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閃き💡劇場25

俺の名前は岡崎勇。大学生だが内定を貰っている。来年の4月からは社会人になる予定だ。
本当は大手の企業に内定を貰っていたが、バイト先には中小企業に内定を貰っていると嘘をついている。
何故なら、このコンビニには噂好きのおばちゃんがいて、色んな人の悪口から何からペラペラ話す人だ。
本当の事を言ったら何言われるかわかったもんじゃないと秘密にしていた。
そんな俺はお客様の受けは良く、常連さんとも仲良しだ。だからおばちゃんも下手に俺に手を出せなかった。

ある日常連のカップルがコンビニの外で大喧嘩していた。男が「別れてやるよ!」
そう言うと車でさっさといなくなってしまった。
残された女はその場でしゃがみこみ泣きじゃくっていた。
どうにかしなきゃ行けないが昼時の今はとても忙しくそんなことまで手が回らないそうこうしているうちに雷が鳴り始め、雨が物凄い勢いで降り始めた。
(そう言えば午後は雷雨って言ってたっけ)と外を見るとまださっきの女がいる。
(何やってんだ!)ずぶ濡れの女を見て俺は店の奥から処分に困っていた古くてボロいビニール傘を持ち女のところへ向かった。
「御客様、こちら良ければお使いください」
俺がそう言うと女は我に返り
「ごめんなさい、ありがとうございます」と逃げるようにその場を立ち去った。

それから月日は流れ、あと一月でバイトを辞めることになったそんなある日。
身なりの良いキレイな女性が店に入ってきた。
店内にいるお客さんが皆注目している。手には古くてボロそうな傘
(あれ?あの傘…)
と疑問に思っていると
「あの」その女性は俺に声をかけてきた
「は、はい」俺は動揺しながら返事をすると
「遅くなり申し訳ありません。去年の8月に借りた傘を返しに来ました。」
「あぁ…」俺の記憶が甦る。この女性はあの時の女性だ、間違いない。(見違えたな)俺はその女性に見いっていると
「あの時元カレに振られてどうかしてたの、この世の終わりが来たみたいになって我を失っていた。そんな時にあなたが傘を貸してくれた。それで冷静になれた。あれから転職して一生懸命仕事して、あんなやつより素敵な男性と結婚することになったから傘を返しに来たの。本当はもっと早く来たかったけど、ここに来るとアイツを思い出して嫌な気分になるから中々行けなかったごめんなさい。噂であなたが辞めると聞いて今日来たの。間に合って良かった。それじゃ、あなたも幸せにね」
女性はそれだけ言うとさっさと立ち去ってしまった。
「噂?俺そんなに有名人?」
俺がキョトンとしていると
「そうだよ、接客態度の良い看板boyだったんだから」とオーナーがやってきた。
「岡崎くんはそんなつもりないかも知れないけど、君の接客態度はとても素晴らしいと気難しい常連さんも誉めていたよ。あの女性のように助けられた人きっと他にもいるんじゃないかな?」
とオーナーが言うと
「そうだよ、俺寂しいよあんたがいなくなるなんて」
と常連のじいさんが泣き出してしまった。
おいおい、と俺はすっとティッシュを出す。すると
「そんなところがいいのよね」
と噂好きのおばちゃんがそう呟いた。
「え?そうなの?」
俺がさらにキョトンとすると
「情けは人の為ならず。情けをかけたぶんだけ自分にも返ってくる。これからもそのままの岡崎くんのままでいい社会人になってください」
オーナーはそう言うとニッコリ笑った。

あまりピンとこないまま社会人になった俺は数年してその言葉の意味を知る。職場でパワハラを受けた俺は転職しようとしたら、周りの皆が助けてくれたのだ、仕事の斡旋はもちろん、パワハラ上司への対応の仕方、診断書の取り方まで何でもしてくれた。
どうして皆そこまでしてくれるのか聞いたら
『岡崎さんにいっぱい助けて貰えたから』と口を揃えて言った。
情けは人の為ならず。この事を言うのだと思い知った。
俺はこれからもこのままの俺でいようと思った。

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