ミュウツーの逆襲

1998年に公開された不朽の名作。

今観ても素晴らしいっすね。


予告編はこちら。



ポケモンのアニメシリーズって、多少のことはあれど、基本的には友情とアツさと爽やかさで成り立っている印象があった。

なので、劇場版の1作目でこんなに暗くて重い作品を世に送り出した制作陣はすごいな、と思う。

いま観ても凄いのもそうだけど、5歳かそこらのときの自分が観たときにも残るものがある作品だった、というのもすごい。


今回の悪役であるミュウツーは、生きる理由を強く追い求める存在だった。

「なぜ私は生きているのか」「なぜ私は作られたのか」「なぜポケモンは人間に従っているのか」とか、とにかく生きることへの理由を探し、自分なりの答えを導きだそうとしていた。

結果的には「何にも服従しない」ことを追い求めるがあまり、コピーを作って自分の思想やルールが通る世界を作ろうとした。もうこうなると立派な悪役だけど、それまでの過程を序盤で深く掘っていたのが印象的だった。主人公はサトシなんだけど、もうこれは完全に"ミュウツーの"物語になってる。

悪役として魅力的なんだよなぁ、ミュウツー。

強く暴力的なうえに固い思想があって、歪んだヒロイズムで主人公に立ちはだかる。自分の元(オリジナル)であるミュウには最初あしらわれ、憤ってそこからは余裕がなくなって、強者ではなく対等な相手を見定め、自分の存在意義のために戦う。素敵です。


いやしかし、こう観直すと、自分が好きなものの考え方やテーマの根幹になったのは、この作品かもしれないとも思った。生きる意味について考えたり、存在意義を追い求めたり、コピーとオリジナルの境界線を探してみたり(細かいところの原理や因果関係がわからなくなっているけど、そのへんを気にしないことについても影響しているかも)。

映画をあまり観ない学生時代を過ごしてきたけど、近年になって映画を観始めたのも、実はこの作品を小さいころに観ていたおかげかもしれない。


あとは、27歳になってから観たときの凄い点がいくつか。

まず、随所のデザインが凄い。

ミュウツーのいる塔の内部はとても細胞的で、今にもうごめきだしそうなデザインになっている。よくみるととっても不気味。それがミュウの細胞からできたミュウツーの胎内みたいな感じがして、とてもよい。

デザイン面では、コピーした御三家(フシギバナ、リザードン、カメックス)もとてもよかった。凶暴性が少し増したデザインになっていて、恐竜みたいな、原始的な感じもする。より本能的で凶暴性を増した感じがした。

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次に、ピカチュウが凄かった。

この作品の名シーンとして、コピーとオリジナルの戦闘シーンがあるのだけど、コピーのピカチュウがサトシのピカチュウをビンタするシーンの声がとてもよい。表情こそあれど、鳴き声でしか表現できない場面で、ビンタしているピカチュウの心情が伝わってきた。「なぜ戦っているんだ?」と考えながらも、本能的に目の前のオリジナルを否定するために勝たないといけないような、葛藤を感じさせる声だった(サトシのピカチュウだけ、コピー相手に戦わないんですね、これがまたよい)。

そのあとにサトシが石になってしまった時、何度も電撃をするピカチュウの鳴き声もたまらん良い。助からないとわかっていて心臓マッサージをするような、可能性の低さをわかっていながら、藁にもすがる思いで何度も電撃を打つピカチュウにはもう涙ですよ。この心情が、鳴き声で伝わるのがすごい。声優(cv:大谷育江)の演技力ですね。


まだ観てないけど評判の良いポケモン作品はまだまだあるので、いつか観たいなあ。水の都とかすっごく気になってるんだけど。





アニメ作品について書くとき、「なんかとりあえず声優を推しておけ!」みたいな印象になっちゃってるかもしれないですけど、声に気を配ってみるとアニメ作品って本当に面白く見れると思う。

あとはカメラワークとかカートゥーンっぽいアニメ表現とか、実写にできない芸当をしているところもアニメ作品の光るポイントだと思ってます。


あとなんか…普通に映画について語ってしまうな。

もっと自分の怨念を乗せたほうが面白いのかもしれないけど(ボーイズオンザランの時みたいに)、こればっかりは観る作品次第なのでなんともいえないっすね。

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