簡単に死ねると思ったら大間違いだった②〜金銭面〜

みなさんこんにちは。
全記事にもたくさんのリアクション、ありがとうございました。
もちろん聡明なみなさんのことですから、わたしの病状はいわゆる「定型的」なものではありせんし、治療の効果や病状はほんとうに個々によるものが大きいことは重々承知していただけると思います。
がんでもあっという間に苦しむ間もなく亡くなる方も多々いらっしゃるでしょう。
ただ「そうではない一例としてのにわか」として、これまでの、そしてこれからお話することを理解していただければと思います。

1.「治療が奏功しなければ平均の予後はあと半年です」
って言われたらどうしますか?
わたしは頭の中が真っ白になって、次に夫と話していた5年後の幸せな生活を思い浮かべては崩れ去っていく、ということを繰り返しました。
それまで思い描いていた生き方が180度景色を変えるのです。
それでもがんは待ってくれない、こうしてべそべそしている間にもどんどん進行してしまう。
余命半年、と言われても死ぬ直前まで元気なわけではありません。
少しずつ、もしくは急速に身体の自由を奪われていきます。
わたしの場合は「2,3ヶ月後には身体が大きく変化するでしょう(イレウスや水腎症など)」と言われました。
だとしたら身体が動く時間は実質3,4ヶ月。
ますます時間がありません。
そこからの怒涛の勢いの思い出作りはフォロワーさんのご存知のとおりです。
今回は敢えてそこには触れずに、無治療決断後(2022年7月4 日〜現在)についていろいろとお話していきます。

2.ひと月分
88,297円
内訳は、34,220円+42,360円+8,460円+3,257円
いやなんの内訳だよ、とお叱りを受けそうですが、こちらは8月分のわたしにかかった医療費です。
くどいようですが、ひと月分です。
・34,220円(緩和ケアDr.の訪問診療費用。週に1回)
・42,360円(緩和ケアDr.から処方された薬代)
・8,460円(週に2回腹水穿刺に通っています。940円×回数)
・3,257円 ストーマ装具(補助済み、ひと月分)

医療費です、生活費じゃないですよ。
医療費だけでこれだけお金飛んでいきます。
無治療なのに。
ただこの国には「高額療養費制度」という、大変ありがたい制度があります。(今かなり物議を醸し出してますがそれについてはまたおいおい…)
その人の収入などに応じて保険適用の医療費に関しては一定の額以上払わなくてもいいですよ、という制度です。
わたしの下手くそな説明よりも厚労省や他のサイトを見てもらえるのが早いかと…。
その中でも「限度額認定証」という制度もあって、例えばわたしの場合。
昨年の6月ロボット支援下の腹腔鏡手術を受け、3週間以上入院したのですが、これまともにお金払ってたら3割負担でもウン百万回お金かかるんです。
もちろん高額療養費制度を使えば後からお金は所得に応じて返ってきますが、普通窓口で払えませんよね、ウン百万。
そこでこの認定証をあらかじめ申込み、病院の窓口に提出しておけば、窓口での支払いを制度適用済みの金額で支払うことができるんです。(ちなみにこのときのわたしの支払額は16万円くらいでした。日本よ、ありがとう)
そんなとっても便利な制度を使えば一度85,040円支払ってもあとから限度額を差し引いた金額が返ってきます、ありがてえ。
ちなみにわたしの限度額は44,000円。
85,040円−44,000円=41,040円が、後日口座に返還されます、ありがてえ。
けれども生きていくには医療費だけでは当然無理ですよね…、むしろそれ以外にお金がかかります。
わたしは結婚するとき、両親と約束したことがあります。
「にわかはお父さんとお母さんにはいくらでも(あらゆる面において)甘えていい。でも旦那くんへは甘えちゃだめだ」
ということです。
つまり、夫のことは精神安定剤の役割にとどめて、金銭や肉体的な負担はかけるな、ということが父母からの結婚の条件でした。
と、いうわけで、もしもわたしが一人暮らしをしている、という仮定のもと、いろいろと支出を計算してみようと思います。
ちなみに具体的な金額はわかりやすいように世の中の平均で算出しますので、ご了承ください。

手取り年収 250万円(賞与込み)
※会社の団体生命保険に加入してますので、それは給料天引きです
※そしてこちらはわたしの年収ではないです笑
わたしと同世代の女性の平均的な年収をピックしました

固定費(車持ち)
家賃 6万円(都会はもっと高いよね💦)
通信費 1万円(固定回線+格安スマホ)
がん保険 0.2万円
自動車保険 0.7万円(車両保険込み)
水道光熱費 3万円(年間で最も高い月)
ガソリン代(交通費) 1.5万円

変動費
食費 4万円
雑費 2万円
お小遣い 4万円(被服費やコスメなど含)
予備費 0.5万円

固定費+変動費=22.9万円
20.9万円×12ヶ月=270.8万円
250万円−250.8万円=−0.8万円

「なーんだ、案外楽勝じゃん、がんになってもなんとかなるじゃん」って思った人、はさすがにいないかな。
そうです、ただでさえカツカツなのに、がんになってもこれまで通り働けない人なんでザラです。
ましてやステージ4や抗がん剤治療を受ける人ならなおさら。
現にわたしは現在病気休暇を使っており、収入も働いている時と大きく変わりませんが、それもずっとではありません。
いずるは無給になり、傷病手当をもらうようになるはずです。
会社ごとに福利厚生は変わってきますし、出勤しないなら給料払わないよ、なんてお話も聞きますのでこのあたりは事前に絶対確認しておくべきです。
ちなみにわたしは超ホワイト職場なのと、現在はまだ病気休暇を使っていますので、障がい厚生年金が受け取れます。
加えてがん保険と医療保険、ダブルで保障がありますので、お金に困ることはありません。
入っててよかった、ホワイト職場と保険たち。
加えて障がい厚生年金。(ですがこれは傷病手当と併用できないので…今のうちにしっかり貯めておこうと思います)
そう、今はまだいいのです、今は。
大変なのはこれからです。

3.介護保険が使えないAYA世代
「医療保険」は保険料をしっかり納めていれば使えますが、「介護保険」となると話は違います。
今はまだ(かろうじてですが)身の回りのことは自分でできますし、お風呂も食事も介助なしで過ごせています。
もしもこれらを介護サービスで賄おうとしたとき、私たちAYA世代は介護保険を使えないので、全額自己負担となります。
自治体によっては補助してくれるところもありますので、お住まいの地域について調べてみてもよいかもしれません。
ちなみにわたしの地域ではAYA世代への介護への補助はありませんでしたので、今後の介護費用は全額自己負担です。(そうなってもいいようにお金は貯めてますが…)
介護ベッド、さまざまな在宅医療器具、介護サービス、介護食、などなどあげればキリがありません。
そして期限もありません。
これらを必要としなくなったとき、それはすなわち患者が亡くなったときです。
収入がない、でも支出は増えていく一方、それでもまだ「死ぬときはさっさと死ぬから貯金なんてしなくて大丈夫」と言えますか?

なんて、脅してばかりですが、こんなときのためなのソーシャルワーカーさんがいるわけです。
いろんな支援制度があるわけです。
今はまだ必要なくても、もしくは今後必要としなくても、調べておくだけでも心の持ちもうは変わってくると思います。
わたしは今回お金の心配だけはせずに闘病できていることはほんとうにありがたいことだと思っています。
家族からの物理的援助にももちろん大いに助けられていますが、きっちりとした医療保険、がん保険に入っていたこと、昔の自分を大いに褒めたいです。

こちらの記事もAYA世代の介護費用について書かれていてほかにも興味深いものがありましたので、ご紹介しますね。

4.まずは自分のこととして
いろいろと書き連ねてきましたがあくまで「にわか個人」の話です。
住んでいる地域、働いている会社、制度、障がいの有無、その他諸々で支援制度などは大きく変わります。
もしも記事内容がご自分の思っているものと違ってもあまり責めないでいただけると助かります。
でも明らかに「それは違うよ」ということがあればこっそり教えてくださると嬉しいです。
わたしもまだまだ勉強途中なので。
でもほんとうに、これは全員に共通することだと思うのですが、闘病と合わせて制度調べたりお金の心配したりするのはとてもきついと思います。
幸いわたしの長姉は現役の社会福祉士なので、制度などについては全て頼り切っています。
わたしは闘病にだけ集中すればいいわけです。
職場や家族のあらゆる面でのサポートと保険によって今のわたしの生活は成り立っています。
逆にこれらを自分一人でやれ、と言われるとゾッとします、闘病どころじゃないと思います……。
「死ぬ」と一言で言っても、お金も時間も手間もいろんなものがかかるんです。
今回はそこの部分を少し頭の片隅にでも置いてくれてたらいいな、と思います。
そして願わくば、あなだかそんな制度や保険を使わずに健康に過ごせますように。