当事者の「困りごと」に繋がる実践や研究をするものである。

【発表】


■そうだったのかAPD(APD:聴覚情報処理障害いわゆる聴覚能力の処理障害)


1)APDとは
健聴者並みに聞こえており聴力には問題がないが、聞き間違いが多かったり、言われたことをすぐに忘れてしまう。長い話に注意を向け続けるのが難しい。話を理解するのに時間がかかる。
2)対処法
聞き返しが多いことをあらかじめ伝えておく。補聴器やイヤホンで集中しやすくする。大事なことは紙に書いてもらう。
3)APDであることが判明しても・・・
本に載っていないことが多く、また医者も知らない困りごとがたくさんある。そのために、判明しても症状などがわかりにくい。
今までは、耳が悪いせいと思って諦めていたが、自分なりに工夫することでできるのがわかったので、色々工夫したり練習している。
4)自分からの発信と周りの情報の受診の困難について
①どのように自分の困りごとを発信するのか(相手に伝えるのか)
そもそも、人に話しかけるタイミングがわからない。また大人数の会話に入れないことが多い。
そこで、ワンクッション置いて話を聞き返したり、理解してれくれる人に手伝ってもらうなど、自分も会話に入れる切り口を探してうまく会話に入る。
②どうやって情報を受信するのか。
テレビでバラエティやドラマで言っていることがわからない。なので、YouTubeで動画を繰り返し再生して意味を捉えられるようにするなど、できることから練習。
5)まとめ
APDはまだ未知の部分が多い障害のため、当事者研究は有効。
補足
APDの診断方法についてもまだ研究中。
●思ったこと
情報量が少ないのは致命的な課題やなぁ。ネットの時代なので、これからブログやSNSなどで積極的に発信していき、潜在的なAPDの方の気づきや悩みの解決に繋がると思うなぁ。

■泣き声だけじゃモノ足りない!


1)発表者について
一応重度難聴だが、音の聞き取りはすこぶる良い。性格は超雑。
そのため、息子から発されるサインやSOSに気つかない、気づくのに遅れてしまう。聞こえないことを補うために観察が必要だが、どのような観察があるのか。
2)観察
・息子だけでなく周りの状況も観察してサインをキャッチする。
例)子連れでどこかに出た時に鳴き声がする。その時に周りにいる子連れであやす様子がなかったら、自分の息子と気付ける。
・匂いや振動も観察対象
例)ウ○チを出した時の匂いや振動
・周囲の指摘によって自分の観察の視点を増やしていく(健聴者と一緒にいると気づきやすいかも)
3)まとめ
自分一人では気付けなかったことや息子や周囲の人の指摘によって知っていくことで、より自分自身を客観視できるようになっていく。
●夫として思ったこと(笑)
日常生活の何気ない出来事にもしっかりと意識を向けて、多様な観点から客観的に見て どうするべきかなど深く掘り下げて、また全体像を見て、その出来事を言語化して発信することで多くの人にとって有益なことにつなげているなぁ。

■音を失う身体と置き去りにされる心と


1)発表者について
中途失聴者で現在、重度難聴(片耳は突発性難聴、もう片方は進行性難聴)。音は聞こえるが言葉の判別はできない。
今は、聞こえる世界と聞こえない世界の両方を知る立場から、誰もが一緒に楽しむためのユニバーサルデザインのアドバイスや研究講師2)等をしている。またエッセイストでもある。
2)原因不明の聴力低下による困りごと
・聴力や身体の変化の把握ができなくて、相手に伝えられない(原因不明と進行性難聴)。
・上記の困難に伴う感情の混乱。
・生活やコミュニケーションのバリア。
・自分自身や周囲へのネガティブな感情のコントロールが困難。
3)それが困りごとになる理由
・原因が不明であること。
・聞こえることが前提の環境。
・困りごとを共有できる人がいない。
・どのように捉えたら / 受け止めたらいいのかわからない。
4)上記に対する対応
日記や交換ノートなどを活用して、文字で自分や他者との対話を通して言語化した。
日記で音を失っていく中で不安定になっていく自分自身をつなぎとめる方法
・印象的な書き出し
・状況説明(時系列)
・行動や周囲の人々の行動や心理を素直に語る
・まとめようとせず余韻を残す(「…」など)⇨自己内対話の継続につながる。
5)言語化したことによる変化
・モヤモヤを言葉にして確認する習慣がつく
・わかってもらうことと、繋がりへの希求を持ち続ける
・対話の繰り返しが自ら他者へとつながる基盤となった。
●思ったこと
日記による自己対話は僕自身も大学4年間続けていたが、本当に自分自身の気持ちなどを整理することができたし、就活の時にも大いに活用された。これは障害者にとっても自己と向き合っていく上でとても重要なツールなんだなと改めて思ったなぁ。

■聾学校生徒による当事者研究の可能性


1)自立活動(授業)に当事者研究を実施した理由
従来の授業では、教師が生徒に知識を提供したり、困りごとの捉え方が画一的。そのような中だと、自発的に自分自身を理解する機会が損なわれる。なので、自分で自分自身の問題に取り組んで自発的に生活の質の向上を目指せるように実施した。
2)結果について
プロセスや説明が長く説明が難しいので、割愛。
3)成果
・生徒の語りや他生徒の対話を引き出す中で、困りごとの対話を引き出す中で、困りごとの探求を具体的に行えるようになり、教員としても発見があった。
・生徒の意識変容と自身の表出を目の当たりにして、模索していた自立活動の自立活動の授業に見通しが持てるようになった。
4)課題
他教員が当事者研究の手法を理解し、当事者研究を導入した自立活動の実践を蓄積・共有していくこと。
●思ったこと
当事者研究は将来を考え始めることができる、小学5年ごろから初めてもいいと思うし、これをすることでより早く自分の困りごとに対して対応できるのではないかと思うなぁ。もちろん、授業1コマでやる難しさや当事者研究のノウハウや経験を蓄える知識も必要だが、ある程度の方針・考え方を共有できる資料を用意した上で、いろんな先生方がチャレンジしてもいいかなと思う。または当事者研究が専門の外部の講師を呼ぶ形でもいいのかなぁと思った。


■親子関係の物語を紡ぎ直す当事者研究


1)親との関係に関する困りごと
健聴者と同じことができるように育てられたが、大学に入った時に手話を初めて知り意思疎通が楽になった一方で、なぜ手話を教えてくれなかったのか親に不信感を抱く。
また、子供の時から障害について抱えていた苦しみや悩みを親に話すことができず、それをどのように対処すればいいのか悩んでいた。
2)Jストーリー
先天生まれてよかった性聴覚障害で生まれた。難聴幼児通園施設と出会って、Jが一生を終える時に「生まれてよかった」と思ってもらえるように、健聴者と同じことができるように発音の訓練などを厳しく教育する。
しかし小学校に入って、発音が下手と周りから言われ、両親に涙を流して話す。親はただ受け止めることしかできない。そんな親を見て、Jは親を悲しませたショックで親に悩みを話さないことを決意。
その後、両親からある先生の影響を受けて、Jに「自分を信じて生きるように」と言って、何も指示しなくなった。これによって、Jも両親も社会のスティグマにとらわれることなく、伸び伸びと生きるようになった。
大学に入って当事者研究を始めるようになって、、、親も当事者の一人であることに気づいた。特に親も社会や周りからのスティグマを受けている一人でもある。
大人になった現在、親子で小さい頃から現在に至るまで親子でしみじみといろんな心境など本音を話せるようになったことを嬉しく思うようになった(小さいころに親に悩みなど本音を話すことの「痛み」は和らいでいった)。
●思ったこと
前発表者もそうだが、当事者研究を行うことは自分自身を知ることだけでなく、周りとの関わり方や心境を知ることでもあるんだなぁ。特に親との関係が見えてくるものなんだね。
また、一人一人の物語・生き様そのものが、当事者研究の大切なテーマなんだろうね。

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ヒィヒィ・・・ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。。。ここまでが、聴覚障害者の4人と大学4年生1人の発表です。

これでやっと折り返し地点かと思います。。。
ここからが当事者研究の第一人者である方の発表になるんですが、これがまた「超」がつくほど濃くて、内容が凝縮されているので、ここで一旦休憩とします。。。

また、更新しますー!

え!!え!!サポートしてくださるんですか??いいんですか??!! ありがとうございます!!泣 いただいたサポートで,発信力をもっともっと強化していきます!!