見出し画像

漫画「わがいほは」書籍化に8万円突っ込んで幸せを手に入れた

2020年、私は人生で3番目に高価な買い物をしました。中古車とノートPCに次ぐその商品は漫画「わがいほは」(作:うつぎ先生)の書籍化クラウドファンディング(CF)・描き下ろしイラスト色紙コース。お値段にして8万円です。CFへの支援なので厳密には買い物ではないかもしれませんが、単体の出費として人生3番目であることには変わりません。

額の大きい買い物においては、タイミングというのがひとつの重要なファクターだと思います。つまり買いたいものが買えるときに売られているかどうか。今回の「わがいほは」CFに関しては私が数万円単位のお金を工面できる経済状況にある中(学生時代だったらまず手を出せていません)、愛読する「わがいほは」という作品がその魅力をきちんと評価されたうえで大団円を迎え、また連載元のGANMA! において書籍化CFの成功例が複数得られ軌道に乗ってきたという背景があります。そうした状況で満を持してスタートした「わがいほは」CF企画に私は即座に飛びつき、世界で5枠の「描き下ろしイラスト色紙コース」にエントリーし、そのリターンとして金額に換算できないほどの幸せを手に入れました。2020年の例の補助金により出費が帳消しになったことも考えると計り知れないプラスです。


「描き下ろしイラスト色紙コース」のリターン内訳は次の通りでした。
・書籍全3巻
・描き下ろしマンガ冊子
・ポストカード
・書籍収納BOX
・カラーイラスト小冊子
・収納BOXへのサイン
・描き下ろしイラスト複製ミニ色紙(佐藤くん&碓氷さん)
・描き下ろしイラスト色紙(リクエスト式)

書籍全3巻は各話あとがきページまで収録。
描き下ろしマンガ冊子は本編最終回のその後が描かれます。内容は伏せて感想のみ述べますと、こういう追加コンテンツには所謂「単行本最終巻の巻末オマケページ」くらいのものを想定しがちですが、これは「真・最終回」。これを読むために少なくとも8千円を託した約1,000人の支援者の期待を超え、心を満たす渾身の1話となっていると感じました。
ポストカード(書籍表紙イラスト使用・3枚)、サイン(金ぴか)入り収納BOX、カラーイラスト小冊子、ミニ色紙も永久保存版。カラーイラスト小冊子のボリュームが想像以上で感動しました。

そしてこのコースの目玉はなんといっても描き下ろしイラスト色紙。リクエスト式だったわけですが、私が挙動不審になりながらやっとこさ入力したリクエストがこちらです。

キャラクター:碓氷さん、佐藤くん(人間)、チベットスナギツネぬいぐるみ、コブダイぬいぐるみ、アンゴラウサギぬいぐるみ
シチュエーション:神社or碓氷家にて(詳細お任せしたいです、すみません)

人物とぬいぐるみはなんとかピックアップしましたが、シチュエーションは事実上の丸投げ。我ながらひどい注文だと思いますが、これは私ごときが無い知恵絞るよりプロにお任せしてしまう方が佳いものができるはずという合理的判断と、うつぎ先生のフルパワーを見たい・邪魔したくないという厄介ファン心の表れでもあります。苦しい言い訳ですね。実家に住んでいたころ晩ご飯に何が食べたいか訊かれて「なんでもいい」と答えたときに母があからさまに困った顔をしていたのを思い出します。うつぎ先生も困ったかもしれません。

それはさておき、このふわふわ注文の結果としてどんな色紙が仕上がったかというと……


画像1

やはりプロにお任せして大正解でした。これはもはや1枚の記念イラストに留まらず、本編・描き下ろしマンガのさらにその後を描いた「物語」となっています。私が悩んだところでこれに匹敵する構図・シチュエーションが浮かぶかというと、答えはノーです。この色紙の素晴らしいところのうち、代表的なものだけを自分なりに挙げると次の通りかと思います。

・ぬいぐるみ3匹をセットで抱きしめる碓氷さん
・まさかのツーショット自撮り
・やや前のめり&真顔の碓氷さん
・影のカラーリング

佐藤くんが入っていたチベットスナギツネ、荒谷さんのアンゴラウサギ、そして碓氷さんを象徴するホーリーアニマルであるコブダイ。これら3匹を入れてほしいというのは例のリクエストの中で私が特にこだわったところでした。しかし私はその登場のさせ方を何もイメージできていませんでした。(強いて言うなら佐藤くんがチベスナを、碓氷さんがコブダイを持って、アンゴラウサギが碓氷さんのどこかにくっついてる感じでしょうか?)うつぎ先生が出してくれた答えは「3匹まとめて碓氷さんが抱いている」構図。こうすることで「3人(1人と2匹)で過ごしたあの日々を碓氷さんが今でも大切に思っている」感じが伝わってきて、私のふわふわリクエストで3匹をチョイスしたことに「物語」が与えられたような雰囲気が出てきます。

そんな碓氷さんが佐藤くんと一緒にやっているのはなんとツー(ファイブ?)ショット撮影。これはわかる人だけわかればよい話ですが、碓氷さんをカメラに収めようとしたときの反応というのは既に描写があり、それと比較すると……。あれからしばらく時間が経っているのでしょうか。CFリターンの書籍類が届いてからこの色紙が完成・発送されるまでには数か月の余白があったわけですが、その空白すら物語に取り込み、意味を与えてみたくなってしまいます。

或いは、このツーショット撮影には碓氷さんが嫌がるでもなく応じるだけの動機づけがあるのでしょうか。これはあくまで私の妄想ですが、たとえば誰かへの近況報告だったり。だとしたら相手は佐藤くんの家族か、ふたりの友人である花里香澄さんか……。花里さんについて言えば、彼女は私がこの色紙に描いてもらうか悩んだ人物でもあり、最終的に泣く泣く色紙画面外に行ってもらった経緯があります。彼女は少なくとも本編完結時点ではふたりと気軽に会える状況にあるので、ふたりが近況報告する相手としては佐藤家の方がそれっぽいです。しかし花里さんが大学入学を機に実家を離れた可能性などは普通にありますね。以上をまとめて、「ふたりが花里さんへの近況報告のためにツーショットを撮っている」とすると、画面外に花里さんの存在を感じられて私がいい気分になるうえ、碓氷さんの若干の前のめり感に説得力が生まれてきます。前のめりだとしても碓氷さんは真顔です。とても彼女らしいです。真顔ですが嫌がってなさそうなのは伝わってきますね。繰り返しになりますが、以上はあくまで私の妄想です。こういう妄想の余地が大いにあることを大変ありがたく思っています。

また、貴重なカラー色紙なので着色にも注目したい……と思うまでもなく、コブダイに差したピンクの影が目に入ります。この色紙における碓氷さんの髪色、いわば碓氷さんカラーと言える気がします。その碓氷さんに目を移すと、服に差した影はコブダイカラーと佐藤カラーと言えるかもしれません。これらについて専門家めいた論評をするつもりはありませんが、私はこういう表現が大好きとだけ言っておきます。


以上のように、今回の主役である描き下ろしイラスト色紙は、うつぎ先生に委細お任せした結果として事実上の特別編ストーリーとして私のもとへ届きました。おかげさまで私はこの色紙を眺めるたび、「わがいほは」のみんなのその後の物語へ思いを馳せて幸せな気分に浸ることができます。私の人生でも屈指の「買ってよかったもの」となりました。


この記事が参加している募集

買ってよかったもの

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?