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後ろ向きパーキング

(最近何も書けなくなってしまったのでなんでもとりあえず思いついたことを書き並べてみた回です)

前向き駐車っていう意味がいまだにわからない。運転してるこっちから見たら前向きに駐車するってことは頭から突っ込んで停めるってことじゃない? でも先に停めてる他の車を見るとバックで停めてみんな揃ってヘッドライトを出入口に向けてる。前向き駐車って言葉の適切さについて結局は納得してないけど他の車に合わせようかっていう道理みたいなものを一旦自分の頭の中で組み立てて停める。誰から見たどこが何の前なのよ、ひとつもわからん。

逆に、後ろ向き駐車お願いします。っていう注意書きの駐車場を、この間初めて見た。お寿司屋さんだったんだけど、お店の建物の壁に沿って駐車スペースが並んでて、後ろ向き駐車の看板が出てた。で、みんな頭から突っ込んで停めてる。つまり全部の車がお寿司屋さんのほうを向いてた状態。真似して同じ向きで停めた。

これが何なのかっていうのは後から聞いたんだけど、排気ガスはわりと関係あるみたい。ネットで見たのは車が全部はけたあとの駐車場の画像で、外周の糸杉か何かの植え込みが決まった所だけ枯れてへこんでる。っていうもの。前向き駐車?で合ってる?つまりバックで停めて車のおしりを植え込みに向けている状態だと、排気ガスが直撃して木が枯れちゃう、と。お寿司屋さんの場合は換気口の問題かな。前向き駐車?だとこれまた排気ガスがお店の中に流れ込みやすくなるんだろう、たぶんだけど。

まあでも田舎だからそういう制限を言ってくる駐車場はそんなに多くない。田舎でもっと気を付けないとならんのは老人の運転者、老人の歩行者、老人の自転車などだ。スーパーは駐車場の治安で選んでる。これはすなわち老人率の低さと直結してる。老人率高めの老舗スーパーに特売日なんぞに飛び込むと老人の運転する車によって恐ろしい目に遭わされる。一時停止無視、ウインカー点灯せず突然曲がる、突然停まる、隣スペースで乗降中でもお構いなしにつっ込んでくる、走行スペースで停車して窓開けて知り合いと話す、等々。

老夫婦の運転する軽ワゴン車が、スーパー駐車場の一角に置かれたカラーコーンをカーブで引っかけて車体の下に巻き込みそのまま走っていくのを見たことがある。おそらくは、走行スペースを守ってね、通路ではない所まで食い込んでカーブするのやめてね、というサインとして置かれていたカラーコーンだ。それを軽ワゴンは下敷きにしたままわたしの傍らを走り抜けた。大変な音がしていた。

振り返ってわたしは叫んだ、しかし、口をついて出たのは「轢いてます! ……何かを!」という著しく具体性を欠いた指摘だった。カラーコーン、三角コーン、轢かれたそいつの名前をあの時のわたしはまだ知らなかったのだ。微妙にアニメのタイトルのようになってしまったがこのまま続ける。

助手席の窓から老婆がわたしのほうをちらりと伺うのがわかった。しかし車は停まらなかった。むしろスピードを上げて駐車場の外へと向かっていくのだった。プラスチックの引きずられ砕かれる音がいっそう激しく響いてきたが、わたしは見送るほかなかった。

何かを! などという言い方をしてしまったせいで老夫婦は焦ってとりあえず全力で逃げ去る以外のことが出来なくなったのかもしれない。なんだ、何かを! って。他の、駐車場を歩いていた人たちもぎょっとしてこちらを見ていたような気もする。わたしだって見るわ、通り過ぎた車を振り返って叫んでる女がいたら。何かを! って。

だいたいいつもこう、安易に反省したり後悔したりしてしまう。カラーコーンが引きつぶされたことについてはわたしに一片の責任もないはずなのに、(あのカラーコーン、あのままどこまで行ったかなあ)などとたまに思い出してしまうのだった。こうして頭の中に本当に愚にもつかない出来事や考えばかりが溜まってゆく。

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