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星を紡ぐ子どもたちと旅する大人──人間関係の雨林・後編

 翌日、照らし合わせた時間にログインすると光っていた“特別子”へワープする。すでに何か喋っていた──ホームへ訪れているイベント精霊さんの前「は?」「無理w」随分と砕けた喋り方の“年の近い”フレンドさん、もしくはリア友も考えられる。
 というか“仲良い”フレンドいるじゃない……と思いつつ「こんにちは」とご挨拶。返事こそしてくれたものの座ったままの“反応のなさ”に「またね」と“邪魔者”は退散だ。
 翌々日も光っていたが毎日行くと“かまってちゃん”は私の方になってしまうので辞退し、数日置きに会いに行くが普通にフレンドさんといる。あまり気に掛けなくても良さそうだ。そう思い始めたある日、事件は起きる……!

 ホームにひとりでいた特別子とデイリークエストへ行くこととなり手を引く──場所は“お馴染み”雨林である。弾んだ会話があったわけではないが、途中で少し違和感を持つ。
 放置してる……? そりゃ多少は構わない。飲み物を取りに行く、家族に呼ばれて会話が始まるなど誰でもリアルを優先するべきである。様子を伺いつつ止まない雨に抱いた不安は現実となる──忽然と特別子は消えたのだ。

 サーバーのWi-Fiマークはまだ実装されてなく、別れたのか落ちたのか一瞬では判断できなかった。何度か大鳴きしながら“最悪”を考える──特別子が目を離しているなら雨の中“放置された”星の子の羽が散る……! 急ぎ戻るべくホームボタンを押した瞬間だ、名前が現れ慌ててキャンセルと鳴き確認する。

 離れたところから“嬉しそうに”私を呼ぶ女神──。

 混沌が襲い掛かる。私にワープしてくれた? でも戻らなきゃ……説明しなきゃ……迷っている間に爆速で飛んできては迷うことなくサッと手を差し出す女神の、その手を、どうして断れようか。
 しかし女神は他のフレンドさんと一緒だった。そこで鈍く気付く。サーバー別れからのサーバー統合だ……! 「待って女神、私フレンドさんが──」その会話を、戻ってきた特別子は静かに読んでいたようだ。焦り女神の手を振り払ってまで迎えに向かうも、今度ははっきりと目の前で淡く消え去る。しっかりと私を睨みつけて。

 私の想いは困惑する──自分をぼっちだという特別子は本当に寂しい想いをしているかもしれない……“いつかの自分”かもしれない……、でも……既に壁を作られている……というか“先に放置”したのはそっちじゃないのか……!? ワープだって一度もして来たことはないよね!? っと、つい吐き出してしまいそうになる。

 もちろん大人として振る舞うが、学生は~社会人は~などと云うつもりはない……! 現に、雨の中で立ち尽くす私へ「どうしたの」と心配し回復し続けてくれる女神は学生さんだ。
 女神へ断りホームへ戻る。ホームの隅でちゃんと(?)  砂を蹴るエモートでいじける特別子──エモートする“余裕”があるなら大丈夫かとホッとして「ごめんね」と伝える。
「いいですよ、フレンドさんと行ってきて」
「ううん、一緒に戻ってクエストしよ」
「私もう勉強の時間なんで落ちます」
「そっか……学生さんは大変だね」
「……さようなら……」

──特別子は二度と私の手を繋いではくれなかった。

 二日後、再び謝るためワープするも「私もう落ちるので」と言われては話も出来ず……その後“たまたま”ホームで居合わせても毎度、逃げるように
 私だってひとりの人間だ……気疲れするし面倒になる。それにしてもサーバーは意地悪だ。会いたくない、と思っているのに高確率でホームにいらっしゃるのだから。

 私は徐々にSkyへのログインが苦なる──。

 これは余談だが……“その日”の雨林デイリークエストと大キャン回収は反省の気持ちを込めてひとりで済ませた。それでもログアウトする前に、女神に一言さっきは振り回してごめんと伝えたかった。
 到着したのはツリーハウス──フレンドさんと遊んでいたら申し訳ないなと、そして疲れ果てていた私は一度だけぷえっと鳴く。すぐに気付いてくれた女神が飛んできてくれるより前に「さっきはごめんね」とチャットを打つ。女神にまで愛想尽かされないか怯えていたかもしれない。
 女神は大丈夫だよと、そして笑いながらこんなことを言う「ハグするクエスト、精霊さんじゃ判定にならないんだよ! だからNismoちゃんハグしてーっ!」
 そんなわけない──さっきまでたくさんのフレンドさんといたじゃないか。私を慰めるために嘘をつく、彼女はやはり女神の名に相応しいフレンドだ。

Sky 星を紡ぐ子どもたち


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