連載_ギターの練習⑯レッスン、窓を開けよう。4/23
どこにも行けない人がいる
誰にも会えない僕だよ
ピーンポーン
隣街の駅前にある、防音のマンション。部屋番号を入力し、チャイムを鳴らす。
この瞬間は今でも少し緊張する。でもこの緊張はイイモノで、むしろ無くなるのは少しこわい。
「はい」と返事がくる。「あ、大坪です」「今、開けますね〜」自動ドアのセンサーの明かりが、なんか開きそうな色に変わる。
ドアが開く。
初めてギター教室に行ったのは半年前。
死ぬほど緊張していた。僕は知らないお店とかに入るのが苦手なタイプだ、と、自認している。
それなのに、教室のドアを叩いてからというもの、色んなドアを開けてきた。決して独りの力で開けてきたわけではないが。
音楽居酒屋、ミュージックパブ、スタジオ。謎に音楽関係ない地元の飲み屋にも通い始め、少しずつ横の繋がりが広がっていく。
「次はどんなところが良いですかね」先生に聞かれて即答できない。考えたこともなかった。「とにかく、世界を広げたいです」…どんな?
色々を観ていくしかない。現状に満足すると、世界は広がるのをやめる。僕は、知らないお店とかに入るのが苦手なタイプだ。
エレベーターが3階に着く。降りてすぐの教室の、チャイムを押す。やはり緊張する。
ドアが開く。
「こんちゃ〜す」
「お願いしま〜す」
レッスンが始まる。
窓を開けよう
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