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【表現評論】メモリーズオフ 想い出にかわる君 コアレビューその5 沙子ルート(終)【全作再プレイシリーズ】

⚫︎前回の記事

⚫︎キャラ数多いしボリューム凄い

と思ってたけど、那由多沙子は共通部分が多い。実はそれほどボリュームが凄いわけではないのでは。いや、あのしつこい程のボケテキストでボリュームはカサ増しされているのか。午前くんでも午後くんでもなく、の繰り返しで10分くらいは消費されてるはず。

⚫︎あなたは那由多のことが好きなのか

那由多の個展に誘った時のセリフ。これ聞いてくるの結構不自然ですよね。完全に主人公が昔の男の子だと気づいて、何かしら思うところがないと、この言葉は出てこなくないか。あなたは那由多のことが好きなのか、気になってるってことじゃないですか。

沙子が願いというワードに反応してるのは、想君のテーマに近い気がします。単純に誘っても、なんで私がいかなあかんの、と言われて終わりなんですが、これは個人的な願いです、と言ったら興味を示してます。やっぱり主観なんですよね。この作品のテーマ。トビーもそんな雰囲気があります。

⚫︎那由多と海へ

来るつもりはなかったけど同じ流れに。このルート心が痛いですね。ほたるはまあ別に振ってもさぁ、ピアノの天才だしさぁ。3日後には別の男が告白しに来るしさぁ。親にも姉にも恵まれてるしさぁ。いずれ全てを手に入れる女だしさぁ。って感じなんですが、那由多を振ったらヤバないか。あまりにも可哀想では。この二人のルートは沙子→那由多の順番にやるべきである、という教訓が得られました。いや、メモリーズオフ的には那由多→沙子の方が正しいかもしれない。まあ別にこの時点で付き合ってないんだけど。まだ逃げられる。あれ? 俺たち付き合ってんの? 告白とかしたっけ? 別に付き合うとか言ってなくね? という感じで。クズ男ルート。

那由多の水着姿はすごいらしい。どうすごいのか。期待通りではなさそう。変な謎水着着てきそうではある。ティファを見習ってくださいよ。

……ショーゴの心の中に……こっそり誰かが住んでる……なんてこと……ないよね?

想い出にかわる君

那由多ルートで聞いたセリフが重くのしかかる。嘘つきルートです。将来の夢はなんだったかと問われ、沙子との過去を思い出す。将来の夢は沙子と結婚することですという話を、那由多とのデート中に思い出してるという、伊波さんでもやらなそうな荒技を繰り広げている。

⚫︎不安な時は口が回る人

であることを那由多ルートで知ってるので、このルートで必死に喋ってるのを見ると心が痛みますね。沙子ルートでは沙子に過去を語っている時、那由多とバッティングしないので、那由多が自宅までやってきます。自宅に来る途中だったから那由多ルートではバッティングしたのかと今更気づく。というかね、全体的にこのルートの方が那由多の好感度が上がるテキストなんですよね。鬼か。

⚫︎静流と小夜美

頻繁に出てきて面白くないことを一生繰り返す二人。これアンチ製造機だろ。キャラも違うし。静流はまだしも小夜美は完全に別人。

⚫︎行ったらやだ

このシーンの後で沙子を追いかけようとした時のシンプルなセリフ。なんだろう。こういうところは想君の魅力ですね。いらんところも多いけど、たまにキラーパス出してくる。

⚫︎沙子とちはや

ともに父親が浮気して作った妹を持つ二人ですが、妹への対応は天地の差がある。おまけにちはやはそこまで父親を憎んでる感じはなかったなぁ。再婚までしてる違いはありますが、沙子はなぜそこまで人格が変貌したのか。単にパーソナリティの違いなのか、再婚というのが重要だったのか。

⚫︎因果関係とは何か

父親が階段転落して死亡するシーンは那由多同様あります。階段でよろめいた父親が沙子に手を伸ばした時、沙子は拒絶。咄嗟の反応とはいえ、その後父親は転落して死亡しました。

那由多はそのシーンを見ていないので、沙子が憎しみのあまり殺したんではないかと言います。主人公は現場を見てたわけですが、那由多の言葉を聞くと、咄嗟に拒否したことがそれっぽく見えてくるという観念に囚われます。

因果関係ってなんでしょうね。流石に思いっきり刺したとかなら、流石に因果関係は明確と言ってもいいでしょうが、差し伸ばした手を咄嗟に振り払うというのは、事故と呼ぶのか、殺したと呼ぶのか。一つだけ言えるのは、こんなもんどっちが正解かなんてのはないってことです。

主人公はそのことを沙子に確かめにいきます。あれって事故ですよねと。その時のセリフがこれ。

人の真意を言葉ですべて語れるなんて幻想だ。言葉なんてただの道具

想い出にかわる君

言語の真実を言い表す言葉ですね。言語上はいくらでも嘘をつけますし、言語が自分の感情をそのまま表せることもないということです。言語化は重要ですが、言語に限界があるという自覚なしに、言語化を無限に突き詰めることは、非常に危険なことです。

⚫︎マグローの悲しき過去

殺したいほど憎い人がいるか、という質問に、いますと答えるマグロー。でも今は、誰かを悪いと決めつけなくても、生きていけるとも言っています。人は変われると。これってトビーのことだったよな。確か。違ったら後々訂正します。

⚫︎やっぱり覚えてる人

トビーが沙子も相合傘の前でブツブツ何か言ってると教えてくれます。やっぱり覚えてるんじゃん。嘘つき! 嘘つきなのはこっちもですが。

⚫︎那由多ルートでは開示されない事実

那由多は主人公と初めて出会った瞬間から好きだったようです。やっぱり一目惚れじゃないですか。那由多ルートから考えてもそれしかあり得ないんだけど。人間顔やな。まあその事実を聞いた直後別れるんだけど。いや、そもそも付き合ってないから何といえばいいんだ。気を持たせるようなことをしてすまんと言う現象に名前はあるのか。

⚫︎沙子ちゃん

しかしさぁ。そんな昔ちょっと遊んだ女を思い出したからって、今も好きですってなるかぁ? ビアンカが幼馴染扱いみたいな不自然さがありますわ。ちょっとその辺の動機づけは弱いですね。この二人のルートは沙子はおまけすぎる。那由多がメインという感じです。

最後に君は無罪です! という結論に至って、抱き合って終わり。

⚫︎沙子ルートまとめ

流石におまけルートすぎませんか。ほとんど那由多と共通してるし。さよりんルート並みの扱いな気がしてきた。しかし、中身を真面目に考えると、真実とは何かを深掘りせざるを得ないルートです。この場合の真実とは因果関係と言い換えてもいいですが、因果関係ってほとんどわからないんですよね。実際。殴られたから怪我したとかいう、ほぼ確の状況なら因果関係と呼べるかもしれませんが(それすらも殴られたという事実が他の要因から派生している可能性もある)、手をさしのべなかったと事実と転落した事実の因果関係なんて、全く不明です。自分の意図を言語化しようとしても、沙子の言うとおり、限界があります。思考とは言語化なわけなので、いくら自分に問い続けても答えは出ません。答えが出ないのが君の答えなんだよと主人公は言っています。どこまで考えても言語に限界に辿り着いて終わりなわけです。

と、いうことで、結構真面目に考えると、かなり哲学的なテーマにつっこんでいくルートでもあります。あっさり終わってるんで、ギャルゲーとしてはおまけ感がすごいですが、考えを深めようとすると、面白いルートではあります。このへんはやはり想君の味ですね。ただな。変な味も多いんだよな。あの人とあの人とか。



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